この記事の結論
ウルトラファインバブル(直径1マイクロメートル未満の泡)を含む水について、査読論文で確かめられているのは、栄養が足りない条件や浸透圧のストレスがかかった条件での、発芽・発根・初期生育の後押しです。同じ研究群では、泡の濃度と作物の種類によって、促進にも抑制にも働くことが報告されています。
水田の学会発表(予報段階)では、栄養成長期の草丈と分げつ数は増えたものの、収量に差は出ていません。論文が示しているのは条件を管理した試験での生育初期の反応で、圃場での収量は、自分の作物で比べて確かめることになります。
農業でのウルトラファインバブルの効果について、販売側の資料ではなく、研究で何が確かめられているのかを知りたい方へ。査読論文と学会発表の報告を、言える範囲と言えない範囲に分けて並べました。
査読論文で報告されている範囲
報告の中心にあるのは、ストレスのかかった条件での初期生育です。栄養が欠乏した状態や、浸透圧の高い状態に置かれた作物で、発芽と発根、初期の伸びが後押しされることが示されています。
大豆の苗を使った一連の研究が、この分野の主要な報告になっています。条件を管理した実験室と栽培室での試験であり、圃場の規模で行われたものではありません。
つまり、確かめられているのは生育初期の反応の仕組みです。圃場でどれだけの収量になるかは、この論文からは出てきません。
| 報告の種類 | どこまで言えるか | 扱い |
|---|---|---|
| 査読論文 | 条件を管理した試験での、初期生育・発芽・発根の後押し | 仕組みの裏づけ |
| 査読論文(同じ研究群) | 濃度と作物の種類で、促進にも抑制にも働く | 適用の範囲を決める材料 |
| 学会発表の要旨 | 水田での予報段階の報告 | 確定した結論としては扱わない |
| 比較試験の資料 | ハウスと水耕での重さの実測 | 自分の圃場で再現するかを試す対象 |
出典:Iijima et al., Plant Production Science 23:366-373(2020)/25:78-83(2022)/25:218-223(2022)、日本作物学会 第254回講演会要旨集(2022)。
作物の種類で、結果が変わる
同じ研究群で示されているのは、種によって反応が違うということです。後押しされる作物と、そうでない作物があります。抑制の側に働いた報告もあります。
これは、作物ごとに確かめる必要があることを示しています。同じ水でも、作物によって反応の向きが違うことがあるためです。肥料のように成分の量から効き目を見積もることはできないので、自分の品目で比べた数字が判断の材料になります。
品目が違えば、確かめ直すところから始まります。ほかの作物で出た数字は、比べ方の参考にとどめます。
濃度の影響
泡の数と大きさの分布は、生成する方式と条件で変わります。研究では、濃度を変えた比較が行われ、反応の向きが濃度で変わることが報告されています。
ここは、装置を選ぶときに気をつけるところです。カタログに書かれた泡の数は、測り方によって桁が変わるため、数字そのものを比べても判断になりません。
当社が泡の数をご案内していないのも、このためです。比べるなら、泡の大きさと、水圧をどれだけ保てているかです。UFB DUAL® で生成される泡の中心の大きさは約150〜200ナノメートルで、減水率は約5%です。
くわしいご案内同じ面積と同じ人数で、収量を上げる|かん水の水を変えた圃場で起きたこと
水田についての学会発表
水田については、大学と農業法人の試験が学会の要旨として出ています。報告されたのは、栄養成長期の草丈と分げつ数の増加、根が深く伸びる傾向、そして土壌からのメタン放出が抑えられる可能性の3つです。
生殖成長期に入ると伸びが弱まり、収量には差が出ていません。要旨は速報で、査読を経ていません。そのため当社は、これを確定した結論としては扱いません。
水田や露地では条件によって結果が変わる、と判断する根拠になる報告です。
報告の読み方
見るのは3つです。試験の規模(実験室か、栽培室か、圃場か)、そろえた条件、そして測った項目です。ここが書かれていない数字は、比べる相手になりません。
増加率だけが書かれているものには注意します。もとの値が小さければ、率は大きく出ます。グラム単位の実測が並んでいる資料のほうが、読み手が自分で判断できます。
査読と学会要旨の違いも見ます。要旨は速報で、査読を通っていません。どちらも役に立ちますが、確からしさの重みが違います。
実務では、どう解釈するか
仕組みの裏づけは論文に、圃場での数字は比較試験の資料にあります。この2つは別のもので、片方だけでは判断できません。
研究が示しているのは、条件によって出方が変わるということです。だから確かめる場所は、条件をそろえられるハウスと水耕から選びます。
ここまで読んでも残るのは、自分の作物と自分の水でどうなるか、という問いです。その答えは、自分の圃場でしか出ません。
自分の圃場で確かめる意味
論文の数字は、条件を管理した場所のものです。皆さんの圃場には、その圃場の水源、培地、気象、品種があります。
だから1作ぶん、水だけを変えて比べます。同じ品種、同じ施肥、同じかん水の量と時刻で、隣り合った2区画を並べます。
当社には効果検証用のレンタル品があります。論文を読んで迷っている段階から、自分の圃場のデータを取る段階へ移れます。
よくあるご質問
どの論文を見ればよいですか
Plant Production Science に掲載された一連の報告(23:366-373(2020)、25:78-83(2022)、25:218-223(2022))です。水田については、日本作物学会 第254回講演会要旨集(2022)に発表の要旨があります。
論文で収量が増えると証明されているのですか
いいえ。査読論文は収量までは扱っていません。確かめられているのは、ストレス下の初期生育・発芽・発根の後押しという、生育初期の反応です。圃場での重さの実測は、比較試験の資料にあります。
論文の結果を、自分の圃場で再現できますか
そのままの再現は難しいと考えてください。論文は栄養や浸透圧のストレスを管理した条件での試験で、圃場では天候や土など、ほかの条件が同時に変わるためです。確かめるなら、ハウスを2つに分けて水だけを変え、1作比べます。
泡の数が多いほうがよいのですか
泡の数だけでは判断できません。泡の数は測り方によって桁が変わるためです。比べるなら、泡の大きさと、水圧をどれだけ保てているかで、UFB DUAL® の泡の中心の大きさは約150〜200ナノメートル、減水率は約5%です。
水田で使う意味はありますか
収量の面では、まだ確かめられていません。学会の要旨では、栄養成長期の草丈と分げつ数の増加、根の深まり、メタン放出が抑えられる可能性が報告され、収量には差が出ませんでした。確かめる場所は、ハウスと水耕から選ぶのが順番です。
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