熱交換器のスケールで電気代はどれだけ増えるか|厚みと損失の関係

熱交換器のスケールで電気代はどれだけ増えるか|厚みと損失の関係

この記事の結論

伝熱面にスケールが0.5mm前後付くだけで、消費電力が15〜60%規模で増えるという測定例があります。スケールの熱の通しにくさは銅の数百分の1から千分の1ほどで、薄い層でも断熱材のように働くためです。

幅が広いのは、測った設備と条件が違うためです。自分の設備では、冷却水の出入口の温度差と熱源機の消費電力を清掃の前後で比べると、影響の大きさが分かります。

空調の原単位を下げる案を求められた省エネ担当・エネルギー管理員の方に向けて、伝熱面のスケールが電気代にどう乗ってくるのかを整理しました。

目次

伝熱面は、薄い層で止まります

省エネの検討で最初に出てくるのは、照明、電力の契約、機器の更新、計測と制御です。どれも有効ですが、空調の熱をやり取りしている面そのものは、この一覧に入ってきません。

熱交換器は、水と冷媒のあいだで熱を渡す設備です。渡す面に何かが挟まると、そのぶん熱が伝わらなくなります。挟まるのがスケールです。

挟まる厚みは、目で見て分かるほどではありません。1mmに届かない層でも、電気の側に出てきます。

厚みごとの損失の幅

公表されている測定例を並べると、数字は1つに決まりません。条件が違うためです。

まとめると、0.5mm前後の薄い層で15〜60%規模のロスが生じ得る、という幅で押さえるのが実態に近いところです。1つの数字を断定的に出すと、自分の設備に当てはめたときに合いません。

層の厚み 報告されている消費電力の増え方
0.4mm 約15%
0.5mm 約60%
0.8mm 約30%
1.5mm 約5.2%

熱伝導率で見ると何が起きているか

幅が広くても、方向がはっきりしている理由は材料の物性にあります。熱の通りやすさを比べると、スケールは金属と桁が違います。

銅が約400 W/m·K、炭素鋼が約50 W/m·K。これに対して炭酸カルシウムスケールは約0.6〜2.0 W/m·K、シリカスケールは約0.3 W/m·K です。銅管の内側にシリカの層が0.5mm付くと、熱の通り道としては1,000倍以上通しにくい材料が挟まったことになります。

だから薄くても効きます。逆に言えば、厚くなるほど比例して悪くなるのではなく、最初の薄い層でいちばん大きく落ちます。ここが「1mmも付いていないから大丈夫」という感覚と合わないところです。

冷却水の温度が動くと、熱源機の効率が動く

伝熱面に層が挟まると、冷却塔で捨てられる熱が減ります。すると冷却水の温度が上がり、熱源機は同じ冷房をするためによけいに働きます。電気の側に出てくるのは、この経路です。

環境省の「温室効果ガス排出削減等指針」の対策資料「密閉式冷却塔熱交換器のスケール除去」には、スケールを除去して冷却水温度が1℃下がり、熱源機のCOPが7.3から7.7に上がると想定した試算例が載っています。この条件で、冷凍機の電力消費量は約5%下がる計算です。

自分の設備で見るなら、冷却水の出入口温度と外気の湿球温度を並べます。設計の想定より温度差が詰まっていたら、伝熱面か充填材のどちらかが効いています。

出典:環境省「温室効果ガス排出削減等指針」対策資料「密閉式冷却塔熱交換器のスケール除去」

いま何mm付いているかを知る手

直接測るなら、点検で開けたときに層を剥がして厚みを見ます。開放式の冷却塔なら充填材とルーバー、下部水槽で状態が分かります。熱交換器はプレートを開けるか、点検口から内視鏡で見る形になります。

開けずに見当を付ける手もあります。冷却水の出入口温度差、熱源機の消費電力の推移、清掃の直後と1シーズン後の差を並べると、層が効いているかどうかが読めます。

あわせて、層の成分も確かめてください。酸で溶ける層なら酸洗浄が効きますが、シリカが混ざっていると溶けません。ここを確かめずに洗浄を発注すると、費用が空振りします。

  • 点検時に層を剥がして厚みと硬さを見る
  • 冷却水の出入口温度差と、外気の湿球温度を並べる
  • 熱源機の消費電力を、清掃の前後で比べる
  • 剥がした層を酸に入れて、溶けるかどうかを見る

伝熱面をきれいに保つという選び方

洗浄は、そのときの状態を戻す仕事です。翌日から同じ条件で析出が始まるので、1シーズンで元に戻ります。効率の側から見ると、洗浄の直後がいちばん良く、そこから下がり続ける形になります。

下がり方を緩くするには、伝熱面にスケールが固着しにくい水にしておく必要があります。当社が扱う emiiR®(エミール)は、電源も薬剤も使わずに、水が特殊セラミックスの間を流れる力でこれを行う装置です。成分は水に残したまま、伝熱面に張り付く前に細かい粒のまま運ばれるようにします。

100RTクラスの冷却塔1台の試算では、導入後のエネルギーコストは5〜15%下がると推定されています。同じ試算で、薬品費とブロー水関連の費用は合わせて約86%減です。投資回収は、個別の試算の前の目安として約2〜3年です。

電気代の側で、年間いくらになるか

自分の建物の金額にするには、3つの数字が要ります。熱源機の年間消費電力量、電気の単価、そして伝熱面の状態です。前の2つは電気の請求書と計測の記録から拾えます。

熱源機の年間消費電力量に単価をかけると、いま払っている額が出ます。そこに、伝熱面をきれいに保った場合の幅をかけると、下がりうる範囲が出ます。厚みの見当が付いていれば、幅の中でどのあたりかも絞れます。

当社でも試算をお出しできます。要るのは冷却塔の能力(RT)、循環水量、年間運転時間と、熱源機の年間消費電力量の4つです。お見積もりは無料で、製品代と工事代を分けて明らかにし、お見積もりで提出した以上の金額はいただきません。

よくあるご質問

0.5mmで60%も増えるのですか

そう報告している測定例があります。一方で同じくらいの厚みで15%という例も、1.5mmで5.2%という例もあります。測った設備と条件が違うためです。自分の設備に当てはめるときは、幅として扱ってください。

厚くなるほど悪くなりますか

悪くなりますが、比例はしません。熱の通りにくさが金属と桁で違うため、最初の薄い層でいちばん大きく落ちます。そのあとは厚みが増えても、落ち方はゆるやかになります。

洗浄すれば効率は戻りますか

戻ります。ただし戻るのは洗浄した時点で、翌日から同じ条件で析出が始まります。環境省の対策資料には、スケールの除去で冷却水温度が1℃下がり、熱源機のCOPが7.3から7.7に上がると想定した試算例があります。

電気代の効果だけで判断できますか

電気代だけでは判断しにくいのが実情です。外気温と稼働率が年ごとに動くため、前年比では切り分けられません。冷却水の出入口温度差と伝熱面の状態を一緒に見ると、判断の材料になります。

空調を止めずに工事できますか

冷却水の戻り配管にバイパスで入れるので、建物や空調を長時間止める必要はありません。密閉式の冷却塔では、循環水の本体ではなく個々の散水ポンプラインに入れます。配管の写真と図面を拝見して範囲を決めます。

アリージェンス合同会社 代表 沼倉孝秀

沼倉 孝秀(ぬまくら たかひで)

アリージェンス合同会社 CEO。UFB DUAL®・emiiR®(エミール)・α-HT® の正規一次販売店として、製品の選定から設置、設置後の窓口までを担当しています。

アリージェンス合同会社

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