この記事の結論
電気代が去年より上がったときは、まず前年同月と比べて、単価が上がった分と、使用電力量が増えた分に分けます。
単価の側の主な原因は燃料費調整単価・再エネ賦課金・契約の単価改定、量の側の主な原因は気温・使い方の変化・機器の効率の低下です。
量が増えていて、気温と使い方の変化では説明しきれないなら、長く動く空調や冷凍機の効率が落ちていないかを、消費電力と温度を記録して確かめます。
経営者や本部から「電気代が去年より高いのはなぜか」と聞かれ、説明の材料を集めている経理・総務・設備のご担当者さまに向けて、請求書から原因を切り分ける手順をまとめます。
単価が上がったのか、量が増えたのか
電力量に比例する部分の増加は、単価の変化と使用電力量の変化の組み合わせです。前年同月との差は、次の2つに分けられます。
- 量による差 =(今年の使用電力量 − 去年の使用電力量)× 去年の1kWhあたりの単価
- 単価による差 =(今年の1kWhあたりの単価 − 去年の単価)× 今年の使用電力量
単価には3つを足して使う
ここでいう単価は、電力量料金の単価に、燃料費調整単価と再エネ賦課金の単価を足したものです。2つの差を足すと、電力量に比例する部分の増加額にぴったり一致します。基本料金は別に並べます。この分け方をしておくと、施設の側で打てる手がある増加なのかを、最初に判断できます。
請求書で確かめる項目(単価・使用量・基本料金・燃料費調整)
前年同月の請求書と今月の請求書を並べ、次の項目を拾います。
年度の切り替わりで上がる分
再エネ賦課金は、2025年度の1kWhあたり3.98円から、2026年度(2026年5月分から)は4.18円に上がりました(経済産業省)。月に5万kWh使う施設では、この差だけで月1万円の増加です。燃料費調整単価も、燃料価格の動きを受けて毎月変わります。どちらも契約を変えていなくても動く単価です。
| 確かめる項目 | 見ること |
|---|---|
| 使用電力量(kWh) | 前年同月との増減。検針の日数が違えば1日あたりに直す |
| 電力量料金の単価 | 契約の単価改定、夏季とその他季の違い |
| 燃料費調整単価 | プラスかマイナスか、前年との差 |
| 再エネ賦課金の単価 | 年度の切り替わり(5月分から新しい単価) |
| 契約電力と最大需要電力 | 契約電力が上がっていないか |
| 力率 | 85%を下回った月がないか |
気温で説明がつく分
空調や冷凍機の使用電力量は、外気温で大きく変わります。去年より暑い夏や寒い冬であれば、同じ設備・同じ使い方でも使用電力量は増えます。気象庁の過去の気象データで、施設に近い地点の月平均気温や、最高気温が30℃以上の日数を前年と比べると、気温でどこまで説明がつくかの見当が付きます。
反対に、気温がほぼ同じなのに空調の多い月の使用電力量が増えている、あるいは気温が低かったのに使用電力量が減っていない場合は、気温以外の原因を探します。
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機器の劣化で増える分
同じ気温・同じ設定で運転していても、機器の状態で使用電力量は増えます。室外機や凝縮器の熱交換器にほこりや油汚れが付いている、冷媒が不足している、冷媒配管や熱交換器の内側に冷凍機油の膜が付いて熱が伝わりにくくなっている、といった状態では、設定温度に届くまで圧縮機が長く回ります。
空調の消費電力は、一般にその約90%が圧縮機によるものとされます。圧縮機の運転が長くなれば、それがそのまま使用電力量の増加になります。熱交換器の外側の汚れは清掃で戻せますが、冷媒配管の内側は清掃では手が届きません。
使い方が変わった分
営業時間や稼働日の延長、設備の増設、テナントの入れ替え、設定温度の変更、冷蔵・冷凍の在庫量の増加など、施設の使い方が変われば使用電力量は増えます。多くは現場に聞けば分かることなので、切り分けの前に、この1年の変化を書き出しておきます。設備を増やした場合は、最大需要電力が上がって基本料金が増えていないかもあわせて見ます。
切り分けの手順
ここまでの材料を、次の順に当てはめます。
- 前年同月の請求書を並べ、使用電力量・各単価・基本料金を表にする
- 量による差と、単価による差に分ける
- 単価による差は、燃料費調整・再エネ賦課金・契約の単価改定のどれによるかを特定する
- 量による差から、気温の差と使い方の変化で説明できる分を差し引く
- 残った分があれば、設備の効率の低下を疑う
施設の側で手を打てるのは、量の側です
単価による差は、施設の中では変えられません。打てる手は、電力の契約の見直しか、使用電力量を減らして単価を掛けられる量を小さくすることです。量による差のうち、気温と使い方で説明できない分が、設備に手を入れる余地のある分になります。
機器を疑うときに測ること
設備の効率が落ちているかは、請求書の総量だけでは分かりません。対象の空調や冷凍機の系統ごとに、消費電力と温度を同時に記録します。分電盤の電線にクランプを付けて電流ロガーで消費電力を取り、室外機の吸込口で外気温を、室内機の吹出口と吸込口で温度を記録します。
外気温の近い日どうしで消費電力を比べると、気温の影響を外して機器の状態を見られます。清掃のあとで下がれば外側の汚れ、下がらなければ冷媒の量や配管の内側を疑います。当社が扱う α-HT® は、冷媒配管の液管に接続して冷媒と冷凍機油を攪拌し、油膜ができにくい状態をつくる装置で、導入の前後もこの記録の取り方で比べます。
よくあるご質問
電力会社を変えていないのに、単価が上がるのはなぜですか
燃料費調整単価と再エネ賦課金の単価は、契約を変えなくても変わるためです。燃料費調整単価は燃料価格の動きを受けて毎月、再エネ賦課金の単価は年度ごとに国が決めて5月分から切り替わります。
検針の日数が月によって違います。どう比べればよいですか
使用電力量を検針の日数で割り、1日あたりの量で比べます。単価は日数の影響を受けないので、そのまま比べられます。
契約電力が上がっていました。原因はどう探しますか
30分ごとの記録を電力会社の会員サイトなどで見られる場合は、最大需要電力が出た日時を確かめ、その時間に何が同時に動いていたかを現場に聞きます。実量制では、その月から12か月間はその値で基本料金が計算されます。
気温の影響を差し引く、簡単な方法はありますか
月の合計どうしで補正するより、外気温の近い日や週どうしで比べるほうが扱いやすい方法です。請求書の単位で見るなら、月平均気温と最高気温30℃以上の日数が近い年の同じ月と比べます。
機器の効率が落ちているか、調べてもらえますか
型式・台数・1日の稼働時間と請求書の単価をいただければ、無料シミュレーションで削減金額を算出します。実機での計測は、一部の設備に設置する限定導入(有償)の段階で、計測器を付けて行います。
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