この記事の結論
給水管の赤水・赤錆対策は、管を入れ替える更新工事、管の内側を樹脂で覆う更生工事、赤錆を安定した黒錆に変えて腐食の進みを緩める延命の3つです。費用と工期がいちばん大きいのは更新で、更生は壊す範囲が小さいぶん工期が短く、延命は給水元に装置を1台付けるだけなので、作業は3時間〜半日程度で、住戸への立ち入りがありません。
漏水や一日中続く赤水が出ている管は更新か更生が先で、赤水が朝だけの段階なら、延命で更新の時期を先に延ばす判断もできます。どれが選べるかは、管の肉厚が残っているかを調べてから決めます。
給水管の赤水にどこから手を付けるか決めたい管理組合さま・オーナーさま・ビル管理のご担当者さまに向けて、3つの選択肢を費用の決まり方と工期で並べました。
3つの選択肢は、手を入れる相手が違います
更新工事が相手にするのは管そのものです。錆で細くなった断面と、この先の漏水のリスクを、新しい管に入れ替えることで断ち切ります。
更生工事が相手にするのは管の内面です。既存の管を残したまま内側を研磨し、樹脂で覆って、水が鉄に触れない状態を作ります。
延命が相手にするのは錆そのものの性質です。もろく剥がれる赤錆を、緻密で金属に密着する黒錆に変えて、腐食が深く進みにくい状態にしていきます。
赤水が出るまでに、配管の中で起きていること
鉄配管の赤錆
鉄の給水管の内側にできる赤錆は、水酸化鉄やオキシ水酸化鉄と呼ばれるもろい層です。できるときにかさが増えるため浮き上がり、水流や振動で剥がれます。
剥がれた粒が水に混じれば赤水になり、剥がれたあとの金属面はふたたび水と酸素にさらされて錆びます。この繰り返しで、管は内側から肉が薄くなっていきます。
滞留と再通水
錆が溜まるのは、水が動かない場所です。長期の空室へ向かう枝管、使われていない共用の水栓、休みが続いた事務所の系統。水が留まるあいだに、剥がれかけた錆がその場に沈みます。
そこへ水を通したときに、溜まっていたものが一度に出ます。朝いちばん、連休明け、断水明けの通水で赤い水が出るのは、この理由です。
更新工事:管を入れ替える
更新工事は、いまの管を撤去して新しい管を敷きます。断面が回復し、管の年齢がいったん戻るので、赤水と漏水の両方が解消します。
工期と費用を決めているのは、管の総延長と、その管がどこを通っているかです。露出していれば手が入りますが、壁や床の中に埋まっていれば、壊して復旧する範囲がそのまま金額になります。
専有部の管まで替える計画なら、各戸に立ち入る日程を戸数のぶん組むことになり、ここが工期の大半を占めます。
- 管の総延長と、系統の数
- 露出しているか、壁や床の中に埋まっているか
- 共用部だけか、専有部まで含めるか
- 工事のあいだの仮設給水をどうするか
- 足場・養生・仕上げの復旧の範囲
更生工事:管の内面を覆う
更生工事は、管を残したまま内面を研磨し、樹脂で覆います。壊す範囲が小さくなるので、更新より工期は短く収まります。
条件は、管の肉厚が残っていることです。錆が深く進んで薄くなった管は研磨に耐えません。更生工事を選べるかどうかは、築年数ではなく調査の結果で決まります。
覆ったあとは、樹脂の層が水と鉄のあいだに入ります。管そのものが新しくなるわけではないので、次の更新までの中継ぎという位置づけになります。
- 管の肉厚が研磨に耐えるか(抜管調査で分かる)
- ねじ継手や曲がりの多さ
- 系統ごとに水を止められる時間帯が取れるか
- 作業のための足場と、開口の位置
延命:錆の性質を変える
延命は、管にも内面にも触りません。通る水の側に装置を1台付けて、錆の育ち方を変えます。当社が扱う emiiR®(エミール)は、ステンレスの筒に粒径の違う特殊セラミックスを詰めた装置で、水の流れそのものを動力にセラミックスが絶えず流動します。
この筒を水が通ることで、もろい赤錆が、緻密で安定した黒錆(マグネタイト)へ変わっていき、腐食が進みにくくなります。水に何かを加えるわけでも、成分を取り除くわけでもありません。
給水元に1台置けば、そこから先の配管がまとめて対象になります。受水槽式なら受水槽に入る手前、直圧式なら水道メーターの二次側です。電源も配線も薬剤も要らず、消耗品がないのでランニングコストは0円です。働くのは中性からアルカリ性の水で、強酸性の水では働きません。
赤錆から黒錆へ
