冷却塔で蒸発した水は、下水道に流れていません。その分の下水道使用料は、申告して認定を受ければ払わずに済みます。
認定されるのは申告した日から先の分です。まず管轄の下水道局に相談し、私設メーターを付けてから申告する、という順番になります。
冷却塔(クーリングタワー)を持つ建物の総務・設備管理の方に向けて、下水道使用料の減量認定のしくみと、どの順番で動けばよいかを整理しました。
下水道使用料は、水道メーターの数字で決まっている
建物が払う下水道使用料は、下水道へ実際に流した水の量を測って決めているわけではありません。多くの自治体は、水道メーターが示した使用水量をそのまま汚水量とみなして計算します。1棟ごとに排水の量を測るのは現実的ではないからです。
この決め方は、使った水がほぼそのまま下水道へ流れる建物では合っています。手洗い、給湯室、トイレ。どれも使った量とほぼ同じ量が排水されます。
合わなくなるのは、使った水が下水道を通らずに建物から出ていく設備があるときです。冷却塔がまさにそれにあたります。
冷却塔の水は、蒸発して空へ出ていく
冷却塔は、循環水の一部を蒸発させて熱を捨てる設備です。蒸発した水は水蒸気として大気へ出ていき、下水道には入りません。それでも補給水は水道メーターを通るので、下水道使用料の計算には乗ってきます。
蒸発した分は、下水道を使っていないのに下水道使用料を払っている水です。夏に連続運転する建物では、この量が年間で数百立方メートルから数千立方メートルの規模になります。請求書の下水道の行に、毎月そのまま乗り続けている金額です。
減量の対象になる水量
対象になるのは、補給水量から下水道への排出水量を引いた分です。冷却塔で言えば、蒸発と飛散で失われた水がここに入ります。
逆に言えば、ブロー水として下水道へ捨てている分は対象になりません。ブロー水が多い冷却塔ほど、減らせる下水道使用料は小さくなります。
認定を受けるために用意するもの
必要なものは、水量を測る道具と、その水量を説明する書類です。一般には次の4つがそろっていることを求められます。
認定を受けたあとも、報告が続きます
認定は一度取れば終わりではありません。多くの自治体は、メーターの数字を決められた周期で報告させ、その数字で減量水量を確定します。
報告が途切れると、減量が止まって通常の計算に戻ることがあります。検針の時期に合わせて、だれがメーターを読んで出すのかを先に決めておくと続きます。
| 用意するもの | 何のためのものか | いつまでに |
|---|---|---|
| 私設メーター(補給水) | 冷却塔に入った水の量を測る | 申告の前に設置 |
| 私設メーター(排出水) | 下水道へ出した水の量を測る | 申告の前に設置 |
| 汚水排出量減量申告書 | 減量の対象水量を届け出る | 認定を受けたい期間の前に提出 |
| 配管系統図 | 補給と排出の経路とメーターの位置を示す | 申告書と一緒に提出 |
出典:メーカー資料(2026-09-26 確認)。書類の名称と提出先は自治体ごとに変わるため、管轄の下水道局でご確認ください。
つまずきやすい3つの点
制度そのものは単純ですが、順番と条件でつまずく建物が多いところです。
過去の分はさかのぼれない
認定されるのは、申告した日から先の分です。何年も前から蒸発していた水の分を、あとから戻してもらうことはできません。気づいた日が、いちばん早い開始日になります。
この一点だけで、動き出しを1年遅らせた建物は1年分の減免を失います。稟議の順番を組むときは、申告を後ろに回さないことを先に決めてください。
メーターの位置は、付ける前に相談する
メーターをどこに付けるかは、認定する側が見たい測り方と合っていなければなりません。付けたあとで位置が認められず配管をやり直すと、工事費が二重にかかります。
位置の相談は、工事の発注より前に済ませます。配管系統図の下書きを持って行くと、話が1回で済みます。
減量水量の割合に要件を置く自治体がある
減量の対象水量が、建物全体の使用水量に対して一定の割合以上であることを要件にしている自治体があります。割合に届かないと、申告しても認定されません。
自分の建物が要件に届くかどうかは、補給水量と排出水量の見当を先に付けてから窓口に当たると早く分かります。冷却塔の冷却能力と年間の運転時間があれば、見当は付けられます。
ブロー水を減らすと、減免される額が最大になる
