この記事の結論
貯水槽の有効容量の合計が10㎥を超える建物は、水道法の簡易専用水道に当たり、設置者には、水槽の掃除を毎年1回以上行うことと、地方公共団体の機関か登録検査機関の検査を毎年1回以上受けることが義務づけられています。
あわせて、水槽の点検など汚染を防ぐ措置、蛇口の水の色・濁り・臭い・味に異常を認めたときの水質検査、健康を害するおそれを知ったときの給水停止と周知が、管理の基準として定められています。
記録については、法定検査で図面と掃除・点検・水質検査の記録の整理と保存の状況が確かめられます。保存の年数は水道法の管理の基準には書かれておらず、5年と定めているのは、建築物衛生法の対象の建物の帳簿書類と、検査機関の帳簿です。
貯水槽のある建物を管理する管理組合の理事さま、オーナーさま、設備のご担当者さまに向けて、水道法、同法の施行規則、法定検査の告示の原文をもとに、義務の中身と、赤水が出たときにどうつながるかを整理しました。
対象になるかは、有効容量の合計10㎥で決まります
水道法は、水道事業者から供給を受ける水だけを水源とする水道のうち、一定の規模を超えるものを簡易専用水道と定めています(第3条第7項)。その規模は水道法施行令第2条で、水槽の有効容量の合計が10立方メートルとされています。
10㎥を超えれば簡易専用水道で、この記事で並べる水道法の義務がかかります。貯水槽が複数ある建物は合計で見ます。有効容量は、設備台帳、竣工図の衛生設備の図面、水槽の銘板で確かめられます。
| 区分 | 有効容量の合計 | 根拠 |
|---|---|---|
| 簡易専用水道 | 10㎥を超える | 水道法第3条第7項、水道法施行令第2条 |
| 小規模貯水槽水道(呼び名は自治体によって違います) | 10㎥以下 | 水道法第14条第2項第5号にもとづく、水道事業者の供給規程(給水条例)など |
出典:水道法、水道法施行令(e-Gov 法令検索で原文を確認)
管理の基準として義務になっていること
水道法第34条の2第1項は、簡易専用水道の設置者に、国土交通省令で定める基準に従って管理することを求めています。その基準が水道法施行規則第55条で、次の4つです。
- 水槽の掃除を毎年1回以上、定期に行うこと
- 水槽の点検など、有害物や汚水などで水が汚染されるのを防ぐための措置を講じること
- 給水栓の水の色、濁り、臭い、味などから異常を認めたときは、水質基準の項目のうち必要なものを検査すること
- 水が人の健康を害するおそれがあると知ったときは、直ちに給水を停止し、使うと危険であることを関係者に周知すること
基準に合っていないとき
掃除の「毎年1回以上」は回数の下限です。水槽の中に汚泥や赤さびが目立つ建物では、1回で足りるとは限りません。
管理が基準に合っていないと認めたときは、都道府県知事が期間を定めて清掃などの措置を指示でき(水道法第36条第3項)、指示に従わず、給水を続けることが利用者の利益を損なうと認めるときは、給水の停止を命じることができます(第37条)。
出典:水道法第34条の2・第36条第3項・第37条、水道法施行規則第55条
毎年1回以上の法定検査で見られること
設置者は、地方公共団体の機関か、国土交通大臣と環境大臣の登録を受けた検査機関の検査を、毎年1回以上受けます(水道法第34条の2第2項、施行規則第56条)。この検査を受けない設置者は、水道法第54条で100万円以下の罰金の対象です。
検査の中身は、告示「簡易専用水道の管理に係る検査の方法その他必要な事項」が定めています。水槽の水を抜かずに見る施設と管理の状態、給水栓の水質、書類の整理の3つです。建築物衛生法の適用がある建物では、書類による検査とすることもできます。
| 検査 | 主に見るところ |
|---|---|
| 施設と管理の状態 | 水槽の周囲・本体・上部・内部、マンホール、オーバーフロー管、通気管、水抜管。内部に汚泥や赤さびなどの沈積物が異常にないか、掃除が定期に行われていることが明らかか |
| 給水栓の水質 | 臭気・味・色に異常がないこと、色度5度以下、濁度2度以下、残留塩素が検出されること |
| 書類の整理 | 設備の配置と系統の図面、周囲の構造物の平面図、水槽の掃除の記録、そのほかの管理の記録が整理され、保存されているか |
出典:簡易専用水道の管理に係る検査の方法その他必要な事項(平成15年厚生労働省告示第262号)
記録は何を、何年残すのか
