この記事の結論
点検費と清掃費を見直したあとに下げられるのは、冷却塔の水処理にかかる薬剤費と、濃くなった冷却水を捨てて入れ替える分(ブロー水)の上下水道料金です。どちらも点検や清掃の委託とは別の費目なので、作業の回数を減らさずに下げられます。
スケール(水に溶けたカルシウムなどが固まって付く層)を抑える薬剤を減らし、ブロー水を絞ると、この2つが同時に下がります。殺藻剤は続けますが、全館空調でよく使われる100RTクラスの冷却塔1台の試算では、2つ合わせて年間約96万円の削減になります。
来年度の維持管理費を下げる案を求められて、削れる先がもう見当たらないビルの設備管理・総務の方に向けて、費目の切り方を1つ増やす考え方をまとめました。
削れる先が見当たらないとき、費目の分け方を変える
電力会社の切り替えとLEDの入れ替えは終わった。保守契約の見直しも一度やった。その状態で「さらに下げる案を」と言われると、同じ表をもう一度眺めることになります。
表が同じなら、出てくる案も同じです。費目の分け方を変えると、これまで1つの行にまとめられていた支出の中から、別の見直し先が見えてきます。
ビルの維持管理費でそれが起きやすいのが、水の費目です。水道料金は1枚の請求書にまとまっていますが、冷却塔のある建物では、その中に冷却水を入れ替えるために捨てている水の分が含まれています。
点検費・清掃費・法定点検費の3つを削ると、品質の話になる
ビルの維持管理費は、設備の点検・保守、清掃・環境衛生、法定点検の3つに分けて語られることがほとんどです。値下げの交渉も、委託先の見直しも、この3つの中で行われます。
ご存じのとおり、この3つは作業の量で値段が決まるので、回数を減らせばそのまま品質の低下につながります。
法定点検は回数を減らすこともできません。削る余地の小さい3つの中で交渉を重ねても、新しい案は出にくくなります。
その3つに入っていない費目がある(水処理の薬剤費と、捨てている水の上下水道料金)
空調に冷却塔を使っている建物では、冷却水の薬剤を買い続けています。そして、濃くなった冷却水を定期的に捨て、その分の水を補給しています。この2つは、点検費にも清掃費にも入っていません。
薬剤費は水処理の業者への支払い、捨てている水は水道の請求書の中に埋もれています。どちらも委託先の作業量とは関係なく、水の性質と運転のしかたで決まります。
そのため、この2つは点検や清掃の質を落とさずに下げられます。作業を減らすのではなく、薬剤と水が必要になる原因であるスケールのほうに手を入れるからです。
薬剤費は、3種類の薬剤の合計でできている
冷却水に入れている薬剤は、仕事で3つに分かれます。スケールが付かないように抑える薬剤、配管の腐食を抑える防食剤、藻とバイオフィルムを抑える殺藻剤です。請求書には1行で載っていても、中身はこの合計です。
減らし方は薬剤ごとに違います。スケールを抑える薬剤は、水の側でスケールの付き方を変えれば置き換えられます。殺藻剤は藻とバイオフィルムの相手なので、これまでどおり続けます。防食剤は配管の材質と水質を見て、個別に扱いを決めます。
薬剤費を下げる案を出すときは、まずこの3つの内訳を水処理の業者から出してもらってください。どれが何割を占めているかで、動かせる幅が決まります。
| 薬剤 | 受け持っていること | 水の側で付き方を変えたとき |
|---|---|---|
| スケールを抑える薬剤(分散剤など) | 結晶を細かく保ち、伝熱面に付かせない | 置き換えられる |
| 防食剤 | 配管の腐食を抑える | 材質と水質を見て個別に決める |
| 殺藻剤 | 藻とバイオフィルムを抑える | これまでどおり続ける |
捨てる水の量は、どこまで濃くしてよいかで決まる
ご存じのとおり、冷却塔は水の一部を蒸発させて熱を捨てるので、溶けていたカルシウムなどが残り、冷却水は運転するほど濃くなります。
濃くなりすぎるとスケールが付くので、一定の濃さを超える前に冷却水の一部を捨て、新しい水で薄めます。この捨てる水がブロー水です。どこまで濃くしてよいかという上限を低く置くほど、捨てる量は増えます。