赤錆と黒錆は、同じ鉄の錆でも性質が逆です。赤錆はかさばってもろく、剥がれた面を新しい水にさらします。黒錆は緻密で金属に密着し、皮膜として残ります。
給水系での測定では、水中の鉄分が設置前の約1mg/Lから、1年後に約0.05mg/Lまで下がった記録があります。同じ検証でロータンクに入れた赤錆の鉄片は、1年後には黒錆の側へ変わっていました。
時間の単位が、工事とは違います
延命は、いまある錆を取り去る工事ではありません。付き方と育ち方を変えて、進みかたを緩める方向です。変化は月の単位で進み、鉄分の測定例も下がりきるまでに1年かかっています。
そのため、漏水が出ている管や、一日中赤水が止まらない管には向きません。その段階は更新か更生が先で、延命はそのあと、新しくした内面をきれいなまま保つ側で働きます。
3つを同じ表で比べる
3つを、工期・水が止まる範囲・住戸への立ち入りまで同じ表に並べます。
| 見るところ | 更新工事 | 更生工事 | 延命(emiiR®) |
|---|---|---|---|
| 手を入れる相手 | 管そのもの | 管の内面 | 錆の性質 |
| いま出ている赤水 | 入れ替えで収まる | 覆って収まる | 月の単位で減っていく |
| これから先の腐食 | 新しい管の年齢から始まる | 樹脂の層が持つあいだ | 黒錆に変えて進みを緩める |
| 住戸への立ち入り | 専有部を含めるなら必要 | 系統によって必要 | 不要 |
| 工期 | 総延長と、壊して復旧する範囲で決まる | 研磨と塗布の区間の長さで決まる | 3時間〜半日程度(給水元の1か所) |
| 水が止まる範囲 | 工事する系統ごと、工事の日ごと | 施工する系統ごと(研磨と塗布のあいだ) | 受水槽のある建物では各戸は止まらない。直結給水は1〜2時間程度 |
| 費用の決まり方 | 総延長・復旧範囲・仮設で建物ごとに変わる | 区間の長さと継手の多さで変わる | 給水元の口径で型式と金額が決まる |
| 終わったあとに残るもの | 新しい管 | 内面の樹脂層 | 10年保証と、点検の要らない装置 |
どれを選ぶかは、4つで決まります
順番に埋めていくと、選択肢は自然に絞られます。
- 赤水の出方(朝だけか、一日中か、1戸か複数戸か)
- 管の残り(研磨に耐える肉厚があるか。抜管調査と内視鏡で分かる)
- 資金の見通し(修繕積立金がそろう時期)
- 入居の状況(各戸に立ち入れるか、空室のタイミングがあるか)
最初に埋めるのは2つ目です
管の残りが分からないうちは、更生工事が選べるかどうかも決まりません。調査の結果が出てから、対象の系統と範囲をそろえて3本の見積もりを並べます。
更新の時期が数年先に見えている建物では、問いが変わります。替えるかどうかではなく、その数年をいまの管でどう持たせるか、という問いになります。そこで役に立つのが延命です。
よくあるご質問
更生工事と延命は、どちらを先にやるものですか
管の肉厚が残っていて、いま赤水が強く出ているなら更生が先です。覆ったあとの内面をきれいに保つ側で延命が働きます。赤水が朝だけで、更新の時期を後ろへずらしたい段階なら、延命から始める判断になります。
emiiR®の保証は何年ですか
設置後10年の製品保証です。導入から10年後に検査を受けると、さらに10年延長され、最長20年になります。保証の窓口は当社が一貫してお受けします。
飲み水の配管に付けても大丈夫ですか
大丈夫です。JHW型・JEH-1〜11型・SRD-6型などの給水系統向けの型式は、日本水道協会の認証(Z-372)で、水圧に耐えることと、水に有害な物質が溶け出さないことが確かめられています。水に何かを注入する装置でも、成分を取り除く浄水器でもありません。
工事のあいだ、住戸の水は止まりますか
受水槽のある建物では、各戸の水は止まりません。装置は受水槽に入る手前に付けるので、作業中も槽に貯まっている水を使えます。直結給水の建物では、給水元の1か所に装置を割り込ませる1〜2時間程度、水を止めます。
管の中を調べるのは、どこに頼めばよいですか
抜管調査や内視鏡による管内の確認は、指定給水装置工事事業者や、管理会社さまが使っている設備会社が受けます。受水槽の清掃を頼んでいる会社にあわせて聞くのが早いです。給水方式と口径が分かれば、延命の型式はすぐに決まります。
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