この記事の結論
バイオフィルム(ぬめり)は、水が触れ続けていて、流れが緩い場所にできます。温浴施設では、循環配管の曲がりと継ぎ目、ろ過器のろ材の中、貯湯槽の温度が低い部分、改装で使わなくなった枝管がその代表です。
この層は中の微生物を塩素から守るため、浴槽水の塩素濃度を基準どおりに保っていても、配管の内側に残ります。清掃や配管の洗浄で落とす作業と、面に付きにくくする設備を組み合わせて管理します。
浴槽水の遊離残留塩素は基準の中なのに、濁りとにおいが戻ってしまう温浴施設の設備担当の方へ。バイオフィルムができやすい場所と、開けて見られない配管の内側を日々の記録から確かめる方法をまとめました。
バイオフィルムとは何か
水に触れている面には、まず有機物の薄い膜が乗ります。そこに微生物が付き、分泌物を出して自分たちの居場所を固めます。この分泌物ごと面に定着した状態が、バイオフィルムです。浴槽のぬめりと、配管の中のスライムは、どちらもこれを指しています。
沈んで溜まっただけの汚れは、水を流せば出ていきます。バイオフィルムは微生物が自分で面に貼り付いてできた層なので、水を流すだけでは離れません。
表面をこすって落としても、面に残った部分から層はまた広がります。現場でよく聞く「洗ったのに、すぐまた出る」は、この残った部分によるものです。
できやすい場所
バイオフィルムができやすいのは、水が触れ続けていて、流れが緩い場所です。この2つの条件がそろう場所は、配管の系統図の上で拾い出せます。
- 循環配管の曲がりと継ぎ目。流れが乱れて速度が落ちます
- ろ過器のろ材の中。粒のあいだは、もともと流れの緩い場所です
- 貯湯槽の中で、温度がいちばん低い部分。湯温が下がるほど、微生物が増えやすくなります
- 使わなくなった枝管。改装で止めたまま、水が動かずに残ります
- 打たせ湯やシャワーの配管で、営業時間の外に水が止まる区間
- 浴槽の循環口のまわりと、ヘアキャッチャーの内側
図面が古いと、場所が拾えない
改装を重ねた施設では、系統図と実際の配管が合っていないことがあります。止めた枝管が図面に載っていなければ、点検も洗浄もそこまで届きません。厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」も、図面などで配管の状況を正確に把握し、不要な配管を除去することを求めています。系統図をいまの設備に合わせて描き直すことが、最初の一歩になります。
なぜ日常の塩素消毒だけでは落ちにくいのか
浴槽水の消毒に使う塩素は、水に溶けて働きます。バイオフィルムの層は、微生物が出した物質が水を通しにくくしているため、層の内側にいる微生物には塩素が十分に届きません。
衛生等管理要領も、生物膜(バイオフィルム)によって微生物が塩素剤などの殺菌剤から守られている点を挙げています。浴槽水の遊離残留塩素(消毒のために水に残っている塩素)を基準の中で保っていても、配管の内側の層は残ります。
層の表面では塩素が反応して減るため、同じ注入量でも濃度が落ちやすくなります。「塩素が保たないので注入量を上げた」という状態は、配管の内側で層が育っている合図と読めます。
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見えないところを、どう確かめるか
循環配管の内側は、開けて見ることができません。そのため、日々の衛生管理で取っている記録を並べて、内側の状態を推し量ります。
| 手がかり | 何を見るか | 層が育っているときの変化 |
|---|---|---|
| 遊離残留塩素 | 同じ注入量での濃度 | 保ちにくくなる |
| ろ過器の差圧(入口と出口の圧力の差) | 逆洗(水を逆向きに流してろ材の汚れを洗い出す作業)の直後の値 | 基準の値まで下がらなくなる |
| 洗浄後の排水 | 濁りと、出てくるものの量 | 回を追って量が増える |
| 濁度と過マンガン酸カリウム消費量(水の中の有機物の量の目安) | 換水後に戻るまでの日数 | 戻る日数が短くなる |
| におい | 循環口の近くと、打たせ湯の落ち口 | 水を動かした直後に強く出る |
もう少し詳しく:内視鏡で見るという選択
配管の洗浄を頼むときに、洗浄の前後で内側を内視鏡で撮ってもらう方法があります。次の洗浄の間隔を決めるときに、感覚ではなく映像で判断できます。依頼のときに、記録として残す形で撮ってほしいと伝えておきます。
