この記事の結論
スケール除去剤の多くは酸で、水道水や冷却水で白く付く炭酸カルシウム系のスケールは、溶かして落とせます。落ちにくいのはシリカ(ケイ酸)系のスケールで、一般的な酸ではほとんど溶けないため、削るか専用の薬剤と手順が要ります。
酸は配管の金属も傷めるので、濃度と時間を守り、剥がれた破片が弁やストレーナーに詰まらないよう段取りします。落としたあとも水の条件が同じならまた付くので、除去の回数を減らす手立ても合わせて考えると、年間の作業が軽くなります。
配管や熱交換器のスケールを除去剤で落とそうとしている設備担当の方に向けて、落ちるもの・落ちにくいものと、落としたあとの話をまとめました。
除去剤は、スケールを溶かして落とす
スケール除去剤の中心は酸です。塩酸、スルファミン酸、クエン酸などの酸が、炭酸カルシウムと反応して溶かします。反応のときに二酸化炭素の泡が出るので、泡が出ているあいだは溶けていると分かります。
設備では、系統を止めて除去剤を循環させる方法と、部品を外して漬ける方法があります。どちらも、除去剤が層に触れている時間と濃度で、どこまで溶けるかが決まります。
酸は金属も傷めるので、設備用の除去剤には金属の腐食を抑える成分が入っています。当然ですが、濃度と時間は除去剤の説明書の範囲を守ります。
酸で溶けるスケールと、溶けにくいスケール
炭酸カルシウム系のスケールは酸でよく溶けます。水道水や冷却水で白く付くものの多くはこちらです。マグネシウム系も、酸でおおむね溶けます。
溶けにくいのはシリカ系です。ケイ酸を主体にした層で、一般的な酸にはほとんど反応しません。熱の通りにくさも炭酸カルシウム系より大きく、熱伝導率で約0.3 W/m·Kと、炭酸カルシウム系の約0.6〜2.0よりさらに小さい値です。
実際の層は、両方が混ざっていることが多いものです。酸で表面が溶けても、シリカの骨組みが残って下が落ちない、ということが起きます。落とす前に、層の成分を業者に分析してもらうと、段取りが1回で決まります。
| スケールの種類 | 酸での溶け方 | 落とし方 |
|---|---|---|
| 炭酸カルシウム系 | よく溶ける | 酸の除去剤で溶かす |
| マグネシウム系 | おおむね溶ける | 酸の除去剤で溶かす |
| シリカ系 | ほとんど溶けない | 削る、または専用の手順 |
| 混ざった層 | 表面だけ溶ける | 溶かしてから削る |
クエン酸で落ちる範囲
クエン酸は酸の中では穏やかで、扱いやすい除去剤です。炭酸カルシウム系の薄い層なら、時間をかければ落ちます。
厚く育った層や、シリカが混ざった層には届きにくくなります。表面がざらついたまま残るときは、クエン酸の濃度を上げるより、層の成分を疑ってください。
設備の配管に使う場合は、使える材質と濃度を除去剤の説明書で確かめてから使います。
配管の中を落とすときに起きること(母材への影響・剥がれた片の行き先)
配管の中を酸で落とすと、スケールが溶けたところから金属の面が出てきます。そこに酸が当たり続けると、今度は金属が溶け始めます。古い鉄の配管では、スケールが腐食した穴をふさいでいた、ということもあります。
もう1つは、剥がれた片の行き先です。層が一度に溶け切らずに、大きな片のまま剥がれて流れ、弁やストレーナー、細い曲がりで詰まることがあります。循環させて落とす場合は、戻り側でこしとる段取りを入れます。
落としたあとは、中和と水洗いで酸を残さないようにします。作業の最後に系統をどこまで洗うかで、次の運転の立ち上がりが変わります。
落としたあと、また付くまでの時間
当然ですが、除去剤に次の付着を止める働きはありません。水の硬さや濃縮の条件が同じなら、落とした面には同じ速さで次の層が育ちます。
酸で落とした面は細かく荒れることがあり、そうなると次の結晶が引っかかりやすくなります。落とした直後の数か月で、思ったより早く白くなってくることがあります。
何年ごとに落としているかは、設備の記録に残っているはずです。その間隔がそのまま、除去剤と作業の費用が出ていく周期です。
落とす回数を減らす側の手
除去剤の出番を減らすには、次の層が育つ速さのほうに手を入れます。当社が扱う emiiR®(エミール)は、給水や冷却水の配管に組み込む筒で、通り抜ける水の中のカルシウムなどが、壁に硬く張り付かない形で出てくるようにします。
付いている層にも時間をかけて働き、硬い層がだんだん脆く、剥がれやすくなる傾向があります。厚い層は一度除去剤で落としてから導入すると、次に落とすまでの間隔が延び、作業も軽くなります。
いまの除去の周期と、1回あたりの作業の中身が分かれば、どこまで回数を減らせそうかの見当をお出しします。
よくあるご質問
シリカのスケールを溶かす除去剤はありますか
専用の薬剤はありますが、一般的な酸ではほとんど溶けません。専用の薬剤と手順が要り、扱いも難しくなるので、専門の業者に層の成分を分析してもらってから決めるのが確実です。
除去剤で配管が傷むことはありますか
あります。酸はスケールだけでなく金属にも反応するので、濃度と時間を守り、腐食を抑える成分が入った設備用の除去剤を使います。古い鉄の配管では、落としたあとに漏れが出ることもあるので、先に配管の状態を確かめます。
除去剤を使ったあと、何をすればよいですか
中和して水でよく洗い、酸を系統に残さないようにします。剥がれた片がストレーナーにたまっていないかも確かめます。
落とす回数を減らすには、何から始めればよいですか
いまの除去の周期と、1回の作業の中身を書き出すところからです。そのうえで、次の層の付き方を変える手を入れると、周期が延びたかどうかを数字で比べられます。
この記事に書いていないことは、直接お聞かせください。
お気軽にお問い合わせください。