施行規則第55条の管理の基準には、記録の保存の定めはありません。記録が出てくるのは法定検査の側で、告示は、図面と、水槽の掃除の記録、点検の記録、給水栓の水質検査の記録などが適切に整理・保存されていることを判定の基準にしています。ここにも年数は書かれていません。
5年という数字は、別の2つの決まりにあります。1つは、建築物衛生法の対象の特定建築物で、給水の管理の状況を記載した帳簿書類を5年間保存すること(同法施行規則第20条)。もう1つは、登録検査機関が検査の帳簿を5年間保存すること(水道法施行規則第56条の9)です。
特定建築物に当たらない建物でも、法定検査では掃除と点検の経過を書類で示します。少なくとも前回の検査からの記録はそろえ、理事が交代する建物では、図面と記録を1か所にまとめておくと、次の担当が検査の日に困りません。
出典:水道法施行規則第55条・第56条の9、建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則第20条
蛇口で異常を認めたとき、汚染が分かったとき
赤水や濁りは、施行規則第55条第3号の「給水栓における水の色、濁り」にそのまま当たります。このときは、水質基準の項目のうち必要なものを検査します。赤水なら鉄、色度、濁度が中心で、水質基準は鉄が0.3mg/L以下、色度が5度以下、濁度が2度以下です。
検査で人の健康を害するおそれがあると分かったときは、第4号により直ちに給水を停止し、使うと危険であることを関係者に知らせます。法定検査で給水栓の水質に異常が見つかった場合も、検査機関は設置者に、都道府県知事などへ報告するよう助言することになっています。
10㎥以下の建物は、水道事業者や自治体の定めを確かめる
有効容量の合計が10㎥以下の貯水槽は簡易専用水道に当たらず、水道法の管理の基準と法定検査はかかりません。一方で水道法第14条第2項第5号は、水道事業者の供給規程に、貯水槽水道の設置者の責任に関する事項を定めるよう求めています。
そのため、給水を受けている水道事業者の給水条例や、自治体の条例・要綱で、清掃や点検、異常時の水質検査が定められていることがあります。東京都水道局は、貯水槽に入るまでの水質は水道局が、貯水槽とそれ以降の水質は設置者(または設置者から委託された管理会社など)が管理すると案内しています。
中身は地域ごとに違うので、所轄の水道局と保健所の案内で確かめてください。
赤水が出たとき、この義務とどうつながるか
貯水槽のある建物で赤水が出ると、義務の側から見て2つのことが起きます。蛇口の異常として必要な水質検査を行うことと、次の法定検査で、水槽の内部の赤さびなどの沈積物と、給水栓の色度・濁度が見られることです。
赤さびの出どころが水槽の内面か、水槽から先の鉄系の配管かで、打つ手が変わります。水槽の内面なら掃除と補修、配管なら管を替える更新、内面を覆う更生、錆の性質を変える延命の3つを比べます。
当社が扱う emiiR®(エミール)は、建物の給水元に付けて、そこから先の配管でもろい赤錆を緻密な黒錆へ変えていく装置です。水に薬剤を加えるものではなく、掃除と法定検査の義務はそのまま続きます。飲料水の系統で使う型式は日本水道協会の認証登録品(登録番号 Z-372)で、認証の対象は耐圧性能と浸出性能です。
よくあるご質問
法定検査は、どこに頼めばよいですか
地方公共団体の機関か、国土交通大臣と環境大臣の登録を受けた検査機関に、設置者の側から依頼します(水道法第34条の2第2項)。
検査を受けないと、どうなりますか
水道法第54条で、100万円以下の罰金の対象になります。管理が基準に合っていない場合は、都道府県知事から清掃などの措置を指示されることがあり、従わないときは給水の停止を命じられることがあります。
水槽が2つあり、8㎥と5㎥です。対象になりますか
対象になります。合計で13㎥となり、10㎥を超えるからです。水道法施行令第2条は、水槽の有効容量の合計で判断しています。
記録は何年残せばよいですか
水道法の管理の基準には年数の定めがありません。特定建築物では、建築物衛生法施行規則第20条で帳簿書類の5年保存が定められています。それ以外の建物でも、法定検査で掃除と点検の記録が確かめられるので、前回の検査からの分は必ずそろえておきます。
赤水が出ても、次の法定検査まで待ってよいですか
待たずに対応します。蛇口の水の色や濁りに異常を認めた時点で、必要な水質検査を行うことが管理の基準に入っているからです。
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