厚みで落ちていないものは、緩めて削る手順を足せば落ちます。素材そのものが変わっているものは、何を使っても元の白さには戻りません。
この2つは手触りで見分けられます。見分けてから道具を選ぶと、余計な時間と傷を増やさずに済みます。
洗剤を替え、ブラシを替え、時間をかけても尿石が落ちないという方に向けて、落ちるものと落ちないものの境目と、その見分け方を書きました。
落ちない尿石には2つあります
同じ「落ちない」でも、中身が2つに分かれています。1つは、結晶が厚く積もっていて洗剤が下まで届いていないもの。もう1つは、便器の表面そのものが変わってしまって、汚れが残っているのではないものです。
前者は手順で解決します。後者は、どの洗剤でも、どれだけ時間をかけても変わりません。作業に入る前にこの2つを分けておくと、落ちるものに時間を使えます。
厚みで落ちていないもの
尿石は汚れではなく結晶です。表面がざらついているので次の結晶が引っかかり、層になって積み上がっていきます。層になると、酸性の洗剤がいちばん外側だけを溶かして力を失い、下の層に届く前に流れていきます。
見た目は白か薄い黄色で、爪の先で押すと硬く、指でなぞるとざらざらします。縁の下や水の当たらない面に、厚みのある段ができていることが多いものです。
この状態は落ちます。酸性の洗剤を紙やラップで押し当てて乾かないようにし、外側が緩んだところで削り、また当てる。この往復を層の数だけ繰り返すのが手順です。1回で落とそうとすると、洗剤の量が増えるだけで前に進みません。
素材が変わって落ちないもの
陶器の便器の表面には、ガラス質の釉薬の層があります。酸性の洗剤を強い濃度で長く当て続けたり、研磨材で削り込んだりすると、この層が薄くなって細かい傷が入ります。そうなると、その面は光を返さなくなり、白くくすんで見えます。
樹脂の部品では、素材そのものが黄色く変わることがあります。尿の成分が固まったものは表面に乗っているだけなので落ちますが、樹脂の内側で変わった色は、表面を洗っても動きません。
どちらも、残っているのは汚れではありません。落とす対象がないので、作業を続けても時間だけが減ります。
見分け方
手袋をした指の腹でなぞると、はっきり分かれます。引っかかるものは結晶が乗っているので落ちます。段差がなくつるりとしていて、それでも色が違うものは素材が変わっています。
もう1つの見分け方は、酸性の洗剤を5分だけ当てて水で流し、色が少しでも動いたかを見ることです。動いたなら続ける値打ちがあります。まったく動かないなら、時間を延ばしても同じです。
| 状態 | 見え方と手触り | 落ちるか | 次の手 |
|---|---|---|---|
| 薄い付着 | 白い膜。指がわずかに引っかかる | 落ちる | 酸性の洗剤を当てて流す |
| 層になった付着 | 白か薄い黄色の段。硬くざらつく | 落ちる | 当てる、緩める、削るを繰り返す |
| 水の流れを塞ぐほどの付着 | 縁や排水口が狭くなっている | 落ちる | 物理的に取り除いてから洗浄する |
| 釉薬が痛んだ面 | 段差がなく、白くくすむ | 戻らない | 研磨をやめ、交換の時期で判断する |
| 樹脂の変色 | つるりとして黄色い | 戻らない | 部品単位の交換で判断する |
くわしいご案内トイレの尿石の取り方|固さで変わる手順と、戻るまでの期間
時間をかければ落ちる範囲
層になった付着は、往復の回数さえかければ落ちます。目安は、1回の浸け置きで落ちる厚みが薄いほど、往復の回数が増えるということです。半日かけて3往復する日程を先に決めておくと、途中でやめずに済みます。
作業の順番は、緩める、削る、流す、確かめる、です。削る道具は柔らかいほうから試します。最初から硬い道具を使うと、落ちる前に釉薬の層を削ってしまい、落ちない側に自分で移してしまいます。
業者に頼んでも落ちない範囲
業者の作業が強いのは、届く範囲と圧力です。便器の先の配管に入り込んだ尿石は、家庭の道具では届かないので高圧洗浄や薬品洗浄の出番になります。ここは頼めば落ちる範囲です。
一方で、釉薬が痛んだ面と樹脂の変色は、業者に頼んでも戻りません。残っているのが汚れではないので、作業の強さと関係がないためです。見積もりの段階で「色が戻るのか、汚れが落ちるのか」を分けて聞いておくと、期待の置き場所がそろいます。
水の流れを塞ぐほど育ってしまった場所は、まず物理的に取り除くところから始まります。ここを飛ばして次の話に進めることはできません。
交換を考える境目
交換の判断は、見た目ではなく水の流れで決めるほうが迷いません。流れが落ちている、水が溜まる、洗浄のあと数日で臭いが戻る。この3つが重なっているときは、便器の内側の水の通り道が狭くなっています。
見た目のくすみだけで、水の流れも臭いも問題がないなら、交換を急ぐ理由はありません。くすみは進みませんが、狭くなった通り道はそのままにすると進みます。
落とせたあと、戻るまで
落としたあとに何日もつかは、作業の出来ではなく、その場所の条件で決まります。尿素が細菌の働きでアンモニアに変わり、水のpHが上がって、尿の中のカルシウムが結晶として析出する。この反応は、洗い上げた面でも同じように始まります。
排水管の中を薬品で洗った記録では、洗浄の直後にきれいになった面が、約2か月で再び付着した状態に戻っていました。落とす作業に、次の付着を止める働きが入っていないからです。
戻る速さを変えたいときは、洗浄水の側に手を入れる考え方があります。当社が扱う emiiR®(エミール)は、給水管の途中に入れる筒の中で水を特殊セラミックスに接触させ、結晶が硬く固着しにくい状態に変える装置です。真空式のトイレで固着していた尿石が、設置から約2週間で剥離しはじめ、約3か月で剥がれた記録があります。
この装置を入れても、緩んだ付着物を取り除く清掃は必要です。目標は清掃をやめることではなく、落としてから次に手を入れるまでの間隔を延ばすことです。
よくあるご質問
浸け置きは何時間すれば落ちますか
時間よりも往復の回数で決まります。層になった付着は、外側が緩んだところで削り、また洗剤を当てるという繰り返しで進みます。1回を長くしても、溶けた分が乾いて固まると前に戻るため、20分から30分で区切って確かめるほうが早く終わります。
業者に頼めば、元の白さまで戻りますか
結晶が乗っているだけなら戻ります。釉薬の層が痛んで白くくすんでいる面は、汚れが残っているのではないので戻りません。見積もりのときに、落とすのは付着物か、色を戻すことなのかを分けて聞いておくと判断できます。
削って落としてもよいですか
緩めてから、柔らかい道具で削るなら問題ありません。乾いた硬い結晶に硬い道具を当てると、結晶より先に釉薬の層が削れます。樹脂の部品では、研磨材を使うと細かい傷が残り、そこに次の結晶が引っかかりやすくなります。
落ちない黄ばみは、放っておいても進みますか
素材が変わった色は、それ以上進みません。進むのは、水の通り道に付いている結晶の側です。見た目が気になるだけの場所と、流れが落ちている場所を分けて、後者から手を付けてください。
落としたあと、どれくらいで戻りますか
排水管を薬品で洗った記録では、約2か月で再び付着した状態に戻っていました。便器の中は、使う人数と流す水量で速さが変わります。戻る速さそのものを変えるには、洗浄水の側に手を入れる方法があります。
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