この記事の結論
スケール防止剤は、冷却水などに溶けているカルシウムなどが結晶に育つのを抑え、できた細かい粒を水の中に散らしておく薬剤です。抑えるのはスケールだけで、藻やバイオフィルムには殺藻剤、配管の腐食には防食剤と、別の薬剤を使います。
すでに付いたスケールを溶かす力はないので、落とすには洗浄や除去剤を使います。スケールが固着しにくくなる水処理装置を導入すれば、防止剤は段階的に減らせますが、殺藻剤は続けます。
水処理の業者の見積もりにスケール防止剤の行があり、これが何の薬剤で、減らせるものなのかを知りたい設備担当の方に向けて書きました。
スケール防止剤が受け持っているのは、結晶を育てないことと、分散させること
水に溶けているカルシウムやマグネシウムは、濃くなったり温度が上がったりすると、結晶として出てきます。結晶は核ができるところから始まり、そこに次の成分が積み重なって大きく育ち、壁に固く付きます。
スケール防止剤は、この流れを2か所で止めます。1つは結晶の表面に取り付いて、育つのを邪魔すること。もう1つは、できてしまった細かい粒どうしがくっつかないようにして、水の中に散らしておくことです。
前者を抑制、後者を分散と呼び、製品によってどちらに重きを置くかが違います。どちらも、付く前に働く薬剤で、既に付いた層を溶かす力はありません。
防スケール剤・分散剤・殺藻剤は、別の仕事をしている
冷却水の薬剤は、名前が似ていても相手が違います。防スケール剤と分散剤はスケールが相手で、殺藻剤は藻とバイオフィルムが相手です。腐食を抑える防食剤が加わることもあります。
水処理の業者によっては、これらを1つの製品に配合して納めています。請求書が1行でも、中にはいくつかの仕事が入っています。どれを減らせるかを考える前に、配合の内訳を確かめてください。
防止剤という呼び名は、売る側がまとめて付けている名前で、中身が抑制寄りか分散寄りかは製品ごとに違います。成分の名前は、業者から安全データシートを取り寄せると載っています。どの成分がどの仕事をしているかが分かると、どこまで置き換えられるかの話が具体的になります。
| 薬剤 | 相手 | 働く時点 |
|---|---|---|
| 防スケール剤(抑制) | 結晶が育つこと | 付く前 |
| 分散剤 | 粒どうしがくっつくこと | 付く前 |
| 殺藻剤 | 藻とバイオフィルム | 増える前・増えたあと |
| 防食剤 | 配管の腐食 | 腐食が進む前 |
どの薬剤が、濃縮の上限を決めているか
ご存じのとおり、冷却塔では水が蒸発して循環水が濃くなるので、どこまで濃くしてよいかという上限を決め、それを超える前に一部を捨てています。この捨てる水をブロー水と呼びます。
この上限を決めているのは、主にスケールです。濃くするほどスケールの成分が結晶になりやすくなるので、防止剤が効く範囲に収まる濃さで止めています。防止剤の性能と、捨てる水の量は、裏表の関係にあります。
そのため、スケールの付き方を別の手段で変えられれば、上限を上げる余地が生まれます。捨てる水が減り、防止剤を入れる量も減ります。
防止剤は、捨てた水と一緒に系統の外へ出ていきます。濃度を保つには、捨てた分だけ足し続けなければなりません。捨てる水が増えれば防止剤の使用量も増えるので、片方だけを下げることは難しくなります。
減らせる薬剤と、続ける薬剤
スケールの付き方を変える装置を導入した場合、置き換わるのは防スケール剤と分散剤の側です。これらはスケールが相手なので、スケールが固着しにくくなれば量を下げられます。
殺藻剤は続けます。藻とバイオフィルムは生き物が相手で、スケールの付き方とは別の話です。冷却塔の衛生管理は、殺藻剤と清掃を前提に組み立てます。
防食剤は、配管の材質と水質で扱いが変わります。鉄の配管が多い系統かどうかを見たうえで、個別に決めます。どの薬剤も、一度に止めずに段階的に下げて、数字を見ながら進めます。
薬剤に頼らずに付き方を変える方法
防止剤の仕事を薬剤以外で受け持つ装置があります。当社が扱う emiiR®(エミール)は、水の成分を取り除かずに、結晶が壁に固着しにくい状態をつくる装置で、動かすための電気も補充する薬剤もありません。
冷却塔では、戻り配管にバイパスで取り付けます。導入後は、防スケール剤と分散剤を段階的に下げ、殺藻剤は続けます。薬剤タンクと薬注ポンプの補充の手間も、防止剤の分だけ軽くなります。
3か月の無償デモで、自分の冷却塔で防止剤をどこまで下げられるかを確かめられます。いまの薬剤の配合と使用量が分かれば、進め方の案をお出しします。
よくあるご質問
スケール防止剤で、付いたスケールは落ちますか
落ちません。防止剤は付く前に働く薬剤です。付いた層を落とすには、洗浄や酸などの除去剤を使います。
スケール防止剤を入れていれば、ブロー水はいりませんか
いります。防止剤が効く範囲にも上限があり、それを超える前に水を捨てて薄める必要があります。防止剤の量とブロー水の量は、セットで決まっています。
防止剤を減らすと、レジオネラの管理に影響しますか
直接の影響はありません。防止剤はスケールが相手の薬剤で、藻とバイオフィルムの管理は殺藻剤が受け持っています。殺藻剤は続けるので、衛生管理の組み立ては変わりません。
薬剤の内訳は、どこで確かめられますか
水処理の業者の月報や納品書に、製品名と使用量が載っています。製品ごとの成分と用途は、業者から安全データシートを出してもらうと分かります。
emiiR® を導入すれば、薬剤はいらなくなりますか
減らせるのは防スケール剤と分散剤で、殺藻剤は続けます。防食剤は、配管の材質と水質を見て個別に決めます。
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