この記事の結論
スケールとは、水に溶けていたカルシウムやシリカなどが、蒸発や加熱で溶けきれなくなって固まった結晶の層のことです。水垢はその初期の薄い層で酸性の洗剤で落ちますが、育ったスケールは酸で溶かすか、削るしかありません。
白く硬い層は炭酸カルシウム、灰色で滑らかな層はシリカ、茶色い層は鉄が混ざったものが目安です。少量を酸に入れ、泡を出して溶けるかどうかで見分けられます。
設備の点検で「スケール」と書かれた所見を受け取った方や、水回りの白い固まりの正体を知りたい方に向けて、汚れとの違いを整理しました。
スケールは、水に溶けていた成分が固まったもの
水道水にも井水にも、カルシウム、マグネシウム、シリカ、鉄などが溶けています。透明なので見えませんが、水が蒸発したり温められたりすると溶けきれなくなり、固い層になって面に張り付きます。これがスケールです。
ほこりや油のように外から運ばれてきた汚れではありません。水の中から出てきたものなので、水を使い続けるかぎり供給が止まりません。清掃では止められないのが、この層の性質です。
厄介なのは、熱をほとんど通さないことです。金属と比べると2桁から3桁の差があります。
| 材質 | 熱伝導率の目安(W/m·K) |
|---|---|
| 銅 | 約400 |
| 炭素鋼 | 約50 |
| 炭酸カルシウムスケール | 約0.6〜2.0 |
| シリカスケール | 約0.3 |
水垢・石けんカス・スケールの見分け方
現場では3つが混ざって付いています。落とし方が違うので、先に分けます。
見分け方は簡単です。酸をかけて泡が出て溶けるなら炭酸カルシウム系、アルカリ性の洗剤でぬるりと落ちるなら石けんカス、どちらでも動かないならシリカ系か、こすり落とすしかない層です。
| 呼び方 | 何でできているか | 落とし方の向き |
|---|---|---|
| 水垢 | 水の成分が乾いて残った薄い層。スケールの初期の姿 | 酸性の洗剤 |
| 石けんカス | 石けんやシャンプーの成分と水のカルシウムが結びついたもの | アルカリ性の洗剤 |
| スケール | 水の成分が結晶に育って固着した層 | 酸で溶かす、または削る |
白いもの・茶色いもの・ざらつくもの
色と手触りから、中身の見当が付きます。白くて硬い層は炭酸カルシウムが主体で、蛇口の先や給湯の配管に出ます。茶色い層は鉄が混ざったもので、鉄配管の系統や赤水が出る建物に多く見られます。
灰色でガラスのように滑らかな層は、シリカが混ざっている見当が立ちます。酸をかけてもほとんど動かないのが特徴です。ざらざらした手触りの層は、結晶が育ち始めた面です。
ざらつきには意味があります。表面が粗い面は次の結晶の足場になるので、一度付き始めた面は加速して育ちます。だから薄いうちに手を打つほうが、あとの作業が軽くなります。
くわしいご案内スケール対策の全体像|落とす工程と、付かせない工程を分ける
できる場所(家庭の水回り・給湯・ボイラー・熱交換器・冷却塔)
同じ物差しで並べると、どこも「水が蒸発する」か「水が温められる」かのどちらかです。場所が違うだけで、起きていることは同じです。
| 場所 | なぜ出るか | 出ると何が起きるか |
|---|---|---|
| 家庭の水回り | 水滴が乾いて成分が残る | 見た目が悪くなる。蛇口の目詰まり |
| 給湯・ボイラー | 温められて溶けきれなくなる | 燃料が増える。伝熱面が傷む |
| 熱交換器 | 伝熱面で局所的に温度が上がる | 熱が伝わらず、電気代が増える |
| 冷却塔 | 蒸発で水が濃くなる | 配管と伝熱面に固着し、清掃と薬剤が増える |
硬いスケールと、緩いスケール
同じ成分でも、固さが違います。結晶がきっちり並んで育った層は硬く、面に強く張り付きます。細かい粒のまま集まった層は緩く、水流や軽い力で剥がれます。
この違いは、どう析出したかで決まります。ゆっくり温度と濃度が上がる条件では硬い結晶になり、析出のしかたに手が入ると細かい粒のまま残ります。
設備にとって、この差は大きな意味を持ちます。硬い層は削るしかありませんが、緩い層なら水流で運ばれて下部水槽に沈むので、伝熱面には残りません。当社が扱う emiiR®(エミール)は、水中のミネラルを取り除くのではなく、この析出と固着の挙動を物理的に変える装置です。
落とす前に、種類を確かめる
種類を確かめないまま洗浄に入ると、費用が空振りします。炭酸カルシウム系のつもりで酸洗浄を段取りしたのに、シリカ系が混ざっていてほとんど溶けなかった、という形です。
確かめ方は、少量を採って酸に入れてみるのがいちばん早いところです。泡を出して溶ければ炭酸カルシウム系、形が残るならシリカ系が混ざっています。過去の洗浄の記録に所見が残っていることもあります。
そのうえで、落とす工程と、次を付けさせない工程を分けて考えてください。洗浄はいま付いている層を除く仕事で、次の層を止める働きは含まれていません。
よくあるご質問
スケールと水垢は同じものですか
元になる成分は同じです。乾いて残った薄い層を水垢、結晶に育って固着した層をスケールと呼び分けています。薄いうちは酸性の洗剤で落ちますが、育った層は溶かすか削るかになります。
浄水器を付ければスケールは出なくなりますか
出なくなりません。家庭用の浄水器は、においや濁りを取ることが主な役割で、カルシウムやシリカはそのまま通します。成分を取り除く方式は軟水器や膜処理で、規模が大きい設備では費用と手間の面で現実的でないことが多い方法です。
スケールを放っておくと、どうなりますか
層が厚くなるほど、熱と水の流れに影響が出ます。給湯やボイラーでは燃料が増え、熱交換器や冷却塔では電気代と清掃の手間が増えます。表面が粗くなるので、次の結晶も付きやすくなります。
こすれば落ちますか
薄い層なら落ちます。育った層は面と一体になっているので、こすると下地を傷めます。傷んだ面は表面が粗くなり、次の結晶の足場が増えるので、かえって付きやすくなります。
設備のスケールは、どのくらいの厚みで影響が出ますか
伝熱面では1mmに届く前から効いてきます。熱伝導率が金属と2桁から3桁違うため、薄い層が断熱材のように働きます。冷却塔や熱交換器では、0.5mm前後の層で消費電力に差が出るという測定例があります。
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