この記事の結論
自主検査でレジオネラ属菌が検出されたときの対応は、まず所轄の保健所に連絡して指示を受けることです。国の指針の基準は「検出されないこと(10cfu/100mL未満)」で、報告の要否や営業の扱いは自治体によって違いますが、対象の浴槽の換水・清掃・消毒と原因の調査を進め、再検査で確かめるのが基本の流れです。
浴槽の水を入れ替えるだけでは、ろ過器や循環配管の内壁に残ったバイオフィルム(微生物がつくる膜)から再び出ることがあります。日ごろから遊離残留塩素の測定や逆洗の記録をそろえておくと、原因を早く絞れます。
温浴施設の衛生管理を担当されている方に向けて、自主検査でレジオネラ属菌が検出されたときの流れと、再検査までに確かめる場所をまとめました。
自主検査の位置づけと、先に決めておくこと
浴槽水の水質検査の回数と基準は、厚生労働省の「公衆浴場における水質基準等に関する指針」に示されています。結果は検査の日から3年間保管することとされています。実際の回数は、お住まいの自治体の条例で確かめます。
検査の結果は、次の手を決めるための材料です。検出されたときに誰へ連絡するか、営業をどう扱うかは自治体によって違うため、平常時のうちに所轄の保健所に確かめておきます。
先に決めておくのは、連絡する相手、結果が出るまでの営業の扱い、再検査を頼む先の3つです。検出の当日に調べ始めると、それだけで初動が遅れます。
検出されたときの流れ
細かな手順は自治体の指示で決まりますが、おおまかな流れは次のとおりです。
- 所轄の保健所へ連絡し、指示を受ける
- 指示に沿って、対象の浴槽の使用を止め、換水と清掃・消毒を行う
- 原因を探す範囲を決める(浴槽、循環配管、ろ過器、貯湯槽、打たせ湯とシャワー)
- 再検査を依頼する
- 結果が出るまでの営業の扱いを決める
- 行った内容を記録に残す
結果はその日には出ない
レジオネラ属菌の検査は菌を培養して調べる方法のため、依頼したその日には結果が出ません。浴槽を止めるのか、条件を付けて続けるのかを、結果を待つ前に決めておく必要があります。決めていないと、判断が現場に任されてしまいます。
利用者に患者が出たときは、消毒の前に通報する
自主検査とは別に、利用者にレジオネラ症またはその疑いのある患者が出た場合について、国の要領は、直ちに保健所に通報して指示に従うこと、浴槽やろ過器の現状を保つこと、浴槽の使用を止めること、独自の判断で消毒剤を入れないことを求めています。消毒剤を入れると、生きた菌の検出が難しくなるためです。
原因を絞るときに手元に要る記録
原因を探すときの手がかりは、日ごろの管理の記録です。国の要領では、遊離残留塩素の測定結果と水質検査の結果を3年間保管すること、図面などで配管の状況を正確に把握しておくことが求められています。
- 遊離残留塩素の測定記録(日付・時刻・測定値)
- 換水と清掃の記録
- ろ過器の逆洗と、ろ材の交換の記録
- 循環配管の洗浄の記録
- 水質検査の結果の控え
- 循環の系統が分かる設備の図面
記録がそろっていると、原因を早く絞れる
どの設備を、いつ、どう扱ったかが分かれば、疑う範囲を狭められます。記録がそろっていない場合は、設備を1つずつ確かめるところから始まり、かかった日数がそのまま営業への影響になります。
くわしいご案内公衆浴場の水の決まりごと|検査の回数・換水・エアロゾルを出さないこと
国の要領が求めている管理
厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」は、これまでのレジオネラ症の発生事例を踏まえて、微生物がろ過器や浴槽、配管の内壁にバイオフィルム(要領では生物膜)をつくり、塩素剤などの殺菌剤から守られるため、浴槽水を消毒するだけでは汚染を除けないと説明しています。
そのうえで、ろ過器と循環配管については、1週間に1回以上、ろ過器を十分に逆洗浄して汚れを出し、バイオフィルムを適切な方法で除去・消毒することとしています。年に1回程度は循環配管内のバイオフィルムの状況を点検し、あれば除去することも示されています。
感染の経路として要領が挙げているのは、細かい水しぶき(エアロゾル)を吸い込むことです。気泡発生装置等を設置した浴槽や打たせ湯には連日使用している浴槽水を使わないこと、ろ過した湯水は浴槽の底部に近いところから補給する構造にすることが求められています。