減量の対象は「補給水量 − 排出水量」です。ブロー水は排出水ですから、ブローを減らせば引く数字が小さくなり、対象水量は大きくなります。
スケールの固着を抑えて高濃縮の運転ができるようになると、ブローを原則ゼロに近づけられます。そうなると補給水はほぼ蒸発水と飛散水だけになり、補給水量がそのまま減量の対象水量に近づきます。当社が扱う emiiR®(エミール)は、この高濃縮運転を薬剤ではなく物理的な水処理で成り立たせる装置です。
このとき動く費目は2つです。下水道使用料が下がり、捨てる水そのものが減るので上水道の料金も同時に下がります。1回の工事で、請求書の2行が同じ方向に動きます。
自治体ごとに変わるところ
制度は多くの自治体にありますが、中身は一つずつ違います。東京都・大阪市・横浜市・名古屋市・広島市・福岡市・神戸市などで実施例があります。次の4点は、必ず管轄の下水道局で確かめてください。
| 確認すること | なぜ自治体で違うのか |
|---|---|
| 申告書の名称と様式 | 条例と規則が自治体ごとに定められている |
| 減量水量の要件(割合や下限) | 財政と事務量の考え方が違う |
| 窓口(下水道局・水道局・市の担当課) | 上水道と下水道の所管が分かれている地域がある |
| 報告の周期(検針ごと・年1回など) | 検針の周期そのものが違う |
出典:メーカー資料(2026-09-26 確認)。名称と要件は管轄の下水道局でご確認ください。
現況の確認から認定までの進め方
建物の側で先にそろえられるものと、窓口に聞かないと決まらないものが分かれます。順番に並べると次のようになります。
- 冷却塔の台数・冷却能力(RT)・循環水量・年間の運転時間を書き出す
- 水道の請求書から、建物全体の使用水量と上下水道の単価を拾う
- 管轄の下水道局に、減量認定の要件とメーターの設置位置を相談する
- 私設メーターを補給ラインと排出ラインに設置する
- 汚水排出量減量申告書と配管系統図を提出して、認定を受ける
- 認定後は、決められた周期でメーターの数字を報告する
もう少し詳しく:請求書のどこを見るか
水道の請求書には、上水道の料金と下水道の使用料が分けて書かれています。減量認定で動くのは下水道側で、ブローを減らせば上水道側も一緒に動きます。
口径別の基本料金と、使用水量に応じた従量料金の単価が載っています。従量料金の単価に減らせる水量を掛ければ、年間で動く金額の見当が付きます。単価は使用水量の区分で段階的に変わるため、いま自分の建物がどの区分にいるかも一緒に見ておいてください。
よくあるご質問
認定を受けると、いつの分から安くなりますか
申告した日から先の分が対象になるのが一般的な扱いです。過去の分をさかのぼって戻してもらうことはできません。開始日の決め方は自治体ごとに定められているので、管轄の下水道局でご確認ください。
私設メーターは、どんなものでもよいのですか
検定を受けたメーターであることを求められるのが一般的です。取り付ける位置も認定する側が見ますので、機種と位置は工事の前に管轄の下水道局へ相談してください。
井戸水を使っている建物でも減量認定は受けられますか
井水や工業用水を使っている建物は、水道の使用水量と汚水量の関係そのものが違うため、扱いが変わります。上水道を使っていない分については下水道使用料の算定方法も別に定められていることが多く、減らせる額は小さくなります。管轄の下水道局でご確認ください。
冷却塔が複数台あるときは、どう測りますか
系統ごとに補給と排出をまとめて測るのが基本です。台数が多い建物では、どの範囲を1つのメーターで測るかによって配管工事の量が変わります。配管系統図を用意して、測る範囲を先に決めてください。
下水道使用料は、年間でどれくらい動きますか
冷却塔の規模と運転時間、上下水道の単価で変わります。100RTクラス冷却塔1台では、ブロー水にかかる上下水道費が年間882,000円から88,000円ほどになる試算があります。自分の建物の数字は、請求書の単価と補給水量から計算できます。
報告を忘れるとどうなりますか
減量が認められず、通常の計算に戻ることがあります。検針の周期に合わせてメーターを読み、だれが報告するかを決めておいてください。担当者が替わるときの引き継ぎ事項にも入れておくと途切れません。
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