この記事の結論
スケール分散剤は析出した粒を細かいまま水に浮かせ、抑制剤は結晶が育つのを妨げ、除去剤(酸が主体)は付いた層を溶かします。スケール防止剤はこれらをまとめた呼び名で、製品によって中身が違います。
分散剤と抑制剤は運転しながら注入し続けるもの、除去剤は設備を止めて循環させるものです。製品の中身は、安全データシート(SDS)で確かめられます。
冷却水のスケール防止剤を選ぼうとして、製品ごとに書いてあることが違うと感じた方に向けて、4つの言葉の仕事を分けました。
4つの言葉は、仕事が違います
スケール防止剤、スケール抑制剤、スケール除去剤、スケール分散剤。並んでいると同じ棚の商品に見えますが、相手にしている時点が違います。
分散剤と抑制剤は、これから析出する成分が相手です。除去剤は、すでに面に付いている層が相手です。防止剤は、この2つをまとめた呼び方として使われています。
| 呼び方 | 相手にしている時点 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 分散剤 | 析出した直後の微粒子 | 運転しながら連続で注入 |
| 抑制剤 | 結晶が育ち始める瞬間 | 運転しながら連続で注入 |
| 除去剤 | すでに固着した層 | 設備を止めて循環洗浄 |
| 防止剤 | 上の組み合わせ(製品による) | 製品の説明で範囲を確認する |
この表は薬剤の役割で分けた整理です。実際の配合と成分は製品ごとに定められているので、安全データシート(SDS)でご確認ください。
分散剤が水の中でしていること
水が濃くなると、カルシウムやシリカは溶けきれなくなって細かい粒として現れます。この粒が集まって育ち、面に張り付くとスケールになります。
分散剤は、この粒の表面に付いて、粒どうしが集まるのを邪魔します。粒は細かいまま水に浮いた状態で運ばれ、下部水槽に沈むか、ブローで系外へ出ていきます。伝熱面に張り付く前に運び出す、という働きです。
だから分散剤を使っている系統では、ブローを止められません。細かいまま留めた粒を、どこかで外へ出す必要があるからです。分散剤とブローは、組みで働いています。
抑制剤が結晶に働く場所
抑制剤は、結晶が育ち始める場所に入り込みます。結晶は規則正しく成分が並ぶことで硬く育つので、その並びに割り込んで乱すと、育ちが止まります。
少ない量で効くのがこの働きの特徴です。結晶が育つ先端だけを相手にするので、水の中の成分全部を相手にする必要がありません。
一方で、効く範囲は狭くなります。水質、pH、温度が想定から外れると、割り込む場所そのものが変わって働きが落ちます。だから濃度だけでなく、水質の管理が一緒に要ります。
くわしいご案内スケール対策の全体像|落とす工程と、付かせない工程を分ける
除去剤が使えるのは、止めた設備
除去剤は酸を主体にしたもので、付いている層を溶かします。運転しながら入れる薬剤ではありません。設備を止めて、決めた濃度と時間で循環させる工程になります。
相手にできるのは炭酸カルシウム系の層です。シリカが混ざった層はほとんど溶けません。材質にも制約があり、アルミ、亜鉛めっき、ゴムの部材に触れる系統では範囲を区切ります。
そして除去剤には、次の層を止める働きが含まれていません。落とした面は振り出しに戻るだけなので、水の中身が同じなら同じ速さで積み上がります。
防止剤という呼び方の幅
防止剤という名前の製品には、分散剤だけのもの、抑制剤だけのもの、両方を混ぜたもの、防食剤や殺藻剤まで入れた総合の処理剤があります。名前からは中身が分かりません。
確かめ方は2つです。安全データシートで成分の系統を見ること。そして製品の説明で、運転しながら入れるものか、止めて循環させるものかを見ることです。後者が分かれば、除去側か防止側かの判断が付きます。
見積書を比べるときは、単価ではなく年間の注入量と、濃度管理と水質分析の作業まで含めて並べてください。薬剤の代金より、続く作業のほうが大きいことがあります。
濃度の管理に手間がかかる理由
分散剤も抑制剤も、水の中に一定の濃度がないと働きません。冷却塔では蒸発で濃くなり、ブローと補給で薄まるので、濃度が絶えず動きます。だから注入し続けて、測り続けることになります。
実務として続くのは、薬液タンクの残量確認、注入ポンプの点検、補充の発注と受け入れ、濃度の測定と記録、月次の水質分析の確認です。1つずつは短い作業ですが、毎月来ます。
濃度が下がれば効かず、上げすぎれば費用が増えます。この幅の中に保ち続けることが、薬剤で管理するという方式の中身です。
分散剤を減らすと、どの費用が下がるか
分散剤の仕事は、薬剤以外の手段でも成り立ちます。当社が扱う emiiR®(エミール)は、外部電力と化学薬品を使わず、水の流動エネルギーだけで析出と固着の挙動を変える装置です。細かい粒のまま水流に運ばれる状態を、薬剤ではなく物理的に作ります。
分散剤を外すと、100RTクラスの冷却塔1台では薬品費が約7割減という試算です。残るのは殺藻剤などの分です。藻とバイオフィルムの管理は薬剤の領域なので、ここは続きます。
分散剤の濃度管理の作業も軽くなります。ブロー水を減らせるようになれば、上水道と下水道の費用も下がります。装置側に補充する消耗品はありません。可動部と電力を持たず、セラミックス同士が流動して衝突しながら自浄する構造です。
よくあるご質問
スケール防止剤の成分は、どこで確かめられますか
安全データシート(SDS)に成分の系統と濃度の範囲が記載されています。納入している会社に求めれば出てきます。製品名や広告の文言からは、分散剤なのか抑制剤なのかまで分かりません。
防止剤と除去剤を一緒に使えますか
同時には使いません。除去剤は設備を止めて循環させる工程、防止剤は運転しながら注入する薬剤です。除去剤で落としてから、防止剤で次の付着を抑える、という順番になります。
分散剤を入れているのに、スケールが付くのはなぜですか
濃度が保てていないか、ブローが足りていないか、シリカが飽和に近いかのいずれかです。分散剤は細かい粒のまま留める働きなので、留めた粒を系外へ出す経路がないと、どこかに溜まります。
薬剤を全部やめられますか
やめられません。スケール分散剤は外せますが、藻とバイオフィルムを抑える殺藻剤と殺菌剤は続きます。菌を減らす働きは装置にはないので、衛生の管理は薬剤と専門の水管理が受け持ちます。
装置に替えると、水質分析もやめられますか
いいえ、続けます。濃縮倍数を上げる運転では、電気伝導率と塩化物イオンを見続ける必要があります。減るのは分散剤の濃度を追う項目です。冷却塔の用途では、水質と運転条件を確認する保守点検のサービスを別に用意しています。
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