上限を決めているのは、スケールがどの濃さで付き始めるかです。付き始める濃さを高いほうへずらせれば、捨てる量は減り、補給する量も一緒に減ります。
下水に流れていない水の分は、料金から外せる
下水道使用料は、多くの自治体で水道メーターの数字をそのまま汚水の量とみなして計算されています。ところが冷却塔で蒸発した水は、空へ出ていき下水道を通りません。
この差を申請して認定を受けると、蒸発した分を下水道使用料の計算から外せる制度が、多くの自治体にあります。呼び方や要件は自治体ごとに違い、申請した日より前にはさかのぼらない自治体もあります。
認定で外れるのは蒸発と飛散の分で、下水道の請求に残るのは、ブロー水として下水道へ捨てた分です。ブロー水を絞ると、この残る分が小さくなり、使った水のうち減量として外れる割合が上がります。制度の要件と申請の進め方は、下水道料金の減免の記事で詳しく書いています。
2つの費目を同時に下げる方法
2つの費目は、原因が同じです。スケールが付くから薬剤を入れ、スケールが付くから水を捨てています。スケールの付き方そのものを変えれば、両方が同時に下がります。
当社が扱う emiiR®(エミール)は、電源も薬剤も使わず、水の流れだけでスケールが固着しにくい状態にする装置です。冷却水の戻り配管にバイパスで取り付けるので、建物と空調を長く止めずに入れられます。可動部と電源がなく、交換する消耗品もありません。
スケールを抑える薬剤を減らし、ブロー水を絞り、殺藻剤は続けます。100RTクラスの冷却塔1台の試算では、薬剤費が年間24万円から7万2千円ほどに、ブロー水にかかる上下水道料金が88万2千円から8万8千円ほどになります。
決裁を取る資料に、何を並べるか
決裁する側が見るのは、いくら減るか、最初にいくらかかるか、うまくいかなかったらどうなるかの3つです。この3つに答える形で並べると、1枚で話が通ります。
いま払っている額は、手元の書類で埋まります。導入の側は、お見積もりで製品代と工事代を分けてお示しし、お見積もり以上の金額はいただきません。年間の薬剤費と補給水量が分かれば、どの費目がどれだけ下がるかの見当をお出しできます。
| 並べる項目 | どこで分かるか |
|---|---|
| 年間の薬剤費(3種類の内訳) | 水処理の業者の請求書と月報 |
| 補給水量とブロー水量 | 補給ラインのメーター、ブロー弁の設定 |
| 上下水道の単価 | 水道の請求書 |
| 導入にかかる額 | お見積もり(製品代と工事代を分けて記載) |
| うまくいかなかったとき | バイパス設置なので、元の配管に戻せる |
| 保証 | 設置後10年。10年後の検査でさらに10年 |
よくあるご質問
冷却塔のない建物でも、水の費目は下げられますか
下げられる余地はありますが、中心になるのは冷却水ではなく、配管の清掃・洗浄の外注費です。冷却塔がなければ、捨てている水はほとんどありません。給水管の赤錆や、トイレの排水管の尿石が付きにくくなれば、洗浄の間隔を延ばせます。
薬剤をすべてやめられますか
やめられるのは、スケールを抑える薬剤です。藻とバイオフィルムを抑える殺藻剤は続けるので、薬剤費は0円にはなりません。100RTクラスの冷却塔1台の試算では、年間24万円が7万2千円ほどになります。
工事のあいだ、空調を止める必要はありますか
長く止める必要はありません。冷却水の戻り配管にバイパスで取り付けるためです。配管をつなぐ時間帯は、運転の少ない時間に合わせて決めます。
下水道料金の減免は、どこに申請しますか
建物のある自治体の、下水道の担当部署に申請します。要件・必要な計器・申請書の名前は自治体ごとに違うので、先に事前相談をしてから計器を付けるのが確実な順番です。
効果を確かめてから決められますか
はい。3か月の無償デモで、実際の冷却塔にデモ機を付け、薬剤の使用量とブロー水の量、付着の状態を記録します。その数字を見てから決められます。
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