付着する力を弱めて、付きにくくする
ここまでは、できた層を見つけて落とす話でした。もう1つの方法は、汚れが面に付く力そのものを弱めておくことです。
UFB DUAL® は、水道メーターの二次側の元栓に取り付ける一体型のノズルです。つくる泡は、国際規格 ISO 20480-1 でウルトラファインバブルに分類される、直径1マイクロメートル未満の泡です。目に見えるミリバブルや、白く濁って見えるマイクロバブルより小さいため、水は無色透明のままです。
泡が浮く速さは半径の2乗に比例して遅くなり、1マイクロメートルを下回ると、水分子の熱の動きが浮力を上回ります。そのため泡は浮き上がらずに水の中に散らばったまま保たれ、元栓でつくった泡が館内のいちばん遠い蛇口まで届きます。
泡の表面はマイナスに帯電しています。面に付こうとする汚れの多くは、プラスに帯電した、水をはじく性質のものです。泡が汚れと面のあいだに入り込むと付着する力が弱まり、水流で剥がれやすくなります。泡が面を覆うことで、剥がれた汚れが再び付くのを抑える働きも期待できます。
泡は水道の水圧だけでつくられるため、電源も薬剤も要らず、可動部と消耗品もありません。導入後も清掃と配管の洗浄は続けますが、次の洗浄までのあいだに層が育つ速さが緩やかになることが期待できます。
いまの消毒と清掃に重ねて使う
UFB DUAL® の役割は、レジオネラ属菌の対策の基本とされるバイオフィルムの蓄積を抑え、衛生環境の向上を図ることです。殺菌と消毒は、これまでどおり殺菌剤と専門の水質管理で行います。
換水、浴槽の清掃、浴槽水の消毒、ろ過器の逆洗、循環配管の洗浄も、いまの手順のまま続けます。自治体の条例で定められた水質検査と記録も変わりません。
取り付けるのは給水(上水)の側で、浴槽の中で気泡を発生させる設備ではありません。泡は浮き上がらず、水面ではじけて細かい水しぶきになる働きもありません。自治体の条例は国の要領より厳しいことがあるため、所轄の条例を確かめ、抵触する地域ではご提案しません。
導入後の変化を、どこで確かめるか
導入後に見る記録は、上の表と同じです。遊離残留塩素の保ち方、逆洗直後の差圧、洗浄後の排水、換水後に濁りが戻るまでの日数を、導入前から同じ様式で取っておくと、そのまま並べて比べられます。
変化が表れるまでには時間がかかります。いま面に付いている層は、一度に剥がれるのではなく、少しずつ剥がれていくためです。
逆洗や配管の洗浄の間隔を見直すのは、導入前後の記録が並んでからにします。記録を見る前に間隔を延ばすと、濁りが戻ったときに原因を切り分けられなくなるためです。
よくあるご質問
バイオフィルムとスケールは、同じものですか
いいえ、別のものです。スケールは、水に溶けていたカルシウムなどが固まった無機の付着物です。バイオフィルムは、微生物とその出す物質が面に貼り付いた層です。落とし方も違い、スケールには酸性の洗浄剤、バイオフィルムには薬剤と物理的な洗浄の組み合わせを使います。
塩素の注入量を上げれば落ちますか
いいえ、層の内側までは届きにくいままです。層をつくる物質が水を通しにくくしているためです。注入量を上げても濃度が保てないときは、配管とろ材の中で層が育っている合図として、配管の洗浄の記録とろ材の状態を確かめます。
使っていない枝管は、どうすればよいですか
切り離せるかどうかを、設備の担当の方や配管の工事会社と確かめます。残す場合は系統図に書き込み、定期的に水を流す手順を決めておくと、水が動かないまま忘れられる区間をなくせます。
UFB DUAL® に、第三者の評価はありますか
はい。水利用設備環境衛生協会の推奨品(24-055)です。水道の給水に使う器具としては JETマーク(40A の認証番号 WO77-11004-237)を取得し、飲用適水テスト・耐圧テスト(1.75MPa)・浸出テストをクリアしています。
効果が出るまでに、どのくらいかかりますか
すでに付いている層が剥がれていくまで、時間がかかります。食品工場の排水管では、導入の初期は変化がなく、6か月を過ぎたころから内側の汚れが落ちていった例があります。判断は、導入前後の記録が並んでから行います。
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