この記事の結論
ハウスのニラは、定植後しばらく刈らずに株を養成し、そのあと伸びた葉を刈り取っては回復させる、を繰り返して育てます。管理の中心は、刈ったあとに株が養分を貯め直せるよう、温度・かん水・施肥を整えることです。
温度の目標値や刈り取りの時期は品種と産地で違うため、産地の栽培暦を基準にし、自分のハウスの記録(気温・地温、刈り取りごとの重さ)を重ねていきます。
ハウスでニラを作りはじめた方、作型を組み替えたい方へ。工程の並びと、それぞれの工程で何が決まるのかを、記録の取り方とあわせて整理しました。
ニラという作物の性質
ニラは、1回の収穫で終わる作物ではありません。株を育てて、伸びた葉を刈り、また伸びてきたところを刈る。これを繰り返します。
刈ったあとに伸びる葉は、株と根に貯めてあった養分から作られます。だから「株を作る期間」と「刈り取る期間」を分けて考えるのが、この作物の基本になります。
収量は1株の重さ、株数、刈り取り回数の掛け算で、以下の工程はどれも、この3つのどれかにつながっています。
定植と株養成
植え付けのあと、最初の期間は刈らずに株を作ります。ここで根と株が充実していないと、あとの刈り取りで葉が細くなり、回復も遅れます。
株間と条間は、目標とする株数と、作業のしやすさを見て決めます。詰めれば株数は増えますが、風が通らず、刈り取りと調製の手間が増えます。
植える深さと覆土は、産地の栽培暦に合わせます。定植した日と、そのときの苗の大きさを記録しておくと、次の年の比較ができます。
温度と光
ハウスの利点は、温度と水を人が管理できることです。出荷の時期をそろえられるのも、この2つを管理できるからです。
目標の温度帯と換気の始めどきは、品種と産地で違います。ここは栽培暦と指導機関の資料を基準にしてください。自分のハウスの実測(気温・地温)を並べて記録すると、暦との差が見えます。
光は、ハウスの被覆の汚れと劣化で落ちます。年数が経った被覆は、同じ管理をしていても株の充実が変わるので、更新の時期を記録に入れておきます。
施肥の考え方
刈り取るたびに、葉として養分が圃場から持ち出されます。だから施肥は、1回で終わらせず、刈り取りの回に合わせて追っていく形になります。
ハウスは雨が入らないので、吸われなかった分が流れ出ません。土の電気伝導率を作の合間に測り、残っている分を引いて次の設計を立てます。
かん水に使う水の電気伝導率も測ってください。もともと塩類が入っている水で規定どおりに液肥を作ると、狙いより濃い液になります。
くわしいご案内同じ面積と同じ人数で、収量を上げる|かん水の水を変えた圃場で起きたこと
かん水の量と回数
1回に多く与えるより、回数を分けるほうが根の負担は小さくなります。培地や土のすき間が水で埋まっている時間が短くなり、根が呼吸できる時間が残ります。
刈り取った直後は、株の表面に切り口があります。土の表面が乾きすぎないように保ちながら、過湿にしないという幅の中で管理します。
かん水の出方は、ラインの手前と末端で違います。コップで1分受けて量を測り、ばらつきがあれば洗浄か交換で先に揃えてください。揃っていないと、与えた量の記録が意味を持ちません。
刈り取りと、そのあとの回復
刈り取りの判断は、葉の長さと幅、そして市場の求める規格で決まります。人によって基準が動くので、上位等級に入ったものと落ちたものを並べて写真を撮り、作業場に貼っておきます。
刈ったあとは、回復の期間です。ここで株が養分を貯め直せるかどうかが、次の刈り取りの重さを決めます。回復が遅い株は、回を重ねるごとに軽くなります。
刈り取りの日と、そのときの重さを回ごとに記録してください。年間の合計だけでなく、回ごとの推移を見ると、株の疲れ方が読めます。
病害虫と、出荷までの工程
病害虫の防除は、指導機関の防除暦と登録のある薬剤の範囲で組みます。発生を早く見つけるために、株元と葉の裏を見回る日を決めておきます。
収穫のあとは、調製と結束、洗い、計量、包装、予冷の順に進みます。葉先の傷みと泥の残りが、等級に直接出るところです。
洗いは、泥が落ちるまで手を止められず、人手と水を多く使う工程です。かご1杯を仕上げるまでの時間と水の量を記録しておくと、手順を変えたときの差が読めます。
| 工程 | そこで決まること | 記録するもの |
|---|---|---|
| 定植・株養成 | 株数と、株の土台 | 定植日・苗の大きさ・株間 |
| 温度と光の管理 | 生育の速さと出荷の時期 | 気温・地温・被覆の年数 |
| 施肥 | 葉の充実と、土に残る塩類 | 施肥の回と量・土の電気伝導率 |
| かん水 | 根の呼吸と、養分の届き方 | 1回の量と回数・出口の吐出量 |
| 刈り取り | 1回あたりの重さ | 刈り取り日・株ごとの重さ |
| 調製・出荷 | 等級と作業時間 | 手直しの個数・1かごの時間と水量 |
収量を上げたいときに、次に見るところ
工程の記録がそろったら、株の重さに絞って手を入れます。株数は定植で決まり、刈り取り回数も回復の速さに左右されるためです。
かん水の水を変えて同じハウスを2つに分けた試験では、株の重さが390g(ふだんの水は265g)、収穫は通常より約4日早くなりました。茎の太さと葉のボリュームも上回っています。
この数字と、そこからの売上の試算は、続きの記事にまとめています。まず自分のハウスの記録を作り、それと並べて読んでください。
よくあるご質問
同じ株は何年使えますか
産地と品種、株の勢い、病害の状況で変わります。刈り取りごとの重さを記録しておくと、株の疲れ方が数字で見えるので、更新の判断がしやすくなります。
刈り取りの間隔はどう決めますか
気温と株の回復の速さを見て決めます。産地の栽培暦を基準にして、刈り取り日と重さの記録を重ねながら、自分のハウスの間隔に寄せていきます。
ハウスと露地では何が違いますか
ハウスは、温度とかん水を人が決められます。出荷の時期をそろえやすく、株の管理も記録と結びつけやすくなります。露地は降雨と気温の影響が大きく、条件を一定に保てません。
かん水はどれくらい必要ですか
土と培地、作型、季節で変わります。1回に多く与えるより回数を分け、出口の吐出量をそろえたうえで、土の水分を見ながら決めてください。
収量を上げるには、どこから手を付けますか
株の重さからです。株数は定植で決まり、刈り取り回数も株の回復の速さに左右されるため、どちらも株の充実が土台になります。根の量、葉のボリューム、茎の太さを記録するところから始めてください。
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