この記事の結論
井戸水をかん水に使うハウスで確かめておきたいのは、鉄・マンガン・硬度(カルシウム)・溶存酸素の4項目と水温です。鉄とマンガンと硬度はチューブや点滴の穴、ノズルに付いて詰まりの原因になり、溶存酸素と水温は夏場の根の傷みに関わります。
汲み上げた直後とタンクを通ったあとの水を検査し、鉄が多ければ除鉄の装置で取り除く、付着を抑えたいなら付きにくくする設備を付ける、と数字を見て決めます。
井戸水を水源にハウスを回している方、これから井戸を掘ってかん水に使おうとしている方に向けて、水質がどこに出るのかと、調べる順番をまとめました。
井戸水で起きやすい4つのこと
ご存じのとおり、井戸水は空気に触れずに長く地中にあった水なので、溶けている成分と酸素の量が、水道水や川の水とは違います。ハウスのかん水で困りごとになりやすいのは、次の4つです。
| 項目 | 現れる場所 | 目で見える兆し |
|---|---|---|
| 鉄 | チューブ・点滴の穴・タンク | 赤茶色の沈殿、いわゆるカナケ |
| マンガン | チューブ・器具の内側 | 黒っぽい付着 |
| 硬度(カルシウム) | ノズルの先・葉の表面 | 白く固い付着 |
| 溶存酸素と水温 | 根 | 夏に根の色が茶色くなる、張りが弱い |
鉄とマンガン
地中の鉄とマンガンは、酸素の少ない水の中では溶けた形でいます。汲み上げて空気に触れると酸化し、水に溶けない粒に変わって沈みます。汲んだ直後は透明なのに、タンクに貯めると赤茶色になるのはこのためです。
粒は、チューブの中の流れが遅い所と、点滴の小さな穴に集まります。マンガンは鉄より酸化が遅く、配管の奥まで運ばれてから黒く付くことがあります。末端の株から水が出にくくなったとき、まず疑うのがこの2つです。
硬度(炭酸カルシウム)
硬度の高い水は、温まったり水分が蒸発したりすると、炭酸カルシウムが白く固い層になって残ります。ミストや散水ノズルの先、葉の表面の白い跡がこれです。
鉄の沈殿のように洗えば流れるものではなく、層になると酸で溶かすか削るしかありません。ノズルの穴が細る分だけ、同じ時間のかん水で出る量が減っていきます。
溶存酸素が少ないことと、水温
地下水は空気に触れていないため、水に溶けている酸素が少ない傾向があります。酸素の少ない水が続くと、根の呼吸が追いつかず、養分の吸収が鈍ることがあります。
井戸水の温度は、季節を通して大きく変わりません。夏は外気より冷たく感じますが、ハウスの中のタンクやチューブで温まると、水が抱えられる酸素はさらに減り、根の呼吸は増えます。夏に根が傷みやすい理由の1つは、この2つが重なることです。
どこに現れるか(チューブ・器具・根)
同じ井戸水でも、困りごとが出る場所は成分ごとに分かれます。チューブと点滴の穴に出るのは鉄とマンガン、ノズルの先と葉の表面に出るのは硬度、根に出るのは溶存酸素と水温です。
見分けるには、末端の株から順に水の出方を見て回るのが早道です。末端だけ出が悪いならチューブの中の沈殿、全体に細っているならノズルの付着、水は出ているのに株が伸びないなら根の状態を疑います。どこに出ているかで、先に測る項目が決まります。
調べる順番
兆しから当たりをつけ、数字で確かめます。検査は、自治体の衛生検査所や民間の分析機関に頼めます。
- チューブを切って内側の色を見る(赤茶・黒・白)
- 鉄、マンガン、硬度、pH、電気伝導率を測る
- かん水の出口で、水温と溶存酸素を朝と日中に測る
- 採水は、汲み上げた直後と、タンクを通ったあとの2か所で行う
- 結果が出てから、打つ手を決める
除去する手と、付きにくくする手
鉄とマンガンを取り除くなら、酸化させてからろ過する除鉄・除マンガンの装置が使われます。硬度を下げるならイオン交換の軟水器です。どちらも成分そのものを減らせますが、ろ材の洗浄と交換、薬剤の補充が続きます。
もう1つの手が、成分は残したまま、配管と器具の内側に付く量を抑える方法です。UFB DUAL® は、水道の水圧だけで直径1マイクロメートル未満の泡をつくる設備で、鉄やマンガンを取り除くものではありません。泡が汚れと管の内面の結びつきを緩めるので、沈殿や付着物が固く張り付きにくくなり、すでに付いている分も剥がれて、かん水の流れで運ばれやすくなります。チューブの洗浄は続けますが、洗浄から次の洗浄までの間隔が延びる、という変わり方です。
鉄が多い水なら、まず除去の装置で量を減らします。鉄はそれほど多くなく、チューブや点滴の穴の付着を抑えたいなら、付きにくくする手が合います。両方を組み合わせることもでき、どちらを先にするかは検査の数字を見て決めます。
設備のどこに付けるか
取り付ける場所は、井戸ポンプから送り出したあとの給水管か、タンクから各ハウスへ出ていく管です。口径は、その管の太さで13Aから50Aまでを選びます。電源は要らず、消耗品もありません。
減水率は約5%で、かん水の出方はほとんど変わりません。低い水圧でも泡をつくれる構造なので、井戸ポンプの設定もいまのままで足ります。口径ごとの費用は、下の記事にまとめています。
よくあるご質問
井戸水はかん水に使っても大丈夫ですか
使えます。気にするのは、鉄とマンガンの量、硬度、pHです。一度検査を受けて数字を持っておくと、詰まりや生育の変化が出たときに原因を絞れます。
カナケが出るのですが、UFB DUAL® で取れますか
いいえ、鉄を取り除く装置ではありません。できるのは、チューブや器具の内側に付く量を抑えることです。鉄が多い場合は、除鉄の装置と組み合わせて考えます。
硬度の高い井戸水でも使えますか
使えます。カルシウムを水から取り除くことはできませんが、配管やノズルの内側に固い層として付く量を抑えることが期待できます。すでに厚く付いた層は、酸での洗浄や部品の交換で先に落としておくと、その後の付き方の変化を見やすくなります。
水が冷たいのは問題ですか
季節によって見方が変わります。冬は根が冷えやすくなり、夏は逆に、タンクで温まったときに溶存酸素が減ります。季節ごとに、かん水の出口で水温を測っておくと判断できます。
井戸水と水道水を切り替えて使っても大丈夫ですか
使えます。切り替えた日を記録しておくと、詰まりや生育の変化が出たときに、どちらの水の影響かを分けて見られます。取り付け位置は、2つの水が合流したあとの管が目安です。
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