この記事の結論
炭酸カルシウムのスケールは酸で溶け、シリカのスケールは酸でほとんど溶けません。そのため炭酸カルシウム系は酸洗浄やクエン酸で落とせますが、シリカ系はケレンや高圧洗浄で削り落とすことになります。
どちらが付くかは水質で決まり、カルシウム硬度の高い水では炭酸カルシウム、ケイ酸の多い井水や工業用水ではシリカが増えます。洗浄を発注する前に、剥がした層を少量酸に入れ、泡を出して溶けるかを確かめてください。
スケールの洗浄を検討していて、成分によって落とし方が変わると知った設備担当の方に向けて、酸で溶けるかどうかという見分け方と、それぞれの落とし方をまとめました。
2つは成分が違います
炭酸カルシウムは、水に溶けていたカルシウムイオンと炭酸イオンが結びついた結晶です。石灰石と同じ成分で、身の回りでは貝殻や卵の殻にあたります。
シリカは二酸化ケイ素で、ガラスや石英と同じ系統です。水にはケイ酸として溶けていて、濃くなると重なり合って固い層を作ります。
熱を通しにくいのはどちらも同じで、シリカのほうが通しません。炭酸カルシウムスケールの熱伝導率は約0.6〜2.0 W/m·K、シリカスケールは約0.3 W/m·K です。炭素鋼が約50、銅が約400 なので、伝熱面に薄く付いただけで断熱材のように働きます。
酸で溶けるもの、溶けないもの
炭酸カルシウムは酸と反応して二酸化炭素を出しながら溶けます。酸洗浄が効くのはこの層です。クエン酸のような弱い酸でも、薄い層なら時間をかけて溶けます。
シリカは酸と反応しません。塩酸でもクエン酸でも、層はそのまま残ります。溶かす方向で考えるならフッ化物系の薬剤か強いアルカリになりますが、材質への負担が大きく、設備では現実的でないことが多いところです。
だからシリカが混ざっている層は、削る側の手段になります。機械的に落とすか、そもそも付けさせないか、の二択です。
| 成分 | 酸への反応 | 現実的な落とし方 |
|---|---|---|
| 炭酸カルシウム | 溶ける。泡が出る | 酸洗浄、クエン酸(薄い層) |
| シリカ | ほとんど溶けない | ケレン・高圧洗浄などの機械的な手段 |
| 鉄さびが混ざった層 | 一部溶ける | 酸洗浄で崩し、残りを機械で落とす |
どの水にどちらが出るか
炭酸カルシウムは、カルシウム硬度の高い水で出ます。石灰質の地層を通った地下水では、給湯の配管や蛇口の先にすぐ現れます。温度が上がるほど溶けにくくなるので、熱い側に集まります。
シリカは、火山性の地層を通った水に多く含まれます。井水や工業用水を使っている建物で目立ちます。こちらは温度ではなく濃度で決まるので、水を濃くして使う設備に出ます。
冷却塔は、その濃くして使う設備そのものです。蒸発で水が濃くなり、濃縮倍数を上げるほどシリカが飽和に近づきます。だから冷却塔では、濃縮倍数の上限をシリカが決めていることがよくあります。
くわしいご案内スケール対策の全体像|落とす工程と、付かせない工程を分ける
見た目と手触りでの見当
炭酸カルシウムは白く、爪で押すとぼろりと欠けることがあります。層の断面に細かい結晶の並びが見えることもあります。
シリカは灰色から半透明で、表面がガラスのように滑らかです。爪では傷が付きません。薄いのに硬い、という印象になります。
ただし現場の層はほとんど混ざっています。見た目で断定せず、少量を採って酸に入れてみるのがいちばん確かです。泡を出して溶けた割合が、そのまま酸洗浄で落ちる割合の見当になります。
シリカが出る建物の条件
条件は3つそろったときです。原水にケイ酸が多いこと、水を濃くして使う設備があること、そしてその濃度が続くことです。
井水や工業用水を主に使っている建物、冷却塔の濃縮倍数を高く保っている建物、補給水の水質分析でシリカの項目が高く出ている建物が、この条件に入ります。水質分析の報告書にシリカの欄があれば、そこを見てください。
シリカが効いている設備では、酸洗浄の見積書を取り直す前に、濃縮倍数の設定を確認する価値があります。上限をシリカが決めているなら、そこを動かせるかどうかが本題になります。
落とす手と、付けない手
落とす手は、成分によって選び分けます。炭酸カルシウム系は酸洗浄、シリカ系は機械的な手段。混ざっているなら両方を組み合わせます。どちらの場合も、作業したあとの状態からまた積み上がっていきます。
付けない手は、成分の違いをあまり問いません。析出した成分が硬い結晶に育って面に固着する、という段取りは同じだからです。当社が扱う emiiR®(エミール)は、外部電力と化学薬品を使わず、水の流動エネルギーだけでこの析出と固着の挙動を変える装置です。水中のミネラルを取り除くわけではありません。
シリカが上限を決めていた設備でも、この形にすると濃縮倍数を上げられることがあります。emiiR® で管理した密閉式の冷却塔では、原水の約100倍まで濃縮しても、スケールの付着と腐食の兆候が見られませんでした。飽和に近い状態そのものが障害を起こすのではなく、そこで硬い層に育つかどうかが分かれ目になっていた、という形です。働かないのは強酸性の水で、温泉泉質のような低いpHの系統では働きません。
よくあるご質問
自分の設備のスケールが、どちらなのか調べる方法はありますか
剥がした層を少量、酸に入れてみてください。泡を出して溶ければ炭酸カルシウム系、形が残ればシリカ系が混ざっています。補給水の水質分析でシリカの項目を見るのも手がかりになります。
クエン酸でシリカスケールは落ちますか
落ちません。シリカは酸と反応しないので、時間を延ばしても溶けません。表面に混ざっている炭酸カルシウムの分だけが動きます。
シリカスケールがあると、濃縮倍数は上げられませんか
上げられることがあります。シリカが飽和に近い設備では、倍数を上げると析出が進みますが、硬い層として固着するかどうかは析出のしかたで変わります。実機で測ってから判断する項目です。
井戸水を使っています。どちらが出やすいですか
地層によって変わります。石灰質の地層を通った水は炭酸カルシウム、火山性の地層を通った水はシリカが多くなる傾向です。水質分析の報告書で、カルシウム硬度とシリカの両方を見てください。
成分が混ざっている層は、どう扱いますか
酸洗浄で炭酸カルシウムの分を崩し、残ったシリカの分を機械的に落とす順番になります。崩れた層は脆くなるので、機械側の作業が軽くなります。
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