最初に動くのは、所轄の保健所への連絡と、原因を探す範囲の切り分けです。浴槽の水を入れ替えても、配管の内側とろ材に残っていれば再検査で戻ります。
国の資料には、循環式の浴槽を感染源とする集団発生の記録があります。平成29年には58人が感染し、営業停止の行政処分が行われました。備えの中心は、温床になるバイオフィルムを日常から抑えることです。
温浴施設の衛生管理を担当されている方に向けて、自主検査で検出されたときの流れと、再検査までに見る場所を整理しました。
自主検査は、何のために受けるのか
浴槽水の水質検査は、公衆浴場の衛生管理の枠組みのなかで回数が定められています。厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」では、検査の結果を検査の日から3年間保管することとされています。
検査は、合格の証明を集める作業ではありません。出た結果をもとに次の手を決めるための材料です。検出されたときに誰へ連絡するかは自治体によって扱いが違うので、平常時のうちに所轄へ確認しておいてください。
先に決めておくことは3つです。連絡する相手、営業をどう扱うか、再検査を頼む先。当日に調べ始めると、それだけで半日が消えます。
検出されたときの流れ
順番はおおむね決まっています。自治体の指示が入るので、そのつもりで枠だけ持っておいてください。
- 所轄の保健所へ連絡し、指示を受ける
- 対象の浴槽を止め、換水と清掃・消毒を行う
- 原因を探す範囲を決める(浴槽、循環配管、ろ過器、貯湯槽、打たせ湯とシャワー)
- 再検査を依頼する
- 結果が出るまでの営業の扱いを決める
- 動いた内容を記録に残す
その日には結果が出ない
レジオネラ属菌の検査は培養で調べるため、依頼したその日に結果は出ません。数日かかります。だから「止めるのか、条件を付けて続けるのか」を、結果を待つ前に決める必要があります。ここを決めていないと、判断が現場に降りてきます。
保健所が見る項目
見られるのは、水の数値だけではありません。管理の記録が、その数値の背景を説明できる形になっているかどうかです。
- 遊離残留塩素の測定記録(日付・時刻・測定値)
- 換水と清掃の記録
- ろ過器の逆洗と、ろ材の交換の記録
- 循環配管の洗浄の記録
- 水質検査の結果の控え
- 循環の系統が分かる設備の図面
記録がそろっていると、原因を絞る作業が早い
どの設備を、いつ、どう扱ったかが分かれば、疑う範囲を狭められます。そろっていない場合は、設備を一つずつ確かめるところから始まります。かかる日数がそのまま営業への影響になります。
くわしいご案内公衆浴場の水の決まりごと|検査の回数・換水・エアロゾルを出さないこと
過去に起きたこと
国の資料には、循環式の浴槽を感染源とする集団発生の事例が記録されています。平成29年には58人が感染し、営業停止の行政処分が行われました。公衆浴場法にもとづく営業停止命令が出された例もあります。
共通しているのは、細かい水しぶき、つまりエアロゾルを吸い込む経路です。だから要領は、気泡発生装置等を設置した浴槽や打たせ湯・シャワーについて、連日使用している浴槽水を使わないことを求めています。循環してろ過した湯水を浴槽に戻すときも、底部に近い部分から補給する構造にして、誤飲とエアロゾルの発生を防ぐこととされています。
つまり、要領が向いているのは「浴槽水を使って、細かい水しぶきを発生させること」です。装置の名前そのものではなく、この2つの条件に焦点があります。
出典:厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領」(平成12年12月15日 生衛発第1,811号。2026-09-27 に原文を確認)。および国の公表資料。
再発を防ぐために見る場所
見る順番は、水から遠いほうへ。浴槽の水は入れ替えれば変わりますが、配管の内側は入れ替えられません。
| 場所 | 起きていること | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 浴槽と循環口 | 補給口のまわりに汚れが残る | 目視と、拭き取り |
| 循環配管の内側 | 壁面にバイオフィルムが層になる | 洗浄の記録と、洗浄後に出る排水の濁り |
| ろ過器とろ材 | ろ材の中に汚れが残り、逆洗で出しきれない | 差圧、逆洗後の濁り、ろ材の使用年数 |
| 貯湯槽 | 温度の低い部分ができる | 温度計の位置と、実測の値 |
| 打たせ湯・シャワー | 使わない時間に水が滞留する | 図面で、浴槽水を使っていない構造か確かめる |
温床になるバイオフィルムを抑える
バイオフィルムは、微生物とその分泌物が壁面に定着して層になったものです。この層は、消毒剤から中の微生物を守る働きをします。だから、日常の塩素消毒だけでは層の内側まで届きにくい。
レジオネラ属菌の対策で基本とされるのが、この温床になるバイオフィルムを抑えることです。落とす側の手、つまり換水・清掃・消毒・配管洗浄は、これまでどおり続けます。殺菌と消毒は、殺菌剤と専門の管理との併用が前提です。
そのうえで、付きにくくする側に手を入れる方法があります。UFB DUAL® は元栓に取り付ける一体型のノズルで、館内の給水に直径1マイクロメートル未満の泡を連続してつくります。泡は浮き上がらず、配管の中を水と一緒に進みます。だから元栓の1か所で、いちばん遠い蛇口の先まで届きます。
泡の表面はマイナスに帯電しています。壁面へ定着しようとするものは、プラスに帯電した疎水性のものが多くを占めます。だから泡が割って入る形になり、面との結びつきが緩みます。緩んだ分は水流で運ばれ、面が覆われているあいだは、離れたものが戻りにくくなります。
触るのは上水だけです。循環している浴槽水を処理する装置ではありません。泡は1マイクロメートル未満で浮き上がらないため、水面ではじけて水しぶきをつくる働きも持ちません。国の要領より強く定めている自治体があるため、所轄で確かめたうえで、抵触する地域にはご提案しません。
備えとして、日常でやること
どれも費用がかかりません。検出されたときに動ける速さは、この5つがそろっているかで決まります。
- 遊離残留塩素を1日に複数回、時刻とともに記録する
- 混雑した日の測定値を、別に残しておく
- 逆洗・換水・配管洗浄の記録を、同じ台紙に並べる
- 循環の系統図を、いまの設備に合わせて更新しておく
- 検査を頼む先と、連絡する順番を紙にしておく
よくあるご質問
自主検査で検出されたら、必ず営業停止になりますか
そうではありません。扱いは自治体と状況で違うので、所轄の保健所の指示に従います。行政処分が行われた例は国の資料に記録されていますが、それは感染が確認された事例です。
保健所に報告する義務はありますか
自主検査の結果の扱いは自治体で違います。連絡の要否と手順を、平常時のうちに所轄へ確認しておいてください。検出されてから調べ始めると、初動が遅れます。
浴槽の水を全部入れ替えれば直りますか
戻ることがあります。配管の内側とろ材に残っていると、入れ替えた水に再び出てきます。換水と合わせて、循環の系統の洗浄まで含めて考えてください。
ウルトラファインバブルでレジオネラ対策になりますか
できるのは、対策の基本とされるバイオフィルムの抑制までです。消毒は塩素剤と専門の管理との併用が前提で、条例で決まっている水質検査と記録も、これまでどおり続けていただきます。
循環式の浴槽がある施設でも使えますか
取り付けるのは元栓、つまり上水の側です。浴槽の中に気泡発生装置を置くものではありません。ただし自治体ごとに条例の書きぶりが違うため、所轄の保健所にご確認ください。抵触する地域ではご提案しません。
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