この記事の結論
理事が交代しても判断が引き継がれるように、給水設備については、調査の結果、見積もり(採用しなかったものも含む)、水の測定値、写真、議事録の5つを、1枚の表にひもづけて残します。とくに、見送った選択肢とその理由を議事録に書いておくと、翌年の理事会で同じ議論をやり直さずに済みます。
水の測定値は、採水の場所・時刻・流す前か後かをそろえて記録し、表の置き場所は議事録に書いて、長期修繕計画の該当する行と番号でひもづけます。機器を付けている場合は、設置日と保証の期限も同じ表に載せます。
輪番で理事になった方と、理事会の資料を作る管理会社のご担当者さまに向けて、給水設備の記録を引き継ぐ形を整理しました。
毎年の交代で失われるのは、判断の理由です
書類そのものは、管理会社さまの手元に残っていることが多いです。それでも議論が戻るのは、その書類がなぜ作られたのかが分からなくなるからです。
調査の報告書だけが残っていて、何を決めるために取った調査だったのかが残っていない。見積もりが3社分あるのに、なぜ1社に絞らなかったのかが分からない。こうなると、次の理事会は最初の質問から始めることになります。
給水管は、とくに引き継ぎが問題になりやすい設備です。判断までに数年かかり、そのあいだに理事が2回も3回も代わります。
残しておきたい記録は5つです
この5つのうち、抜けやすいのは「見送った理由」です。決めたことは議事録に残りますが、決めなかったことは誰も書きません。ここが空いていると、翌年に同じ提案が出てきます。
- 調査の結果:抜管調査・内視鏡の報告書。系統ごとの肉厚と、撮った写真
- 見積もり:範囲と条件が書かれたもの。採用しなかったものも残す
- 水の測定値:鉄、濁度、色度。採水した場所と時刻をそろえて
- 写真:赤水そのもの、配管の内面、受水槽まわり。日付は台帳の側に持たせる
- 議事録:決めたこと、条件、そして見送った理由
水の記録は、条件をそろえると使えます
水の数値は、採水の条件で動きます。朝いちばんの水と、しばらく流したあとの水は別の数字になります。条件が書かれていない数値は、翌年の数値と比べられません。
| 記録する項目 | 書き方 | なぜ要るか |
|---|---|---|
| 採水した日付と時刻 | 2026-09-27 7:10 | 止まっていた時間の長さが分かる |
| 採水した場所 | A棟 3階 302 洗面(共用の水栓なら位置も) | 系統ごとの差が読める |
| 流す前か、流したあとか | 流す前/2分流したあと | 同じ条件でしか比べられない |
| 測った項目と数値 | 鉄 0.9mg/L、濁度、色度 | 経過を追える |
| 測った先 | 登録検査機関か分析会社の名前 | 測り方の違いが分かる |
| 写真の番号 | 台帳の番号とひもづける | 報告書に貼り直せる |
くわしいご案内修繕積立金が足りないまま、給水管をどうするか|先送りする期間に打てる手
どこに置くか
紙だけで持つと、理事の交代のときに箱ごと動きます。管理会社さまのサーバーに置けば残りますが、理事は自分で開けません。両方の弱点をふさぐには、置き場所を1つに決めて、その場所を議事録に書いておくのが確実です。
写真と報告書のような容量の大きいものは、管理会社さまに預けたまま、手元には1枚の表と置き場所だけを持つ形で足ります。全部を手元に持つ必要はなく、どこにあるかが分かれば引き継げます。
1枚にまとめる様式
給水設備について、次の項目が1枚に並んでいれば、引き継ぎはそれで足ります。
- 建物の給水方式(受水槽式か直圧式か)と、給水元の口径
- 配管の材質と、改修の履歴(どの系統がいつ替わったか)
- 調査の履歴(いつ、どの系統を、どう調べて、何が分かったか)
- 水の測定値の並び(日付・場所・条件・数値)
- いま入っている機器(型式、設置位置、設置日、保証の期限)
- 見送った選択肢と、その理由
- 次に決める予定のこと、その時期
機器を導入している場合に書くこと
当社が扱う emiiR®(エミール)のような機器を導入している建物では、型式、設置した位置(受水槽式なら受水槽に入る手前、直圧式なら水道メーターのすぐ建物側)、設置日、保証の期限を1枚に載せてください。保証は設置後10年で、10年後に検査を受けるとさらに10年、最長20年になります。
この期限が引き継がれていないと、検査を受ける時期を逃します。点検や薬剤の補充が要らない機器ほど、忘れられやすいので、日付だけは表に置いてください。
次の理事会への申し送りの書き方
申し送りは長く書かなくて構いません。いま何が分かっていて、次に何を決める必要があるのか。この2行が書かれていれば、次の理事会は続きから始められます。
そこに、判断の期限を足してください。調査の結果には有効期間のようなものがあり、何年も前の報告書は、そのまま総会の材料にはなりません。いつまでに決めるのかが書かれていると、先送りが自動的に起きるのを防げます。
長期修繕計画とひもづける
1枚の表は、長期修繕計画の該当する行に番号でひもづけておきます。計画の見直しのときに、その行の根拠がすぐ出てくる状態にしておくのが目的です。
給水管は、1回でまとめて替える形ではなく、系統ごとに分けて並べたほうが積立金の山を作りません。分けて並べるには、系統ごとの記録が要ります。記録の形が決まっていれば、計画の書き換えもそのままできます。
よくあるご質問
記録は何年分残せばよいですか
給水管の判断は数十年の単位で動くので、調査の報告書と工事の記録は建物がある限り残す前提で考えてください。法令で年数が決まっているのは、建築物衛生法の対象の建物(特定建築物)の帳簿書類で、5年です。水道法の簡易専用水道の管理の基準に年数の定めはありませんが、法定検査では掃除や点検の記録がそろっているかが見られます。
管理会社が代わるときは、何を受け取ればよいですか
竣工図の給水設備図、設備台帳、調査の報告書、過去の見積もりと工事の記録、水質検査の結果、受水槽の清掃と検査の記録です。引き継ぎの一覧を作って、受け取った日付を議事録に残してください。
水の測定は、毎年やるものですか
法定の検査とは別に、赤水の経過を追うなら年に1回か2回、同じ条件で測ると変化が読めます。項目を増やすより、採水の場所と時刻をそろえるほうが比べやすくなります。
写真はどのくらい撮っておけばよいですか
赤水が出たときの水、配管の内面(調査のときに撮ってもらう)、受水槽の内部、給水元まわり。この4種類があれば、次の判断に使えます。撮影日は写真に焼き込まず、台帳の側で管理してください。
1枚の様式は、どこかにありますか
ありません。上の7項目を1枚に並べれば足ります。給水方式と給水元の口径が分からないときは、お問い合わせの相談内容の欄に分かる範囲で書いていただければ、確かめ方をご案内します。お問い合わせのあと、担当からメールでご連絡しますので、写真はそのメールに添付してご返信ください。
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