この記事の結論
スケールの付着は、0.5mm前後のわずかな厚さでも熱効率の低下を招き、15〜60%規模のロス(消費電力の増加や、熱の伝わり方の低下)が生じ得ます。報告されている数字は、0.4mmで15%、0.5mmで約60%、0.8mmで30%、1.5mmで5.2%と、厚さの順には並びません。
測った設備、スケールの種類、何をロスとして測ったかがそれぞれ違うためです。自分の設備の数字は、清掃の直後からの消費電力・温度差・圧力差の変化を測って確かめます。
熱交換器や冷却塔のスケールで、どれだけ効率が落ちているのかを数字で示す必要がある設備担当の方に向けて、測定例の幅とその読み方をまとめました。
測定例には幅がある
スケールで効率がどれだけ落ちるかを調べると、いくつもの数字が出てきます。同じ0.5mm前後の付着でも、ある報告では数%、別の報告では半分以上という開きがあります。
どれかが間違っているというより、それぞれが別の設備・別の条件で測った結果です。数字だけを抜き出して並べると食い違って見えますが、条件を添えて並べれば、幅そのものが1つの情報になります。
0.4mmで15%、0.5mmで約60%、0.8mmで30%、1.5mmで5.2% という報告がある
よく引かれる数字を、厚さの順に並べると次のようになります。厚いほど損失が大きくなるはずなのに、0.5mmの約60%のあとに0.8mmの30%、1.5mmの5.2%が続いています。
この並びを見ると、厚さだけでは損失が決まらないことが分かります。数字の大小を比べるのではなく、それぞれの数字がどんな設備のものかを見る必要があります。
| 付着の厚さ | 報告されている損失 | 読み方 |
|---|---|---|
| 0.4mm | 15% | 条件はそれぞれの報告による |
| 0.5mm | 約60%(消費電力の増加) | 同上 |
| 0.8mm | 30% | 同上 |
| 1.5mm | 5.2% | 同上 |
なぜ幅が出るのか(条件が違う)
幅が出る理由は、少なくとも3つあります。1つ目はスケールの種類です。熱伝導率は、炭酸カルシウム系で約0.6〜2.0、シリカ系で約0.3 W/m·Kと、同じ厚さでも熱の通しにくさが数倍違います。
2つ目は、何を損失として測ったかです。熱の伝わり方の低下を測った報告もあれば、機器全体の消費電力の増加を測った報告もあります。3つ目は機器の種類と運転の条件で、伝熱面の広さや、そのときの負荷によって、同じ層の影響の出方が変わります。
銅の熱伝導率は約400 W/m·Kです。どの種類のスケールも銅より2桁以上熱を通さないという点だけは、どの報告でも共通しています。
だから「0.5mm前後の僅かな付着で、15〜60%規模のロスが生じ得る」と読む
条件の違う報告を1つにまとめるなら、下の端と上の端をそのまま残した幅で言うのが、数字に対していちばん正確です。0.5mm前後という、はがき2枚分ほどの厚さの層でも、15〜60%規模のロスが生じ得る、という読み方です。
幅が広いので、自分の設備がどこに入るかは、この数字からは決まりません。この幅が教えてくれるのは、薄い層でも放っておける大きさではない、ということです。自分の設備の数字は、自分の設備で測って出します。
自分の設備で確かめる方法(電力・温度・圧力の3つ)
伝熱面の状態は、分解しなくても3つの数字の変化で追えます。測る道具の多くは、設備にすでに付いています。清掃の直後と、そこから数か月後で同じ数字を取り、変わり方を見ます。
| 測るもの | 何を見るか | 付着が進むと |
|---|---|---|
| 電力 | 熱源機・ポンプの消費電力(同じ負荷の日で比べる) | 増える |
| 温度 | 冷却水や冷水の出入口の温度差、凝縮側の温度 | 熱が移りにくくなり、差のつき方が変わる |
| 圧力 | 熱交換器の前後の圧力差 | 通る断面が細くなり、差が大きくなる |
落とす手と付き方を変える手で、数字の変わり方がどう違うか
付いた層を落とすと、3つの数字はその場で付着の少なかったころの水準に近づきます。ただ、水の条件が同じなら、そこからまた同じ向きに変わっていきます。落とす手は、数字をいったん戻す手です。
付き方を変える手は、数字が変わっていく速さのほうを遅くします。当社が扱う emiiR®(エミール)は、電源も薬剤も使わずに、スケールの成分が伝熱面に硬く張り付きにくい状態にする装置です。清掃直後の数字が、長く保たれる方向に働きます。
比べるときは、清掃の直後から次の清掃までの、数字の傾きを並べてください。傾きがゆるやかになれば、清掃の周期を延ばす根拠になります。
よくあるご質問
スケールの厚さは、分解せずに測れますか
直接は測れません。熱交換器の前後の圧力差と、出入口の温度差の変わり方から、付着が進んでいるかを判断します。清掃の機会に、層の厚さを実際に測って記録しておくと、次からの見当が付きます。
一番大きい60%の数字を使って説明してもよいですか
幅で示すほうが通ります。約60%は条件の違う報告の上の端なので、それだけを使うと自分の設備に合わないことがあります。上に説明するときは、15〜60%規模という幅と、自分の設備で測った数字を並べます。
シリカのスケールは、炭酸カルシウムより影響が大きいですか
同じ厚さなら、シリカ系のほうが熱を通しにくくなります。熱伝導率はシリカ系が約0.3、炭酸カルシウム系が約0.6〜2.0 W/m·Kです。酸で落ちにくい点も、扱いを重くしています。
付着を抑えると、清掃はいらなくなりますか
導入後も清掃はなくなりません。ただし、付着物は硬く固着しにくくなり、すでに付いている分も少しずつ脆くなって剥がれ落ちていくので、次の清掃までの間隔が延びます。水に残った成分は細かい粒として水槽の底などにたまるので、それを取り除く清掃は続けます。
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