水の中で起きることは、泡の大きさと数で説明がつきます。汚れが離れやすくなること、付きにくくなることまでが、物理から言える範囲です。
配管が新品に戻る、といったことは起きません。入れる前に、ご自身の物件で何を記録するか決めておくと、効いたかどうかを自分で確かめられます。
ナノバブルという言葉を見て、賃貸物件に入れるかどうか迷っているオーナーさま向けに、物理として言える範囲と、言えない範囲を分けて整理しました。
水に何が起きて、何が起きないのか
ナノバブルという言葉は、いろいろな製品に使われています。同じ言葉で、仕組みも効く範囲も違うものが並んでいるので、怪しく見えるのは当然です。
見分ける手がかりは2つあります。泡の大きさを測った数字が示されているか。そして、水圧がどうなるかが書かれているか。この2つが書かれていない説明は、比べることができません。
この記事では、物件に入れる設備として、どこまでが物理で説明できるかを順に見ます。肌や髪、体の調子の話は扱いません。設備の話に絞ります。
物理として起きていること
水の中の泡は、直径で分類されています。国際規格 ISO 20480-1 では、直径1μm未満の泡をウルトラファインバブルと呼びます。ナノバブルという呼び名は、おおむねこの範囲を指して使われています。
泡の大きさと数
元栓に取り付ける設備の場合、水道の水圧だけを使って、水にもともと溶け込んでいる空気を微細化します。生成される泡の中心粒径は約150〜200nmで、1μm未満という分類の中に入ります。
泡の個数をカタログで比べるのは勧めません。測定方法が各社で違い、同じ物差しになっていないためです。数の大小よりも、粒径がどの範囲にあるかを見てください。
浮かない・消えにくい
泡が小さいほど、浮き上がる速さが急に落ちます。1μm未満になると、水分子の熱運動が浮力に勝って、水の中に均一に散らばったままになります。
泡の表面はマイナスに帯電しています。目安はマイナス20〜40mVで、泡どうしが反発するため合体しにくく、散らばった状態が続きます。
この「浮かない・消えにくい」という性質が、元栓に1台つけただけで建物の上階の蛇口まで届く理由です。器具ごとに付けなくてよいのは、ここから来ています。
| 分類 | 直径 | 水の中での動き |
|---|---|---|
| ミリバブル | 100μm以上 | 肉眼で見える。すぐ浮いて消える |
| マイクロバブル | 1〜100μm | 白く濁って見える。やがて縮んで消える |
| 1μm未満(ナノバブルと呼ばれている範囲) | 1μm未満 | 無色透明で見えない。浮かずに長くただよう |
出典:ISO 20480-1 の分類
物理から言えること
泡がマイナスに帯電していることから、賃貸の現場で意味がある動きが2つ出てきます。
汚れが離れやすくなる
排水口や配管の内側に付く汚れは、皮脂やぬめりのように、プラスに帯電していて水をはじく性質のものが多くあります。マイナスに帯電した泡がそこに吸着すると、付着する力が弱まり、水の流れで剥がれやすくなります。
現場での見え方はこうです。清掃のときに、こすらずに落ちる範囲が広がる。掃除がラクになる。そこで止めずに、もう一段先を見てください。退去のときに原状回復として見積もりに上がる水回りの項目が減り、立ち会いでの話し合いが短くなります。
付きにくくなる
剥がれた汚れが、また同じ場所に戻りにくくなります。配管の内壁を泡が覆うためです。
これが効くのは、時間の単位が長いところです。排水の詰まりや赤水で管理会社さまが呼ばれる件数が減ることにつながり、給排水管の更新工事を検討する時期を後ろにずらす材料になります。数か月では出ない差なので、年単位の記録で見てください。
これは言えません
売り手が言わないことのほうが、判断の役に立ちます。3つ挙げます。
- 配管が新品に戻ることはありません。すでに進んだ腐食や、内側が細くなった配管の断面が元に戻るわけではありません。更新工事の代わりにはなりません。
- 水質そのものは変わりません。密閉された配管の中で泡を作るので、外の空気を取り込みません。水道水としての水質は、入れる前と同じです。
