この記事の結論
高圧の基本料金は、力率が85%を上回ると上回る1%ごとに1%割り引かれ、下回ると1%ごとに1%割り増しされるため、力率を上げると基本料金が下がります。力率100%なら割引は15%です。
力率はモーターなどがつくる無効電力で下がり、受電設備の進相コンデンサの追加や更新で上がります。
力率の改善は基本料金だけに効く手で、使用電力量を減らす機器の効率改善とは別の手です。効く項目が違うので、両方を別々に確かめて順番を決めます。
請求書の力率の欄を見て、85%を下回る月がある、あるいは100%に届いていないという施設の設備・経理のご担当者さまに向けて、力率が基本料金にどう効くのか、何をすれば上がるのかを整理します。
力率とは何か
力率は、電力会社から届いた電力のうち、実際に仕事に使われた電力の割合です。モーターのように電磁石を使う機器は、磁界をつくるための電流を行き来させます。この電流は仕事をしない電力(無効電力)として配線を流れ、その分だけ仕事をする電力(有効電力)の割合が下がります。
電力会社から見ると、力率の低い施設には、仕事に使われない電流の分まで設備を用意して送ることになります。そのため高圧の料金では、力率の良し悪しを基本料金の割引と割増で反映しています。
なぜ基本料金に効くのか(85%を境にした割引と割増)
高圧の基本料金は「基本料金単価 × 契約電力 × 力率による割引・割増」で計算します。力率が85%を上回ると上回る1%につき基本料金を1%割り引き、85%を下回ると下回る1%につき1%割り増しします。係数にすると次のとおりです。
金額にすると
力率85%のときの基本料金が月50万円の施設なら、力率を95%に保つと月5万円、年60万円の差になります。力率は月ごとに決まるので、割引も月ごとに付きます。決め方の例として、中部電力ミライズの高圧の料金では、昼間時間帯(8時〜22時)の有効電力量と無効電力量から各月の力率を決めています。
| 月の力率 | 基本料金に掛かる係数 | 力率85%のときとの差 |
|---|---|---|
| 100% | 0.85 | 15%安い |
| 95% | 0.90 | 10%安い |
| 90% | 0.95 | 5%安い |
| 85% | 1.00 | 基準 |
| 80% | 1.05 | 5%高い |
出典:関西電力 法人向けソリューションサイト「高圧の基本料金はどのように決まる?」、中部電力ミライズ 法人のお客さま向けの料金の計算方法のページ
力率が下がる原因(モーター負荷・古いコンデンサ)
力率を下げる主な原因は、誘導電動機(モーター)を使う設備です。空調や冷凍機の圧縮機、送風機、ポンプ、工場の空気圧縮機やコンベヤーがこれに当たります。モーターは、定格より軽い負荷で回っているときに力率が下がる性質があります。
高圧の施設の多くは、受電設備(キュービクル)に進相コンデンサを入れて、この無効電力を打ち消しています。モーターを使う設備を増やしたのにコンデンサが以前のままだと打ち消しが足りなくなり、コンデンサが劣化して容量が落ちた場合も力率は下がります。
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測り方
まず請求書か電力会社の明細で、月ごとの力率を12か月分並べます。季節で上下しているなら、その季節に多く動く設備が原因の候補です。
設備ごとに原因を探すときは、受電設備の力率計の値を時間帯ごとに記録するか、電気主任技術者に依頼して、系統ごとに有効電力と無効電力を測ります。年次点検の記録に、進相コンデンサの容量や外観の点検結果が残っていることもあります。
改善の手(進相コンデンサ・負荷の見直し)
力率を上げる手は、無効電力を打ち消す側と、無効電力を出す側の2つに分かれます。
- 進相コンデンサを追加する:増えたモーター負荷に合わせて容量を足す
- 劣化したコンデンサを更新する:容量が落ちたもの、外観に膨らみや漏れがあるものを替える
- 自動で入り切りする:負荷の変動が大きい施設では、力率に応じてコンデンサを入り切りする装置を使う
- 負荷を見直す:軽い負荷のまま回り続けているモーターの運転を見直す
コンデンサの入れすぎにも気を付ける
負荷の軽い時間帯にコンデンサが入ったままになると、力率が進み側に振れ、受電点の電圧が上がることがあります。コンデンサの工事は受電設備の工事になるので、電気主任技術者と電気工事の会社に相談して容量と入り切りの方法を決めます。
機器の効率とは別の話であること
力率の改善は、基本料金に掛かる係数を変える手です。機器が仕事に使う電力はそのままなので、使用電力量はほとんど変わらず、電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金は下がりません。
反対に、空調や冷凍機の効率を上げる手は、同じ仕事に要る電力量を減らす手です。当社が扱う α-HT® は、冷媒配管に接続して冷媒と冷凍機油を攪拌し、熱交換の効率を高めて圧縮機の稼働を減らす装置で、効くのは使用電力量の側です。力率への影響は当社では測っていないため、α-HT® を力率の改善策としてはご案内していません。力率は受電設備のコンデンサで、使用電力量は機器の効率で、と分けて考えると、どちらの効果かが混ざりません。
どちらを先にやるか
力率が85%を下回る月があるなら、割増を払っている状態です。コンデンサの点検と追加が先で、効果は翌月の請求書の力率の欄で確かめられます。
力率がすでに95%から100%近くにあるなら、基本料金の側に残っている割引は数%です。そこから先は、使用電力量をどれだけ減らせるかのほうが金額の差は大きくなります。24時間動く冷凍・冷蔵設備や、長時間運転の空調を持つ施設は、機器の効率の見直しに進みます。
よくあるご質問
力率が100%を超えると、さらに割引になりますか
なりません。割引は力率100%のときの15%が上限です。コンデンサを入れすぎて進み側に振れると、電圧が上がるなど設備の側に不都合が出ます。
力率は毎月変わりますか
はい、月ごとに決まります。季節によって動く設備の割合が変わると力率も変わるため、1か月だけでなく12か月分を並べて見ます。
力率を上げると、電気の使用量も減りますか
ほとんど変わりません。力率の改善は、仕事をしない電流を受電設備の中で打ち消すもので、機器が仕事に使う電力はそのままです。変わるのは基本料金の割引・割増の係数です。
どれくらい下がるかを、手早く知る方法はありますか
いまの基本料金に、上げられる力率のポイント数(%)を掛けると、月あたりの差のおおよそが出ます。たとえば85%から92%に上げるなら、基本料金の7%です。
力率の改善と、空調の省エネ装置は一緒に検討できますか
できます。効く料金の項目が違うので、力率は請求書の力率の欄、省エネ装置は対象機器の消費電力と、確かめる数字を分けておけば、どちらの効果かが混ざりません。
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