この記事の結論
スケールの付着を防止する方法は、薬剤で結晶の成長を抑える方法と、水の性質を変えて配管や機器の面に固着しにくくする方法の2つです。すでに付いたスケールは、洗浄や薬品で落とします。
薬剤は入れ続ける費用がかかり、冷却塔では濃くなった水を捨てる費用も続きます。水の性質を変える装置は電源も消耗品も使わないので維持費がかからず、すでに付いたスケールも時間をかけて脆くしていきます。
熱交換器や配管のスケールを何度も落としていて、そもそも付かないようにできないかと考えている設備担当の方に向けて、3つの手を同じ物差しで並べました。
スケールは、伝熱面では断熱材として働く
ご存じのとおり、熱交換器の管の内側にスケールが付くと、熱はその層を通らなければならなくなります。炭酸カルシウム系のスケールの熱伝導率は0.6〜2.0 W/m·K程度で、銅の約400に比べて桁が2つ小さい値です。
計算してみると、厚さ0.5mmの炭酸カルシウム系の層は、厚さ1mmの銅の管壁のおよそ200倍、熱を通しにくい壁になります(層の熱伝導率を1として計算)。設備はその分だけ余計に運転して、同じ量の熱を運ぼうとします。
消費電力の増え方は測定の条件で幅があり、0.5mm前後の付着で15〜60%程度という測定例があります。落としても、水の条件が同じならまた付き、同じことが繰り返されます。
方法1|付いたものを落とす(洗浄・ケレン・薬品)
いちばんなじみのある手です。高圧洗浄で水の力で飛ばす、ケレンで削り取る、酸などの薬品で溶かす。いま付いている層には、これがいちばん早く効きます。
当然ですが、落とす作業は次の付着を止めません。落とす方法だけで管理している設備では、清掃の周期がそのまま費用の周期になります。
付いた層が厚く硬いほど、作業は重くなります。ケレンでこそげ取ってから高圧洗浄をかける、という2段の工程が毎シーズン入っている設備も少なくありません。
方法2|育つのを薬剤で抑える
冷却水やボイラーの給水に薬剤を入れて、スケールの結晶が育つのを邪魔したり、できた粒を細かいまま水に散らしておいたりする手です。効き方が分かりやすく、多くの設備で標準になっています。
薬剤は水と一緒に出ていくので、入れ続ける必要があります。濃度を保つために薬注ポンプとタンクを置き、補充と濃度の管理を続けます。費用は毎年、使った量に比例して出ていきます。
薬剤で抑えていても、濃くしすぎれば付きます。そのため濃縮の上限を決めて、それを超える前に水を捨てています。薬剤費と水の費用が、並んで出続ける形です。
方法3|固着しないように、付き方そのものを変える
3つ目は、水の成分を取り除かずに、スケールの成分が硬い結晶として壁に固着しにくい状態にする手です。成分は水の中に残ったまま、細かい粒として水と一緒に運ばれていきます。
当社が扱う emiiR®(エミール)は、この3つ目に入ります。配管の途中に置いた筒を水がくぐるだけで働くので、薬剤を買い足すことも、電気を引くこともありません。層が固着しにくくなれば、冷却塔では水をより濃いところまで使い回せるようになります。
当社が行った実証では、10年以上たまっていたと思われる強固なスケールが、指で剥がれる状態になりました。落とす作業をやめるのではなく、落とす作業を軽く、少なくする方向に働きます。
3つを、費用の出方で並べる(毎年出るか、一度で終わるか)
3つは、どれが優れているかではなく、相手にしている時点が違います。落とす手はいま付いている層、抑える手と付き方を変える手はこれから付く層が相手です。費用の出方で並べると、選び方がはっきりします。
| 方法 | 相手にする層 | 毎年の費用 | いま付いている層に |
|---|---|---|---|
| 落とす(洗浄・ケレン・薬品) | いま付いている層 | 作業のたびに出る | いちばん早く効く |
| 薬剤で抑える | これから付く層 | 薬剤費が続く | 効かない |
| 付き方を変える | これから付く層 | 立たない(電源・消耗品なし) | 時間をかけて脆くする |
いま付いているものはどうなるか
付き方を変える手は、既に付いている層にも時間をかけて働きます。硬い層がだんだん脆くなり、剥がれやすくなる傾向があります。剥がれた粒は水に運ばれ、冷却塔なら下部の水槽に沈みます。
ただ、厚く育った層がすぐ消えるわけではありません。閉塞しかけている配管や、効率が大きく落ちている熱交換器は、先に一度落としてから付き方を変えるほうが早く楽になります。
順番は、落とす、それから付かなくする、です。こうすると、次に落とす作業までの間隔が延び、作業そのものも軽くなります。
自分の設備がどれに当たるか(水質・材質・流量で見る)
最初に見るのはpHです。この方式が対象にできるのは中性からアルカリ性の水で、温泉の配管のような酸の強い水は対象から外れます。水質検査表のpHの行を見れば、まず対象になるかどうかが分かります。
流量も見ます。emiiR® は水の流れで玉を動かす構造なので、通る水の速さに目安があります。冷却塔の戻り配管、給水の本管、給湯の系統など、どこに入れるかで装置の型式が変わります。
水質検査表のpHと、冷却塔の能力・循環水量・運転時間が分かれば、どの型式が当たるかの見当をお出しできます。
よくあるご質問
スケールを完全に付かなくできますか
壁に硬く固着するのを抑える方式です。成分は水に残るので、細かい粒になって冷却塔の水槽の底などにたまります。その粒は清掃で取り除きます。
いま付いているスケールは、落としてから導入したほうがよいですか
閉塞しかけている配管や、効率が大きく落ちている熱交換器は、先に落としたほうが早く楽になります。薄い層なら、そのまま導入して時間をかけて脆くしていく進め方もあります。
薬剤で抑えている設備にも付けられますか
付けられます。導入後に、スケールを抑える薬剤の量を段階的に下げていきます。藻とバイオフィルムを抑える殺藻剤は続けます。
どのくらいで変化が見えますか
新しく付く量の変化は、数か月のうちに見え始めます。すでに付いている硬い層は、脆くなってから剥がれるので、もっと時間がかかります。3か月の無償デモで、自分の設備の変化を確かめられます。
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