この記事の結論
赤錆(水酸化鉄など)はかさばってもろく、剥がれて赤水になり、剥がれた面から次の腐食が始まります。黒錆(マグネタイト)は緻密で金属に密着し、水に溶けないので、覆われた面はそれ以上錆びにくくなります。
常温の給水管の中では、放っておくと赤錆の側が増えていきます。配管の中で赤錆を黒錆に変えていければ腐食の進みが緩み、更新の時期を先に延ばす判断ができます。
調査報告書や工事の見積もりに出てくる赤錆・黒錆という言葉を、管理組合の理事さま・オーナーさま・設備のご担当者さまが判断に使える形で並べました。
違うのは、見た目と水への出方と進み方です
見た目が違います。赤錆は赤茶色で粉のように崩れ、黒錆は黒から青みのある灰色で、平らな膜のように見えます。
水への出方が違います。赤錆は剥がれた粒のまま水に混じって流れ、赤水になります。黒錆は水に溶けず、できた場所に残ります。
進み方が違います。赤錆はできるときにかさが増えるので、自分の厚みと水流で浮き上がって剥がれ、剥がれた金属面がまた錆びます。黒錆は赤錆より体積が小さい緻密な結晶で、金属に密着したまま水と鉄のあいだに入ります。
| 見るところ | 赤錆 | 黒錆 |
|---|---|---|
| 色と手ざわり | 赤茶色。粉のように崩れる | 黒から灰色。平らで硬い |
| 水への出方 | 剥がれて、粒のまま流れる | 水に溶けず、その場に残る |
| 体積 | もとの鉄より増える | 赤錆より小さく、緻密 |
| 金属への付き方 | 浮き上がって剥がれる | 密着して残る |
| 剥がれたあと | むき出しの面がまた錆びる | 覆われた面は錆びにくい |
| 水の色 | 赤水として出る | 水の色には出ない |
赤錆ができる条件
ご存じのとおり、鉄が水と酸素の両方に触れていると赤錆ができ、給水管の中はこの条件がそろっています。
できやすさを分けるのは、水の動き方です。水が止まっている場所では、溶け出した鉄がその場に沈み、錆こぶとして積もります。長く空いている住戸へ向かう枝管、使われていない共用の水栓、閉じたままの系統。そこが赤水のもとになります。
もう一つは、鉄がむき出しになっている面の広さです。亜鉛めっき鋼管は内面の全体が、内面を樹脂で覆ったライニング鋼管はねじを切った継手が、鉄のまま水に触れています。
くわしいご案内給水管の赤水・赤錆対策|更新・更生・延命の3つを費用と工期で比べる
黒錆ができる条件
黒錆(マグネタイト)ができるのは、鉄の表面が酸素の少ない側に傾いたときです。同じ鉄でも、酸素がたっぷり届く面では赤錆に、届きにくい面では黒錆に育ちます。
ボイラーのように酸素の少ない高温水にさらされる管の内面で黒い皮膜ができることは、古くから知られています。常温の給水管の中は、放っておけば赤錆の側に傾いています。
黒錆は密着して残るため、いったんできると水と鉄のあいだの仕切りになります。腐食が深いところまで進みにくくなるのは、この仕切りが働くからです。
配管の内側では、どちらが増えるのか
常温の給水管では、赤錆の側が増えます。水に空気が溶けていて、剥がれた面がまた新しい水と酸素に出会うからです。
赤水のご相談で見ているのは、この繰り返しがどこまで進んだかです。粒が水に出てくる段階なら、内面はすでに凹凸になっています。断面が狭くなれば水の出が落ち、肉厚が薄くなれば漏水につながります。
- 朝いちばんだけ赤い:夜のあいだに沈んだ粒が、最初の通水で出ている
- 日中も赤い:管の広い範囲で、剥がれ続けている
- 水の出が落ちた:錆こぶで断面が狭くなっている
- 漏水が出た:肉厚が薄くなった箇所がある
性質を変えるという考え方
錆を取り去るのではなく、これから育つ錆を黒錆の側へ変えていくという考え方があります。管を入れ替える更新工事、内面を樹脂で覆う更生工事に対して、延命と呼ばれる3つめの道です。
当社が扱う emiiR®(エミール)は、ステンレスの筒に粒径の違う特殊セラミックスを詰めた装置です。通る水の流れだけでセラミックスが動き、その筒を通った水が流れる配管の中で、もろい赤錆が緻密な黒錆へ変わっていきます。水に薬剤を加える装置ではなく、成分を取り除く浄水器でもありません。
働くのは中性からアルカリ性の水で、強酸性の水では働きません。育ち方に手を入れる方法なので、変化が出るまでに月の単位の時間がかかります。いま漏水している管や、終日にわたって赤水が続く管では、先に更生か更新を選ぶことになります。
報告書で言葉に出会ったとき
調査報告書では、赤錆が水酸化物やオキシ水酸化物、黒錆がマグネタイトという名前で出てきます。呼び名が違っても見ているものは同じです。報告書で確かめたいのは、内面の凹凸がどこまで進んでいるかと、肉厚がどれだけ残っているかの2つです。
この2つが分かると、更生工事が選べるかどうかが決まります。錆の性質に働く延命は、どちらの段階でも置ける手なので、判断の順番としては後ろに回して構いません。
よくあるご質問
黒錆は体に害があるのですか
水の安全は、黒錆かどうかではなく、水質基準に照らして判断します。黒錆は水に溶けず、水の色にも出ません。水の色や濁りが気になるときは、管理会社さまか所轄の水道局に連絡して、必要な水質検査を受けてください。
いまある赤錆は、取り除けないのですか
取り除けます。管を入れ替える更新工事と、内面を研磨して樹脂で覆う更生工事です。錆の性質に働く延命は取り除く工事ではなく、これから育つ錆の側に働きます。
黒錆に変わるまで、どれくらいかかりますか
月の単位で進みます。給水系の測定例では、水中の鉄分が設置前の約1mg/Lから1年後に約0.05mg/Lまで下がりました。何をどう測るかは、効果の測り方の記事に分けて書いています。
樹脂管やステンレス鋼管の建物でも関係がありますか
赤錆の話は、鉄の管のものです。樹脂管やステンレス鋼管が主体の建物で赤水が出るときは、受水槽の中や、改修されずに残った鉄系の系統を先に疑います。
赤錆を黒錆に変えれば、配管は長持ちしますか
腐食の進みが緩むので、更新の時期を後ろにずらす判断の材料になります。何年延びるかは管の状態と水質で変わるため、鉄分の測定値と、調査で分かった肉厚の推移で確かめます。
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