冷却塔は水を蒸発させて熱を捨てる設備です。出ていくのは水だけで、溶けていた成分は残るので、循環水はどんどん濃くなります。
濃くなった水から成分が析出し、伝熱面や充填材に固まって付いたものがスケールです。原因は汚れではなく、濃縮という仕組みそのものです。
冷却塔(クーリングタワー)のスケールが毎年出てくる理由を知りたい設備管理の方に向けて、濃縮から順番に説明します。
蒸発して濃くなる、という一点
冷却塔が熱を捨てる方法は、水を蒸発させることです。水が水蒸気になるときに周りから熱を奪うので、残った水が冷えます。
このとき出ていくのは水の分子だけです。水に溶けていたカルシウム、マグネシウム、シリカ、塩化物イオンは、循環水の中に残ります。減った水を補給水で足すと、成分はさらに持ち込まれます。
だから運転を続けるほど、循環水の成分は濃くなります。この濃さが原水の何倍になっているかを表す数字が、濃縮倍数です。
濃縮倍数は、日々の運転で決まる
濃縮倍数は、補給水量をブロー水量で割った値として扱います。捨てる水が少なければ倍数は上がり、多ければ下がります。
現場で目安として使われるのは電気伝導率です。原水と循環水の値を比べれば、いまどれくらい濃縮しているかの見当が付きます。
スケールの正体は、水に溶けていた成分
冷却塔のスケールで量が多いのは炭酸カルシウムです。もともと水に溶けていた成分で、外から入ってきた汚れではありません。
炭酸カルシウムには、温度が上がると溶けにくくなるという性質があります。ふつうの物質は温めれば溶けやすくなりますが、これは逆です。だから、いちばん熱いところに先に付きます。
冷却塔と熱交換器の中でいちばん熱いのは、伝熱面です。冷やすべき相手から熱を受け取る場所に、優先して固まっていきます。
シリカと、硬い層
シリカが多い水では、より硬く落ちにくい層になることがあります。酸で溶かす清掃が効きにくく、こそげ落とす作業に頼ることになります。
地域によって原水の成分は違います。同じ機種でも、運転できる濃縮の幅が地域で変わるのはこのためです。
付くと何が起こるか
スケールは、熱をとても通しにくい物質です。伝熱面に薄く付くだけで、断熱材を貼ったように働きます。
0.5mm前後のわずかな付着で、15%から60%規模の損失が生じ得るという測定例があります。冷やす力が落ちれば、同じ温度にするために機器は長く動き、電気代が増えます。真夏には、冷房の能力そのものが足りなくなります。
設備担当の仕事の言葉に直すと
熱交換の効率が落ちる、で止めると社内で通りません。年間の電気代が増える、真夏にテナントさまから暑いと言われる、清掃の委託費と立ち会いの日数が毎年積み上がる。ここまで降ろすと、対策の順番が決まります。
厚く付いたスケールは、高圧洗浄だけでは落ちません。ケレンでこそげ落としてから洗うことになり、工程が1つ増えます。増えた工程は、そのまま毎年の委託費になります。
| 物質 | 熱伝導率(W/m・K) |
|---|---|
| 銅 | 約400 |
| 炭素鋼 | 約50 |
| 炭酸カルシウムのスケール | 約0.6〜2.0 |
| シリカのスケール | 約0.3 |
出典:メーカー資料(2026-09-26 確認)。
濃縮を抑える手と、その代償
濃くなるなら薄めればよい、という発想がブローです。濃い水を抜いて薄い補給水を足せば、濃縮倍数は下がります。
代償は水です。抜いた水は上水道で買った水で、下水道へ捨てるので下水道使用料もかかります。スケールを避けるために、水のお金を払い続ける形になります。
もう1つの手が、スケール分散剤です。析出した成分を水中に散らして固着しにくくする薬剤で、濃縮の限界を少し上に動かせます。こちらの代償は、薬品費と、濃度を保つための水質分析です。
自分の冷却塔で、いまどうなっているか測る
対策を選ぶ前に、いまの状態を数字にしてください。必要なのは特別な計測器ではありません。
- 電気伝導率:原水と循環水を比べて、いまの濃縮の程度を見る
- 全硬度:スケールのもとになる成分がどれくらいあるか
- 補給水量とブロー水量:メーターがあれば濃縮倍数が出る
- 付着の状態:ルーバー・充填材・下部水槽を写真で残す
付き方そのものを変えるという選び方
薬剤で散らす、水で薄める。この2つとは別に、成分が硬い結晶に育って固着することを物理的に抑える方法があります。当社が扱う emiiR®(エミール)がこの考え方の装置です。
水中のミネラルを取り除くわけではありません。成分はそのままで、析出と固着の挙動だけが変わります。硬い結晶に育たなければ、微細なまま水に運ばれて下部水槽に沈みます。
この方法だと、濃縮の限界を上げられるのでブローを減らせます。スケール分散剤も使わずに運転できます。殺藻剤による管理は続きますので、薬品費がすべてなくなるわけではありません。
よくあるご質問
スケールは、水が汚れているから付くのですか
汚れではありません。もともと水に溶けているカルシウムなどの成分が、蒸発で濃くなって析出したものです。きれいな水道水を補給していても、蒸発が続けば濃くなります。
濃縮倍数は、どれくらいまで上げられますか
原水の硬度やアルカリ度で変わるため、地域と建物で違います。上げれば捨てる水は減りますが、スケールが析出しやすくなります。いまの値は、原水と循環水の電気伝導率を比べれば見当が付きます。
スケールが付くと、電気代はどれくらい増えますか
0.5mm前後の付着で、15%から60%規模の損失が生じ得るという測定例があります。幅が大きいのは、機器の種類と運転条件で変わるためです。自分の建物での影響は、清掃の前後で消費電力を比べると見えます。
冷却塔の清掃は、毎年必要ですか
付着の程度で変わります。厚く付いていると、こそげ落としてから高圧洗浄する工程になり、時間と人手が増えます。付着そのものを抑えられれば、工程を1つ減らせる場合があります。
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