この記事の結論
給水管の劣化は、抜管調査(管を1本切り取って断面を見る)、内視鏡、水質検査、流量・水圧と漏水の履歴の4つで調べ、それぞれ分かることが違います。残っている肉厚が分かるのは抜管調査だけで、更生工事が選べるかどうかはこの結果で決まります。
内視鏡は、管を切らずに広い範囲の錆こぶや断面の狭まりを見比べるのに向き、水質検査は赤水の経過を追うのに使います。調査を先に入れておくと、更新・更生・延命の見積もりを同じ前提で比べられます。
更新か更生かを決める前に、何をどこまで調べればよいか知りたい管理組合の理事さま・オーナーさま・設備のご担当者さまに向けて、調査の使い分けを整理しました。
調べ方は4つ。分かることが違います
どれか1つで全部が分かるものではありません。決めたいことに合わせて選びます。
| 調べ方 | 分かること | 管を切るか | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 抜管調査 | 残っている肉厚、内面の凹凸、材質 | 切る | 更生工事が選べるかを決めるとき |
| 内視鏡 | 内面の凹凸、錆こぶ、断面の狭まり | 切らない | 広い範囲を見比べるとき |
| 水質検査(鉄・濁度・色度) | 水に出ている鉄の量 | 切らない | 苦情の裏づけと、経過を追うとき |
| 流量・水圧の測定と漏水の履歴 | 断面が狭くなっている系統の見当 | 切らない | どの系統から手を付けるか決めるとき |
肉厚が分かると、選択肢が確定します
更生工事は、内面を研磨してから樹脂で覆う工事です。削る分の肉厚が残っていなければ選べません。更生が候補になるかどうかは築年数ではなく、抜管調査の結果で決まります。
肉厚が薄くなった系統が見つかれば、その系統は更新が先になります。反対に、肉厚は十分に残っていて水に鉄が出ているだけなら、いま急いで管を替える段階ではありません。
いつ調べるか
長期修繕計画の中では、更新の検討に入る前の年に調査の行を置きます。調査の費用は工事に比べて小さく、ここが入っていないと、次の見直しでも同じ議論に戻ります。
苦情が出たときは、切り分けと同時に進めます。どの住戸か、朝だけか、複数戸かを記録してから調査の範囲を決めると、無駄な本数を切らずに済みます。
大規模修繕の足場がかかる年は、露出配管や屋上まわりを一緒に見られます。足場を使う調査があるなら、その年に寄せたほうが安く済みます。
くわしいご案内給水管の赤水・赤錆対策|更新・更生・延命の3つを費用と工期で比べる
どこに頼むか
抜管調査と内視鏡は、給水装置の工事を手がける水道工事会社が受けます。管理会社さまが使っている設備会社に窓口を作ってもらう形が多いです。水の分析は、登録検査機関か分析会社に出します。
見積もりを取るときは、次の項目をそろえて示してもらってください。会社ごとに含む範囲が違うので、そろえないと金額の比較になりません。
- 切る本数と箇所(どの系統の、どこを切るか)
- 足場・開口・復旧が含まれるか
- 断水を伴う作業があるか、その時間帯
- 報告書の形(写真、肉厚の数値、系統ごとの所見)
- 水の分析を含むか。含むなら項目と採水の箇所
結果の読み方
見るのは1本の数字ではなく、系統ごとの差です。同じ建物でも、使われ方の違う系統で結果が分かれます。差が出た理由まで報告書に書いてもらうと、次の判断に使えます。
水の鉄分は、採水の条件で値が動きます。朝いちばんの水と、しばらく流したあとの水では別の数字になります。どちらを測ったかが書かれていない数値は、比べる相手になりません。
調査の結果で、選択肢がどう変わるか
| 調査で分かったこと | そのあとの選択肢 |
|---|---|
| 肉厚は十分に残り、水に鉄が出ている | 錆の性質に働く延命で、更新の時期を後ろにずらす。いまの数値を導入前の記録にする |
| 肉厚は減っているが、研磨に耐える | 更生工事が候補になる。更新の時期と資金の見通しを並べて決める |
| 肉厚が薄い系統がある | その系統から更新。ほかの系統は次の周期へ回す |
| 漏水の履歴が同じ系統に集まっている | 系統に順番を付ける。応急と恒久を分けて予算を組む |
調査の数値は、記録として残ってから役に立つ
調査は工事をするために取るものだと思われがちですが、いちばん役に立つのは、記録として残ったあとです。理事が交代しても、数値と写真が残っていれば議論を一からやり直さずに済みます。
当社が扱う emiiR®(エミール)を導入する場合も、導入前の鉄分と内面の写真があるかどうかで、あとの報告の形が変わります。設置は給水元の1か所で、作業は3時間〜半日程度、水を止めるのは1〜2時間程度、住戸への立ち入りはありません。
よくあるご質問
抜管調査はいくらかかりますか
建物と範囲で変わるため、水道工事会社から見積もりを取って確かめます。切る本数と箇所、足場と復旧の範囲、報告書の形をそろえて頼めば、会社ごとの差が読めます。
内視鏡だけでも足りますか
肉厚まで知りたいなら足りません。内視鏡で分かるのは内面の凹凸や錆こぶの育ち方までで、更生工事が選べるかを決めるには抜管調査が要ります。広い範囲の見比べに内視鏡、判断に抜管という使い分けです。
何系統を調べればよいですか
使われ方の違う系統を選びます。苦情が出ている系統、空室が続いた系統、いちばん上の階の系統のように、条件が違うところを組み合わせると差が読めます。全系統を切る必要はありません。
工事を頼まずに調査だけ頼めますか
頼めます。調査だけを受ける会社もあるので、見積もりを依頼する段階で、調査のみの発注ができるかを聞いてください。調査と工事を別に発注すると、結果の読み方に立場が入りにくくなります。
水の検査は何項目にすればよいですか
赤水の経過を追うなら、鉄、濁度、色度が基本です。採水の場所と時刻、流す前か後かを毎回同じにしてください。項目を増やすより、条件をそろえるほうが比べやすくなります。
この記事に書いていないことは、直接お聞かせください。
お気軽にお問い合わせください。