再発を防ぐために確かめる場所
確かめる順番は、浴槽から遠いほうへ広げていきます。浴槽の水は入れ替えれば新しくなりますが、配管の内側は入れ替えられません。
| 場所 | 起きやすいこと | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 浴槽と循環口 | 補給口のまわりに汚れが残る | 目視と、拭き取り |
| 循環配管の内側 | 内壁にバイオフィルムが層になる | 洗浄の記録と、洗浄後に出る排水の濁り |
| ろ過器とろ材 | ろ材の中に汚れが残り、逆洗で出しきれない | 差圧、逆洗後の濁り、ろ材の使用年数 |
| 貯湯槽 | 底部に汚れがたまり、温度が下がりやすい | 60℃以上を保てているか(最大使用時も55℃以上) |
| 打たせ湯・シャワー | 使わない時間に水がとどまる | 浴槽水を使っていない構造か。シャワーは少なくとも週1回、内部の水が置き換わるよう通水しているか |
出典:厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領」(平成12年12月15日 生衛発第1,811号)。
温床になるバイオフィルムを抑える
レジオネラ属菌の対策で基本とされるのは、温床になるバイオフィルムを抑えることです。換水・清掃・消毒・配管洗浄は、これまでどおり続けます。殺菌と消毒は、殺菌剤と専門の水質管理との併用が前提です。
そのうえで、バイオフィルムを付きにくくする側に手を入れる方法があります。UFB DUAL® は元栓(水道メーターの二次側)に取り付ける元栓一体型のノズルで、館内の給水に直径1マイクロメートル未満の泡を連続してつくります。泡は浮き上がらず、配管の中を水と一緒に進むので、元栓の1か所からいちばん遠い蛇口まで届きます。
泡の表面はマイナスに帯電しています。配管の内壁に付こうとする汚れとのあいだに泡が入り込み、付着する力を弱めて水流で剥がれやすくし、面を覆って再び付くのを抑えます。こうしてバイオフィルムの蓄積を抑え、衛生環境の向上が見込めます。
取り付けるのは給水(上水)の側で、循環している浴槽水を処理する装置ではありません。泡は1マイクロメートル未満で浮き上がらず、水面ではじけて水しぶきをつくることもありません。気泡発生装置等の扱いは、自治体の条例が国の要領より厳しく定めていることがあるため、お住まいの自治体の条例を確かめ、抵触する地域にはご提案しません。
備えとして、日常でやること
どれも費用はかかりません。この5つがそろっているかどうかで、検出されたときに動ける速さが変わります。
- 遊離残留塩素を1日に複数回、時刻とともに記録する
- 混雑した日の測定値を、別に残しておく
- 逆洗・換水・配管洗浄の記録を、同じ台紙に並べる
- 循環の系統図を、いまの設備に合わせて更新しておく
- 検査を頼む先と、連絡する順番を紙にしておく
よくあるご質問
自主検査で検出されたら、必ず営業停止になりますか
いいえ、扱いは自治体と状況によって違います。所轄の保健所の指示に従って、対象の浴槽の使用や再検査の段取りを決めます。
保健所に報告する義務はありますか
自主検査の結果の扱いは、自治体によって違います。連絡の要否と手順を、平常時のうちに所轄の保健所に確かめておくと、検出されたときの初動が早くなります。
浴槽の水を全部入れ替えれば直りますか
それだけでは足りないことがあります。ろ過器や循環配管の内側に残っていると、入れ替えた水から再び出てきます。換水と合わせて、循環の系統の洗浄まで含めて考えます。
ウルトラファインバブルで、レジオネラ対策になりますか
できるのは、レジオネラ対策の基本とされるバイオフィルムの蓄積を抑えるところまでです。殺菌・消毒は、塩素剤などの殺菌剤と専門の水質管理との併用が前提で、条例で決まっている水質検査と記録も、これまでどおり続けます。
循環式の浴槽がある施設でも使えますか
はい、取り付けるのは元栓、つまり給水(上水)の側で、浴槽の中に気泡を出す装置ではありません。条例の定め方は自治体ごとに違うため、所轄の保健所で確かめ、抵触する地域ではご提案しません。
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