この記事の結論
尿石用の酸性洗剤を安全に使ううえでいちばん大切なのは、塩素系の洗剤と一緒に使わないことです。混ざると有毒な塩素ガスが出るため、続けて使うときは、あいだに水で十分に流してください。
換気は、換気扇に加えてドアを開け、空気の入口と出口の2か所を作ります。作業する人は腕まで覆うゴム手袋とゴーグルを着け、洗剤を当てる時間を決めて、時間が来たら水で流します。
尿石を落とす酸性の洗剤は、使い方を誤ると塩素ガスの発生や、便器・金具の傷みにつながります。清掃の現場で強い洗剤を扱う方に向けて、混ぜてはいけない組み合わせ、換気と保護具の取り方、素材を傷める組み合わせをご説明します。
酸性と塩素系を混ぜてはいけない理由
尿石に効くのは酸性の洗剤です。カビや汚れの漂白に使うのが塩素系の洗剤です。トイレ掃除では、どちらも手元にあることが多いものです。
この2つが混ざると、塩素系の洗剤から塩素のガスが出ます。酸性の成分が、塩素系の洗剤に含まれる成分を分解して、気体として放出させるためです。密閉された狭い空間では、短い時間で濃くなります。
容器の中で混ぜなくても起こります。床に残った酸性の洗剤の上に塩素系をかけた、便器の中に酸性の洗剤を入れたまま塩素系を足した、という形でも同じです。液性が違う洗剤を同じ作業で続けて使うときが、いちばん危ない場面です。
起きることと、起きたときの動き
塩素のガスには刺激のあるにおいがあります。目と鼻と喉に刺激を感じ、咳が出ます。濃くなると呼吸が苦しくなります。
気づいたときは、次の順に動きます。まず、すぐにその場所から離れます。ドアは閉めずに開けたまま出ます。次に、外の空気のある場所で休みます。症状が続くなら、医療機関に相談します。
換気しようとして、中に入り直さないでください。塩素のガスは空気より重いので、床に近いところに溜まります。しゃがんで拭き取ろうとする動きが、いちばん吸い込みます。
換気をどれだけ取るか
換気扇を回すだけでは足りません。空気を出す側だけを回しても、入ってくる側がなければ空気は動きません。ドアを開けて、外から空気が入る道を作ってください。
窓のないトイレでは、ドアを全開にして、その先の廊下の窓か扉も開けます。作業する人が奥に入る前に、しばらく換気扇を回して空気を入れ替えておくと安全です。
商業施設や店舗のトイレでは、営業時間中にドアを開けたままにできないことがあります。その場合は、営業時間の前後に作業の時間を取るほうが確実です。換気が取れない時間に強い洗剤を使う段取りにしないでください。
- 空気が入る側と出る側の2か所を開ける
- 窓がなければドアを全開にし、その先も開ける
- 作業に入る前に、しばらく回して空気を入れ替える
- 換気が取れない時間帯には、強い洗剤の作業を入れない
くわしいご案内トイレの尿石の取り方|固さで変わる手順と、戻るまでの期間
手袋・眼・衣服の守り方
手袋は、腕まで覆う長さのゴム手袋を選びます。薄い使い捨ての手袋は、酸性の洗剤に長く触れると破れます。縁の下を拭くときに手首から液が入るので、袖口の上にかぶせてください。
眼は、ゴーグルで守ります。便器の縁の下に洗剤を当てる作業では、上を向いた面に噴きつけるので、跳ね返りが顔に来ます。眼鏡は横から入るので、覆うタイプが要ります。
衣服は、酸が付くと繊維が傷みます。作業用の上着かエプロンを着けてください。靴も、液が垂れる場所に立つので、布の靴は避けます。
作業のあとは、手袋を外す前に手袋のまま水で洗います。外してから手を洗うと、手袋の外側に付いた液を手で触ることになります。
便器や金具を傷める組み合わせ
尿石に効く酸性の洗剤は、便器の釉薬にも、金具にも当たります。相手の素材によって、避ける組み合わせがあります。
ステンレスの金具、メッキの部品、アルミの部材に酸性の洗剤が長く残ると、表面が変わります。便器の陶器も、強い濃度で長く当て続けると釉薬の層が薄くなり、白くくすんで戻らなくなります。
樹脂の部品は、洗剤の種類で変わります。研磨材の入った洗剤で擦ると細かい傷が残り、そこに次の結晶が引っかかりやすくなります。落とすつもりの作業が、付きやすい面を作ってしまいます。
