この記事の結論
物理的水処理とは、薬剤を入れず、水の成分も取り除かずに、スケールの成分が硬い結晶として配管や熱交換器に固着しにくい状態にする水処理です。固着しなかった成分は細かい粒のまま水と一緒に運ばれ、冷却塔なら下部の水槽に沈みます。
薬剤の購入や補充、軟水器の塩の補充が要らず、効果が出るのは水が中性〜アルカリ性のときです。方式には磁気式・電気式・セラミックス式などがあり、当社が扱う emiiR®(エミール)は、セラミックスの玉を水の流れで動かす方式で、電源も使いません。
スケール対策の装置を探していて、どんな種類があり、どれが自分の設備に合うのかを知りたい設備担当の方に向けて、装置の分類から書きました。
スケールへの手は、落とすか、付かなくするかに分かれる
スケールの装置を探し始めると、洗浄機、薬注装置、軟水器、活水器と、いろいろな名前が出てきます。名前で比べると混乱するので、まず何をする装置かで2つに分けます。
1つは、付いたものを落とす装置です。高圧洗浄機や、除去剤を循環させる洗浄装置がこれに当たります。もう1つは、そもそも付かなくする装置です。薬注装置や、水の性質を変える装置がこちらです。
当然ですが、落とす装置は次の付着を止めません。何度も落としているなら、探すべきは付かなくする側の装置です。
薬剤で抑える装置と、水の性質を変える装置
付かなくする装置は、薬剤を使うかどうかで分かれます。薬注装置は、防止剤を決まった濃度で入れ続けるための装置です。効き方は安定していますが、薬剤の購入と補充、濃度の管理が続きます。
もう一方が、薬剤を使わずに水の性質を変える装置です。水に何かを足すのではなく、装置の中を通るときに水に働きかけて、スケールの付き方を変えます。薬剤の購入と補充がありません。
| 種類 | 何をする装置か | 続く費用 |
|---|---|---|
| 落とす装置(洗浄機など) | 付いた層を落とす | 作業のたびに出る |
| 薬注装置 | 防止剤を入れ続ける | 薬剤費と補充の手間 |
| 軟水器 | カルシウムなどを別の成分と入れ替える | 塩と樹脂の管理 |
| 物理的水処理装置 | 成分を取らずに付き方を変える | 方式による(emiiR® は電源・消耗品なし) |
物理的水処理とは、成分を取らずに析出の挙動を変えること
物理的水処理は、水の中のカルシウムなどを取り除きません。成分はそのまま水に残り、そのうえで、成分が結晶として出てくるときの出方を変えます。
硬い結晶として壁に固着するかわりに、細かい粒の状態で水と一緒に運ばれていきます。冷却塔なら、その粒は下部の水槽に沈みます。成分を取らないので、浄水器や軟水器とは別の働きです。
物理的水処理にも、磁気を使うもの、電気を使うもの、セラミックスを使うものなど、いくつかの方式があります。方式ごとに働き方と条件が違うので、同じ名前でひとくくりにはできません。
emiiR®(エミール)は、ステンレスの筒の中をセラミックスが流動する装置
物理的水処理の中で、当社が扱っているのが emiiR®(エミール)です。外から見ると配管の途中に立つステンレスの円筒で、中身の約半分が焼き物の玉で埋まっています。水は筒の底から入り、玉を持ち上げてかき回しながら上へ抜けていきます。
筒の材質はSUS304またはSUS316で、中の玉は粘土鉱物を高温で焼き固めたものです。玉どうしがこすれ合うので、表面が汚れで覆われにくい構造になっています。
製造元はエミール・ジャパン株式会社で、当社は正規一次販売店です。空調用の冷却塔のほか、給水管の赤錆、トイレの尿石にも使われています。
電源も薬剤も要らないのは、動かす機械部品が無いから
emiiR® には、モーターも弁も制御盤もありません。玉を動かしているのは、配管を流れる水そのものの勢いです。電気を使う部品がないので、電源も配線も要りません。
水に何かを足す装置でもないので、薬剤のタンクもポンプもありません。可動部がなく、交換する消耗品もないため、ランニングコストがかからない構造です。冷却塔の用途では、水質と運転条件を確かめる保守点検のサービスを別に用意しています。
どの系統に付けるか(給水・給湯・戻り配管)
付ける場所は、何を守りたいかで決めます。冷却塔なら、冷却水の戻り配管にバイパスで付けます。循環水の全量ではなく、蒸発で失われる分を処理すればよいという考え方で設計されていて、建物と空調を長く止めずに導入できます。
給水管の赤錆や、トイレの排水管の尿石が相手なら、建物の給水元に付けると建物全体、トイレの給水元に付けるとそのトイレの系統が対象になります。給湯設備のスケールから機器を守る用途でも使われていて、家庭用の給湯機に機能部品として組み込まれた実績もあります。
密閉式の冷却塔では、循環水の本体ではなく、散水ポンプの系統に付けます。同じ装置でも、設備の形で付ける場所が変わります。
効果が出る条件は、水が中性〜アルカリ性であること
emiiR® が働くのは、水が中性〜アルカリ性のときです。温泉のように強い酸性の水では効果が出ません。水道水や、一般的な冷却水はこの範囲に入ります。
確かめるには、水質検査表のpHを見ます。井戸水や工業用水を使っている設備では、検査表があればそれを、なければ一度検査をしてから考えます。
型式と呼び径の考え方
emiiR® の型式は、用途と通る水の量で分かれています。冷却塔向けのJCTシリーズ、給水系統向けのJHW型、JEHシリーズ、SRDシリーズなどがあり、配管の太さ(呼び径)と流量から型式を決めます。
装置の中で玉が動くには、通る水の速さに目安があります。流量に対して筒が大きすぎると玉が動かず、小さすぎると抵抗になります。冷却塔なら冷却能力と循環水量、給水なら配管の口径と使う水の量が、型式を決める材料になります。
建物の配管の組み方によっては、大きめの1台でまとめたほうが合う場合もあります。冷却能力・循環水量・運転時間、または給水管の口径をお知らせいただければ、合う型式をお出しします。
よくあるご質問
物理的水処理の装置は、浄水器とどう違いますか
浄水器は水から成分を取り除く装置です。物理的水処理の装置は成分を取り除かず、成分の出方を変えます。emiiR® は塩素も取り除かないので、給湯器などにもそのまま使えます。
軟水器の代わりになりますか
スケール対策が目的なら、代わりになる場合があります。軟水器はカルシウムなどを別の成分と入れ替えて水から減らしますが、emiiR® は成分を減らさずに、固着しにくい状態にします。塩の補充や樹脂の管理はありません。
どのくらいの大きさの装置ですか
型式によって違います。給水系統の小口径向けのJHW型は、給水管に縦に取り付ける小型の筒です。冷却塔向けや大口径向けは、流量に合わせて大きくなります。
取り付けに電気工事は要りますか
要りません。電源を使わない装置なので、配管のつなぎ込みだけで取り付けます。
効果は何で確かめられますか
冷却塔では3か月の無償デモで、薬剤の使用量・ブロー水の量・付着の状態を記録して確かめます。取り付ける前と後で同じ数字を比べる形です。
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