この記事の結論
数千万円の更新工事をいま選ばなくても、空室や共用水栓の定期的な通水、受水槽の点検と清掃、苦情の出ている住戸の器具や枝管の交換、給水元に装置を1台付けて赤錆を黒錆に変えていく延命といった、規模の小さい手が打てます。漏水が出ている系統がなければ、これらで更新の時期を先に延ばす判断ができます。
賃貸は決める人と払う人が同じなので、総会の合意は要りません。先に、保有を続ける年数と毎年の手残りから給水管にかけられる金額の上限を決め、その中に収まる手を規模の小さい順に選びます。
築古の1棟をお持ちで、入居者さまから水の苦情が出ているオーナーさまに向けて、数千万円の更新工事をいま選ばない場合の進め方を整理しました。
分譲と賃貸では、決め方が違います
分譲マンションの記事が多いのは、決めるまでに合意形成という長い工程があるからです。賃貸は、決める人と払う人が同じ1人なので、その工程がありません。
そのぶん、判断の軸が自分の側に寄ります。何年持つつもりか、いくらまで出せるか、いま出ている苦情をどこまで放っておけるか。この3つで答えが変わります。
もう1つの違いは、工事の影響を受けるのが入居者さまだという点です。断りにくい立場の方に、水が止まる時間帯をお願いすることになります。工事の規模が小さいほど、ここの負担が軽くなります。
いま出ている苦情の重さを、先に測る
同じ「水が赤い」でも、重さが違います。朝いちばんだけなのか、日中も続くのか。1戸だけか、複数戸か。洗濯物に色が付いたのか、飲み水を止めているのか。
重さが分かると、急ぐかどうかが決まります。複数戸で日中も続いているなら、退去の理由になりかけています。朝だけの段階なら、手を打つ時間があります。
測り方は簡単です。受付の日付、住戸、蛇口、時刻、続いた時間を記録して、写真と一緒に並べるだけです。この記録は、あとで工事の範囲を決めるときにも使えます。
かけられる金額の上限から考える
更新工事の金額から検討を始めると、数字が大きすぎて結論が出ません。順番を逆にして、自分が出せる上限を先に置きます。
上限の作り方は、毎年の手残りと、保有を続ける年数から出します。何年で建物を手放す想定か、そのあいだに大規模修繕が何回来るか。その中で給水管に割ける枠が上限です。
上限が決まれば、その中に入る手だけを見ればよくなります。入らない手は、保有の期間が延びたときか、売却の前に考える話として横に置きます。
くわしいご案内修繕積立金が足りないまま、給水管をどうするか|先送りする期間に打てる手
打てる手を、規模の小さい順に並べる
上から順に、規模と負担が小さい手です。上の3つは運用と部分の対応なので、いま出ている苦情への応急になります。恒久の手は下の3つで、どれを選ぶかは調査の結果と上限額で決まります。
| 打てる手 | 相手にするもの | 工事の規模 | 住戸への立ち入り |
|---|---|---|---|
| 空室と共用水栓の通水を定期の作業に入れる | 滞留した水 | 作業のみ | なし |
| 受水槽の点検と清掃 | 槽の中の状態 | 受水槽まわり | なし |
| 器具や末端の枝管の交換 | その住戸の出方 | 住戸単位 | その住戸のみ |
| 錆の性質に働く延命(給水元に1台) | これから育つ錆 | 給水元の1か所(3時間〜半日程度) | なし |
| 更生工事(内面を樹脂で覆う) | 管の内面 | 系統ごとに数日から | 系統によって必要 |
| 更新工事(管を入れ替える) | 管そのもの | 数週間から | 専有部を含むなら必要 |
入居者さまへの説明と、工事の日
説明で役に立つのは、原因の解説より段取りです。いつ調べるのか、いつ工事をするのか、その日は何時から何時まで水が止まるのか。この3つを紙で配ると、問い合わせが落ち着きます。
当社が扱う emiiR®(エミール)は、給水元の1か所に付ける装置です。作業は3時間〜半日程度で、住戸には立ち入りません。受水槽のある建物では、作業するのが槽に入る手前なので、そのあいだ各戸は槽に貯まっている水を使えます。
工事の日は、入居者さまの生活に合わせて決められます。平日の日中に水を止められるなら掲示だけで済み、在宅が多い建物なら時間帯をずらします。
家賃と空室への影響
水の苦情は、退去の理由として表に出にくいものです。更新のときに「なんとなく古い」という理由でまとまって出ていきます。赤水が出ていること自体が、この「なんとなく」を作っています。
募集のときに言えるのは、設備として何を導入したかと、いつ導入したかまでです。水そのものの効果を募集の売り文句にするのは難しいものの、給水管に手を入れている建物だという事実は、内見のときの質問に答えられる材料になります。
空室が続く部屋は、赤水の側から見ても弱点です。使われない枝管に錆が溜まり、内見の日にその水が出ます。内見の前に水を流しておく手順を、管理会社さまと決めておいてください。
保証年数と、保有期間の関係
機器を入れるなら、保証の年数を保有の期間と重ねて見ます。emiiR® の保証は設置後10年で、10年後に検査を受けるとさらに10年、最長20年になります。
保有の途中で売る場合でも、設置日と型式、保証の期限が記録に残っていれば、買う側に示せる材料になります。記録が無いと、入っている機器は評価の対象になりません。
金額は、口径と設置の条件が決まったところでお伝えします。製品代と工事代を分けてお出しし、お見積もりで提出した以上の金額はいただきません。上限を決めて検討されている場合は、その枠に収まるかどうかも早い段階でお答えします。
よくあるご質問
1棟だけでも導入できますか
導入できます。付けるのは給水元の1か所で、戸数ではなく給水管の口径と系統で機種が決まります。戸数が少ない建物でも台数は1台のままです。
入居中の建物でも工事ができますか
できます。作業は給水元まわりだけで、住戸には立ち入りません。受水槽のある建物では、作業のあいだも各戸は槽の水を使えます。直結給水の建物では、配管をつなぎ込む1〜2時間程度、水を止めます。
苦情が出ている部屋だけ直せませんか
その部屋の器具や末端の枝管を替えれば、出方は変わります。ただし供給している配管は共通なので、ほかの部屋で同じことが起きます。応急と恒久を分けて、順番を決めてください。
売却を考えている場合は、何をしておくべきですか
調査の結果と、水の測定値、工事や機器の記録をそろえてください。買う側が見るのは、配管の状態が分かる書類と、これから何にいくらかかるのかの見通しです。書類が無いと、悪いほうに見積もられます。
更新工事はいつまで先送りできますか
建物ごとに違うので、年数は調査の結果で判断します。漏水が出ている系統があるなら先送りの段階ではなく、赤水だけなら、抜管調査で肉厚を見てから決められます。
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