- 空室が埋まる、という話にはなりません。設備は募集条件の1つで、家賃と立地と募集のやり方のほうが先に効きます。設備で変わるのは、同じ条件の物件と並んだときの比べられ方です。
肌や髪、体の調子については扱いません
入居者さまの使用感については、感じ方が人によって違います。募集図面やポータルサイトの備考に書くときも、設備として何が対象になるかだけを書いてください。
賃貸の募集は不特定多数に向けた表示になります。表示の書き方は、設備の事実に寄せておくほうが安全で、説明も短くなります。
賃貸で確かめる方法
入れる前に、何を記録するかを決めておいてください。あとから「効いた気がする」で終わらせないための準備です。
記録は、手間の少ないものから2つか3つ選べば足ります。全部そろえる必要はありません。
| 見るもの | いつ見るか | 記録の仕方 |
|---|---|---|
| 浴室と台所の排水口の汚れ | 設置の前と後で、同じ清掃の間隔で | 清掃のときに写真を1枚ずつ |
| 退去時の原状回復の見積もり | 設置の前と後で、同じ間取りの部屋で | 水回りの項目だけを抜き出して並べる |
| 排水の詰まり・修繕の呼び出し | 年単位 | 管理会社さまの対応記録の件数を数える |
| 蛇口の水圧 | 設置の当日 | 同じ蛇口で、前後の流量を測る |
| 入居者さまの声 | 更新のとき | アンケートに水回りの項目を1行足す |
この表は確かめ方の例です。ご自身の物件で記録しやすいものから選んでください。
もう少し詳しく:水圧の記録の取り方
設置の前と後に、同じ蛇口を全開にして、一定時間に溜まる水の量を測って比べます。バケツと時計があれば取れます。
元栓一体型の設備の場合、減水率は約5%です。泡を実用的な量で発生させる方式は、水圧が10〜40%の規模で落ちるものが多くあります。泡の量と水圧の維持を両立させているかどうかは、この測り方で自分で確かめられます。
判断に使う質問
ここまでを、売り手に投げる質問の形にまとめます。答えが返ってこない項目があれば、そこが判断の分かれ目になります。
- 泡の粒径はいくらですか。何で測った数字ですか
- 水圧はどれだけ落ちますか。測定の条件は何ですか
- 対象になるのはどこまでですか。浴室だけですか、元栓を通る水すべてですか
- 電源・薬剤・フィルターの交換は要りますか。要るなら年にいくらですか
- 保証は何年で、誰が何を保証しますか
- 給水装置としての認証はありますか
よくあるご質問
ナノバブルは賃貸物件で効果がありますか
排水口や配管の汚れが離れやすくなり、また付きにくくなるところまでが、物理から言える範囲です。清掃のしやすさと、退去時に水回りで上がる見積もりの項目で見てください。空室や家賃に直接効くものではありません。
ナノバブルは怪しいと言われることがありますが、なぜですか
同じ言葉が、仕組みも効く範囲も違う製品に使われているためです。泡の粒径と水圧の測定条件が示されているかどうかで、比べられるものと比べられないものが分かれます。
効いたかどうかは、どうやって確かめますか
設置の前に記録を取ってください。同じ間取りの部屋の原状回復の見積もり、排水の詰まりで呼ばれた件数、清掃時の写真の3つが取りやすいです。
古い配管の物件でも意味はありますか
これから付く汚れに対しては働きます。すでに進んだ腐食や細くなった配管が元に戻ることはないため、更新工事の判断とは別に考えてください。
水質が変わってしまいませんか
変わりません。密閉された配管の中で泡を作るため外気を取り込まず、水道水としての水質はそのままです。日本水道協会(JWWA)認証とJETマークの両方を取得しています。
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賃貸の空室対策を「水回りの設備」で考える|人気設備で差がつかなくなった物件の打ち手
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