どの素材でも共通する手順は1つです。当てる時間を決めて、時間が来たら水で流す。流さずに乾かすのが、いちばん素材に残ります。
| 洗剤の液性 | 相手にするもの | 一緒に使わないもの | 傷めやすい素材 |
|---|---|---|---|
| 酸性 | 尿石・水道水由来の白い付着 | 塩素系 | ステンレス・メッキ・アルミ・釉薬 |
| 塩素系 | カビ・色素の汚れ | 酸性 | 金属部品・色のある樹脂 |
| 中性 | 日常の汚れ | とくになし | ほとんどなし |
| 研磨材入り | 表面に乗った付着 | 強い酸と併用しない | 樹脂・釉薬(細かい傷が残る) |
洗剤の液性は容器の表示で確かめられます。
集合住宅と店舗で気をつける点
集合住宅では、流した洗剤が共用の配管に入ります。同じ時間に上の階でも強い洗剤を使っていると、管の中で液性の違うものが出会うことがあります。棟全体で一斉に作業する日程を組むときは、使う洗剤の液性をそろえてください。
浄化槽のある建物では、使える薬剤の種類が限られます。管理を委託している先に、使ってよい液性を確かめてください。
店舗では、営業時間中の作業になりがちです。換気のためにドアを開けたままにできる時間があるかどうかで、使える洗剤が変わります。時間が取れないなら、強い酸を使わずに落とせる範囲までにとどめて、厚く付いた場所は営業時間外に回すほうが安全です。
業務用の強い薬剤を扱うとき
業務用の薬剤は、濃度が高いぶん短い時間で効きます。そのかわり、上に書いたことがすべて強く当てはまります。現場で実際に問題になるのは、作業する人の負担と、保管です。
保管は、鍵のかかる場所で、直射日光と高温を避けます。他の液性の薬剤と同じ棚に並べないでください。取り違えが、混ざる事故のいちばん多い入口です。容器を移し替えるのもやめてください。
作業では、扱う人を決めておくと安全です。保護具の着用と換気の確保、当てる時間と流すまでの手順を紙にして、その紙のとおりに動く人が作業に入る形にします。
強い薬剤を使う回数そのものを減らす方法もあります。当社が扱う emiiR®(エミール)は、給水管の途中に入れる筒の中で水を特殊セラミックスに接触させ、尿石が硬く固着しにくい状態に変える装置です。導入後も落とす作業はなくなりませんが、すでに付いた分も少しずつ脆くなって流れる水で剥がれていくため、洗浄の間隔が延びます。そのぶん、強い薬剤を扱う回数と保管する量が減ります。
よくあるご質問
酸性洗剤と塩素系を、続けて使うのは大丈夫ですか
そのままでは危険です。あいだに水で十分に流してください。容器の中で混ぜていなくても、便器や床に残った液の上にもう一方をかけると、同じようにガスが出ます。流したあとも、においが残っているうちは次を入れないでください。
換気扇だけで足りますか
足りません。空気を出す側だけを回しても、入ってくる道がないと空気が動きません。ドアを開けて、外から空気が入る道を作ってください。窓のないトイレでは、その先の廊下の窓や扉も開けます。
ゴム手袋は、どれを選べばよいですか
腕まで覆う長さのゴム手袋を選んでください。薄い使い捨ての手袋は、酸性の洗剤に長く触れると破れます。縁の下を拭く作業では手首から液が入るので、袖口の上にかぶせます。外すときは、手袋のまま水で洗ってから外してください。
ステンレスの金具に酸性洗剤を使ってよいですか
使えますが、長く残さないでください。当てる時間を決めて、時間が来たら水で流します。流さずに乾かすと表面が変わります。メッキの部品とアルミの部材も同じです。
気分が悪くなったときは、どうすればよいですか
すぐにその場所から離れて、外の空気のある場所で休んでください。ドアは閉めずに開けたまま出ます。換気しようと入り直さないでください。ガスは床に近いところに溜まります。症状が続くなら医療機関に相談してください。
この記事に書いていないことは、直接お聞かせください。
お気軽にお問い合わせください。


