この記事の結論
スケール対策は、いま付いているスケールを落とす作業(ケレン・高圧洗浄・酸洗浄)と、次のスケールを付かせない管理(分散剤・ブロー・物理的な水処理)の2つに分かれます。落とすだけでは水が濃くなる条件が変わらないため、次のシーズンにはまた付きます。
まず落とし、そのあと付かせない側の方法で次の付着を遅らせる、という順番で組み合わせるのが基本です。付かせない側は、方法ごとに続く費用(薬剤・水・点検)が違うので、そこで選びます。
冷却塔や熱交換器のスケールに手を焼いている設備管理の方に向けて、打てる手を役割で分けて並べました。
対策は2つに分かれます
スケール対策という言葉には、まったく性質の違う2つの作業が入っています。1つは、いま付いている層を除く作業。もう1つは、次に付く層を作らせない作業です。
見積書を並べると、この違いが見えます。高圧洗浄や酸洗浄は、作業したその日の状態を戻す仕事です。次の付着を止める働きは含まれていません。だから翌シーズンも同じ見積書が出てきます。
どちらが優れているかという話ではありません。役割が違うので、両方要ります。まず落として、そのあと付き方を変える、という順番になります。
| 工程 | 相手にしている時点 | 手段 | 続く費用 |
|---|---|---|---|
| 落とす | いま付いている層 | ケレン・高圧洗浄・酸洗浄・薬品洗浄 | その都度 |
| 付かせない | これから析出する成分 | 分散剤・濃縮倍数の管理・物理処理 | 方式で違う |
いま付いているものを落とす手(機械・酸・薬品)
機械で削るのがケレンと高圧洗浄です。充填材、ルーバー、下部水槽のように手が届く面に使います。厚く硬い層ではケレンでこそげ取ってから高圧洗浄する二段構えになり、人工が増えます。
酸で溶かすのが酸洗浄です。炭酸カルシウムには効きますが、シリカ系の層はほとんど溶けません。材質にも制約があり、アルミや亜鉛めっき、古い銅管では負担が出ます。設備を止めて循環させる必要があるので、止められる時期が限られます。
どちらも共通しているのは、作業したあとの状態から、また積み上がっていくことです。落とすことに次を止める働きは含まれていません。
次を付けない手(薬剤・運転・物理処理)
薬剤で抑えるのがスケール分散剤です。析出した成分を細かいまま水に留め、固着しにくくします。効きますが、濃度を保つための注入と測定、水質分析が続きます。
運転で抑えるのがブローです。濃くなった循環水を捨てて薄めます。確実ですが、捨てた分の水を買い直すことになり、上水道と下水道の両方に費用が立ちます。
物理的な水処理は、薬剤を入れずに、析出のしかたそのものを変える方法です。当社が扱う emiiR®(エミール)は、冷却水の戻り配管に付けた装置の中で水をセラミックスに触れさせ、成分が壁に張り付く硬い結晶ではなく、水に運ばれる細かい粒のまま残るようにします。成分を除去する装置ではないので、水中のミネラルはそのままです。
濃縮という仕組み
冷却塔でスケールが問題になるのは、水が濃くなる設備だからです。冷却は水を蒸発させて熱を捨てる仕組みなので、出ていくのは水だけで、溶けていた成分は残ります。
冷却水の出入口の温度差が5℃のとき、循環水量の1%弱が蒸発分です。この分だけ補給水を足すので、成分は足されるばかりで出ていきません。溶けきれる限界を超えたところから、析出が始まります。
だから付着量は、水質だけでは決まりません。どこまで濃くして運転しているか、つまり濃縮倍数(冷却水が補給水の何倍に濃くなっているか)も関わります。倍数を下げればスケールは減りますが、そのぶんブローで水を捨てることになります。
落としても戻るのはなぜか
理由は2つあります。1つは、濃縮という仕組みが変わっていないことです。洗浄は水の中身に手を入れないので、翌日からまた同じ条件で析出が始まります。
