賃貸と違い、決めるのは所有者ひとりではありません。理事会で案を作り、総会の決議で通す、という順番になります。
総会に出す資料には、費用・工事・保証・維持費の4つが金額で入っていれば足ります。この4つが揃わないと、賛成も反対も判断できません。
共用部の給水に設備を入れたい。そう考えた理事や、管理組合に提案する立場の方へ。決議の種別から総会資料の項目まで、進め方の順番で整理しました。
誰が決めるのか(賃貸と決定的に違う点)
賃貸一棟なら、オーナーが決めて発注すれば終わります。分譲マンションは、共用部分が区分所有者全員の共有なので、同じようには進みません。理事会は案を作る場、決めるのは総会です。
ここを飛ばして見積もりだけ取ると、総会で「誰がいつ決めたのか」を問われて差し戻しになります。順番を先に決めるほうが早く着きます。
理事会・総会・決議の種別
区分所有法では、共用部分の管理に関する事項は集会(総会)の決議で決めます。普通決議で足りるものと、特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上)が必要なものが分かれており、境目は「共用部分の変更が、その形状または効用の著しい変更を伴うか」です。
給水の主管に装置を1台入れる工事は、給水の方式も配管の経路も変えず、外から見える形も変わりません。ただし、どちらに当たるかを判断するのは管理組合です。管理規約に決議の要件が書かれているので、必ず自分の規約の条文で確かめてください。
議案は、理事会が作って総会に上げます。理事会の決議で工事までできる範囲は、規約と細則に書かれた金額や項目で決まります。
共用部分と専有部分の境目
給水管は、どこまでが共用部分でどこからが専有部分か、規約で線が引かれています。多くの標準的な規約では、本管から各戸のメーターまでが共用部分で、そこから先の枝管と住戸内の器具が専有部分です。
元栓に1台入れる方式は、この線のいちばん手前に付けます。共用部分の工事だけで終わり、各住戸に立ち入る必要がありません。専有部分に手を入れないので、住戸ごとの同意を集める話にもなりません。
どこまでが組合の工事か
作業は受水槽の周り、または受水槽のない建物では水道メーターの二次側だけです。掘る場所も、共用の敷地の中に収まります。
その結果として効く範囲は、専有部分の蛇口まで届きます。工事の範囲は共用部分だけ、効く範囲は各戸まで。この非対称が、管理組合にとって扱いやすい点です。
総会に出す資料に必要な項目
議案書に入れる項目を、先に決めてしまうほうが早いです。4つが金額で入っていれば、質問はほぼこの範囲で収まります。
反対意見に、先に数字で答えておく
出る質問はだいたい決まっています。「効果が見えないものに積立金を使うのか」「毎年お金がかかるのでは」「壊れたら誰が直すのか」の3つです。
1つ目には、1戸あたりの金額を置きます。40Aで2,650,000円を32戸で割ると約82,800円です。2つ目には、毎年かかるものがない構造であることと、その根拠(電源なし・薬剤なし・フィルターなし)を書きます。3つ目には、保証年数と窓口を書きます。
効き目そのものを断定して書くと、かえって議論が止まります。仕組みと範囲を書いて、判断は総会に委ねる形が通りやすいです。
| 項目 | 書くこと | どこから取るか |
|---|---|---|
| 費用 | 本体と工事費を分け、総額まで。25Aなら650,000〜660,000円、40Aなら2,650,000円(税抜) | 販売店の見積もり(内訳つき) |
| 工事 | 断水の時間、立ち入りの有無、作業日数、駐車の場所 | 販売店の工事条件 |
| 保証 | 年数、保証の窓口、故障時の連絡先 | 見積書に記載を求める |
| 維持費 | 毎年かかるもの。電源・薬剤・フィルター交換がない場合は0円と書く | 見積書に記載を求める |
| 支出の区分 | 修繕積立金から出すか、管理費から出すか | 管理規約と長期修繕計画 |
出典:自社の価格表と工事費表(2026-09-26 時点)。税抜。
長期修繕計画との関係
給水設備は、長期修繕計画の中に「給水管更生・更新」という項目で入っています。金額が大きく、実施時期が近づくと必ず議題になる項目です。
水の側から入れる設備は、この更新工事の代わりにはなりません。配管そのものは新しくならず、薄くなった管の厚みも戻りません。位置づけとしては、更新までの期間に、内側の汚れの付きかたを緩やかにしておくという性質のものです。
そのため、議案では「更新工事の代替」ではなく「計画に載っている更新までのあいだの維持」として書くほうが、後から齟齬が出ません。更新の時期に装置を外す必要はなく、新しい配管でもそのまま使えます。
検討の進め方(現地確認から総会まで)
総会は年に1回しかないことが多いので、逆算して動きます。写真で概算が出るため、最初の一歩は軽く踏めます。
- 受水槽か水道メーターの周りを撮り、口径の表示と全景を添えて概算を取る
- 理事会で、支出の区分(修繕積立金か管理費か)と決議の種別を規約で確認する
- 内訳のある見積もりを取り、保証年数・窓口・維持費を書面に入れてもらう
- 工事の条件(断水の時間、立ち入りなし、駐車位置)を文面にして議案に添える
- 総会で決議し、工事日を決めて掲示する
管理会社さまとの役割分担
見積もりの取得と工事の立ち会いを管理会社さまに任せるか、理事会で持つかを先に決めておきます。どちらでも進められますが、決めないままだと工事日の告知が落ちます。
設備の仕様についての質問は、当社が直接お答えします。管理会社さまを経由しても、経由せずにご連絡いただいても、回答の内容は同じです。
よくあるご質問
総会の決議は普通決議で足りますか
管理規約の条文と、工事が共用部分の著しい変更とみなされるかどうかで決まります。給水の方式も経路も変えない工事ですが、判断するのは管理組合です。規約の該当条文と、過去の同種の工事での扱いをご確認ください。
各住戸に立ち入りますか
立ち入りません。作業は受水槽の周り、または水道メーターの二次側だけです。専有部分には手を入れないので、住戸ごとの同意も要りません。
修繕積立金から出せますか
規約の定めによります。給水設備に関する支出として積立金から出す例と、管理費から出す例の両方があります。理事会で規約を確認し、議案に支出の区分を明記してください。
給水管の更新工事の代わりになりますか
なりません。配管そのものは新しくならず、薄くなった管の厚みも戻りません。長期修繕計画に載っている更新は、計画どおり検討してください。更新後の新しい配管でも、装置はそのまま使えます。
見積もりにはどんな情報が要りますか
受水槽か水道メーターの周りの写真、口径の表示、建物の全景の3枚です。戸数と系統の数(棟が分かれていないか)もあわせてお知らせください。図面があれば、あわせてお送りください。
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ご相談とお見積もりは無料です。写真で判断できることも多く、必要な場合は現地を拝見します。