もう1つは、析出した層の表面がざらついていることです。ざらつきは次の結晶の足場になるので、一度付き始めた面は加速して育ちます。男子トイレの排水管の尿石では、薬品洗浄から約2か月で再付着が確認された実証があります。冷却水の系統とは相手が違いますが、析出した層が面に固着していく流れは同じです。
戻る速さを変えるには、洗浄のやり方ではなく、析出と固着の条件を変える必要があります。清掃の質の問題ではありません。
付き方を変えると、何が減るか(薬剤・水・清掃・電気)
付き方が変わると、下がる費用は4つあります。所管する部署も支払先も違うので、まとめずに並べてください。
100RTクラスの冷却塔1台では、薬品費とブロー水関連の合計が約86%減という試算があります。投資回収は、個別の試算の前の目安として約2〜3年です。
- 薬剤:スケール分散剤を外せる(殺藻剤は続く)。濃度管理と水質分析の作業も減る
- 水:固着しない状態でブローを絞れる。上水道の代金と下水道の使用料が下がる
- 清掃:付着が薄いと、ケレンでこそげ取る工程が要らなくなる場合がある
- 電気:伝熱面がきれいだと、スケールによる熱効率の低下を抑えられる
自分の設備でいまどうなっているか測る
手を打つ前に、現況を数字で押さえます。要るのは4つです。設備の図面を探すより、運転記録と点検報告書を見るほうが早いことが多いものです。
- 濃縮倍数(補給水と循環水の塩化物イオン濃度、または電気伝導率の比)
- 伝熱面と充填材の付着の状態(点検記録の写真、清掃時の所見)
- スケールの種類(酸で溶けたかどうかが、洗浄の記録から分かる)
- 補給水量とブロー水量(メーターの数字、または循環水量と運転時間からの計算)
3か月の無償デモで確かめる
実機に付けて測るのが、いちばん確かです。デモ機を冷却塔に設置し、約3か月のあいだ、スケール分散剤をカットした状態とブロー水を絞った状態で何が起きるかを記録します。費用のご負担はありません。
お願いするのは2つです。週1回、のぞき穴からセラミックスが流動しているかを見ていただくこと。終了時のデータと写真を共有していただくことです。社名の公開は任意で、伏せる場合は施設の種類だけで扱います。
始める前に、戻す条件を決めておきます。付着が増えた、腐食の兆候が出た、水質が管理の範囲を外れた、のいずれかが出たら元の薬注に戻す、という取り決めです。働かない水質もあります。強酸性の水が入る系統では、この方式は働きません。
よくあるご質問
洗浄をやめてもよいのですか
いいえ、洗浄は続けます。いま付いている層は、落とす作業でしか除けません。目標は洗浄をなくすことではなく、洗浄の間隔を延ばして、前処理のケレンが要らない状態にしておくことです。
スケールの種類は、どうやって見分けますか
酸で溶けたかどうかが手がかりになります。酸洗浄で落ちた層は炭酸カルシウム系、ほとんど溶けなかった層はシリカ系が混ざっています。過去の洗浄の記録に所見が残っていることが多いところです。
厚く付いてしまった設備でも使えますか
使えます。既存の層は時間をかけて脆くなり、剥がれやすくなります。10年以上蓄積していたと思われる硬いスケールが、指で剥がれる状態になった実証があります。どこまで変わるかは水質と付着の状態で違うので、実機で確かめてください。
薬剤を全部やめられますか
やめられません。外せるのはスケール分散剤で、殺藻剤と殺菌剤は続きます。レジオネラ属菌の管理では、温床になるバイオフィルムの抑制が対策の基本とされており、その基本の部分を装置が受け持つ形になります。
工事で空調を止める必要はありますか
冷却水の戻り配管にバイパスで入れるので、建物や空調を長時間止める必要はありません。切り回しの範囲は配管の取り回しで変わるため、写真と図面を拝見して決めます。
デモのあと、どんな形で導入できますか
買い切りと、初期費用0円の形の2つです。初期費用0円のほうは、削減できた金額の一定割合を5年間お支払いいただく形で、本体と設置工事、10年保証に加えて、殺藻剤とメンテナンス、点検の費用まで含みます。
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